PLAY149 片鱗⑥
悪魔の姿はそれぞれ違う。
誰かが想像した姿。ある画像の姿。だが概ね悪魔像として合っているのは――黒い翼と黒い姿。そして角。
その他にも黒い尻尾などがあるが、誰もが想像する悪魔像はこんなものだろう。
他にもあるかもしれないが、キリがないので割愛させてもらいたい。
そんな悪魔像だが、アズールという世界の悪魔像はあまり怖くないイメージがあるだろう。
ハンナ達も出会った『大罪』の通り名を持つ悪魔たち。みゅんみゅんたちと行動しているベルゼブブも『暴食』の力を持っている悪魔族だが、人に近い姿をしている。
人に近く、黒い角と黒い翼。
対比で言うと人:悪魔=8:2。
ショーマやティズも悪魔族だが、悪魔らしい姿を見せたことはない。むしろ人の姿のまま、悪魔の姿などないかのように行動し、生きている。
………最も、彼等は人間でアバターが悪魔族と言うだけなのだが。
さて、本題に入るとしよう。
悪魔族は確かに人の姿をしているが、悪魔は悪魔であることを理解してもらいたい。
一体何を言っているのだ思うかもしれないが、言葉通り――悪魔は悪魔だと認識を持ってほしいということだ。
アズールの悪魔族は………、否――この世界の悪魔は皮を被っている。
人間族と共存するために、人間族に害をなさないように力を制限している姿が、今の姿。
もし共存の皮を剥いだ時………、人々は、アズールの国の者達は恐れおののくだろう。
悪魔族の本当の姿を――彼等が感情に任せた瞬間、彼等の周りが黒く染まることに。
◆ ◆
ゴッッ!!
「――っっ!!?」
鈍い衝撃と額に広がる鈍痛。
それはショーマがアシバに向けて放った頭突きの波。
同時に駆け巡るのは骨の痛みと脳味噌の揺れのような感覚。バランス感覚が失われたかのような視界の揺れ。そして――
「ああああああああああああああああ!!!」
劈くショーマの雄叫びと共に迸る肩の痛み。
痛みを感じた瞬間アシバは奥歯を噛みしめ、叫ばない意志を込めながらアシバはショーマのことを見下ろす。
至近距離でかち合う視線。同時に見えるショーマの噛みつき。肩にそれを向け、すり合わせるようにアシバの肩を噛んでいたのだ。
肉を食いちぎるように、がじがじと。
「~~~~~~~っっ!」
食いしばり、叫ばないようにしていたアシバだったが、彼も人間だ。限界なんてすぐに来てしまう。痛みに弱い人間ほどそれは早く訪れる。
食いちぎられるような痛みに耐えきれず、アシバは声にならないそれを上げてショーマの頭を掴んで引きはがそうとした。髪の毛を引っこ抜いても構わない。そんな乱暴な掴み方をして剥そうとした。
痛みがあり、痺れているから絶対に引きはがせる。そう思っていたのに………。
剥せなかった。
「――っ!?」
剥せない。そして噛む力を強くしているショーマの行動と痛みに、アシバは混乱しながらショーマのことを視界の端で見る。
見て――言葉を失った。
見た瞬間恐怖が芽生え、そのまま固まってしまったアシバ。
ついさっきまで虫の息だった。簡単に殺せると思っていたのに、なぜ恐怖を抱いてしまうのか。
簡単なこと。
アシバの視界に入ったショーマは、ショーマの姿をしている何かだったから。
背中から黒い翼を生やし、額には小さな紫の角。顔や体に彫られていたアバターの刺青は模様を変え、悍ましい形へと変わっている。
何もかもが違うその姿を見て、ついさっきまで見ていたショーマとは違う何かを見て、アシバは来p賭場を失い、固まって、恐怖してしまう。
――なんだ? こいつは………。
アシバは思う。心から震えてしまう畏怖の姿を見て、まるで別人のようなその姿を見て、アシバは思ってしまう。
本音が体の震えとなって現れた状態で、彼は思った。
――こいつは、人じゃない。
――さっきまで弱かった奴じゃない。さっきまで死にかけだったあの野郎じゃない。
――さっきまで………、ボロボロで、倒れることを抗っていた弱者じゃない。
――今、俺の目の前にいるのは………!
「………悪魔!」
思わず声が出てしまう。
そのくらいショーマの姿を見たアシバは恐怖に支配されかけていた。あの時――あの団体が来た時のことを思い出してしまう………否、それをかき消すほどの恐怖の姿。
本物の悪魔を見たかのような――空想が現実に現れたその姿。
悪魔族が感情を露にした姿。
人と言う共存の証を示したその姿を剥したショーマを見て、アシバの神力が下がっていく。
急転直下の下がり具合で――だ。
恐怖におののくアシバを見ながらショーマは言った。
食いしばった状態だがはっきりわかるその言葉を吐いて――
自分の感情を言葉にして――怒りをあらわにして。
「――ぶっ飛ばす! アシバァ!!」




