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PLAY147 『懺悔の輪廻会』⑤

『懺悔しない奴は禊』

『懺悔しない奴は禊』

『懺悔しない奴は禊』

『懺悔しない奴は禊』

『懺悔しない奴は禊』

『懺悔しない奴は禊』

『懺悔しない奴は禊』


 今でも思い出し、吐き気を催すどころか怒りが爆発してサンドバックに拳を打ち付けてしまうくらい、その怒りは大きく、そして尖っていた。


 なぜこうも言われないといけないのか。


 なんで母を突き飛ばした奴が悪いのに、母が悪いという結果になるのか。


 そして、今まで仲良かった同級生達の豹変が、あの時感じた最大のトラウマだった。


 芦馬は尚も相談なしにどんどん言ってくるいじめっ子達を前にして――委縮してしまっていた。


『懺悔しない奴は禊』

『懺悔しない奴は禊』

『懺悔しない奴は禊』

『懺悔しない奴は禊』

『懺悔しない奴は禊』

『懺悔しない奴は禊』

『懺悔しない奴は禊』


『懺悔しない奴は禊』

『懺悔しない奴は禊』

『懺悔しない奴は禊』

『懺悔しない奴は禊』

『懺悔しない奴は禊』

『懺悔しない奴は禊』

『懺悔しない奴は禊』


『懺悔しない奴は禊』

『懺悔しない奴は禊』

『懺悔しない奴は禊』

『懺悔しない奴は禊』

『懺悔しない奴は禊』

『懺悔しない奴は禊』

『懺悔しない奴は禊』


 何度も何度も繰り返される言葉。同時に彼等の手に握られている尖った鉛筆とシャープペンシル。そしてカッターと言った。凶器となるものを携えている。


 まずい。


 そう思った教室から出ようと席を立とうとしたが、その肩を手を置かれ、強く押し潰すように芦馬を席に座らせた。


 がたんっ。


 と机に脚がぶつかる音が聞こえたが、そんなことお構いなしに彼等は芦馬の机の周りに立ち、背後にも立って芦馬のことを見下ろしていた。


 見降ろしながらも、言葉は止まらない。


『懺悔しない奴は禊』

『懺悔しない奴は禊』

『懺悔しない奴は禊』

『懺悔しない奴は禊』

『懺悔しない奴は禊』

『懺悔しない奴は禊』

『懺悔しない奴は禊』


『懺悔しない奴は禊』

『懺悔しない奴は禊』

『懺悔しない奴は禊』

『懺悔しない奴は禊』

『懺悔しない奴は禊』

『懺悔しない奴は禊』

『懺悔しない奴は禊』


『懺悔しない奴は禊』

『懺悔しない奴は禊』

『懺悔しない奴は禊』

『懺悔しない奴は禊』

『懺悔しない奴は禊』

『懺悔しない奴は禊』

『懺悔しない奴は禊』


 何度も何度も脳内で再生される言葉。


 もう自分の脳内で再生されtれいるのか、まだ彼等が言っているのかよくわからなくなるほど、芦馬の思考は疲弊していた。心も磨り減っている時にこれなのだ。無理もない話だが………、それでも止まることを知らない。


 延々と続くそれは、どこで止まるのかわからない。


 叫んだらいいのか? いいやそれだと先生の迷惑になる。そして自分がおかしい奴と認識されてしまうのではないか?


 叫ばなくても、いじめっ子に突っかかればなんとかなるのではないか?


 それもダメだ。それではけが人が出てこっちが悪いという状況になってしまう。


 何をしても無駄。


 何度も何度も言うその言葉を聞きながら、芦馬は藁にも縋る思いで周りを見る。


 そして――目を見開いた。


 誰も芦馬を助けようと動くものはいなかった。


 これは当たり前かもしれないが、いじめの現場で『やめろ』と前に出て言葉を発することは、相当な勇気が必要なのだ。


 もしかしたら自分もいじめられてしまうという先走った不安の所為で行けない。自分も巻き添えを食ってしまうから行かないという人が多いかもしれない。


 だがらこれは当たり前の光景――ではない。


 今芦馬が見ている光景は、異常だったのだ。


 助けようという意志はある。だが怖くて助けることができないという人が――まったくいなかった。


 どころか、芦馬の存在などなかったかのようにその場から離れ、雑談をする。


 空気になったかのように、芦馬は一人になってしまったのだ。


 ゆっくりと、流れるように――


『懺悔しない奴は禊』

『懺悔しない奴は禊』

『懺悔しない奴は禊』

『懺悔しない奴は禊』

『懺悔しない奴は禊』

『懺悔しない奴は禊』

『懺悔しない奴は禊』


『懺悔しない奴は禊』

『懺悔しない奴は禊』

『懺悔しない奴は禊』

『懺悔しない奴は禊』

『懺悔しない奴は禊』

『懺悔しない奴は禊』

『懺悔しない奴は禊』


『懺悔しない奴は禊』

『懺悔しない奴は禊』

『懺悔しない奴は禊』

『懺悔しない奴は禊』

『懺悔しない奴は禊』

『懺悔しない奴は禊』

『懺悔しない奴は禊』


「あ、あ、ああああああぁぁぁぁぁあああああああああ………!」


 何もかもがわからない。


 なんでこうなったの?


 どうしてお母さんは死ぬべき存在だったの?

 

 お父さんはこんなこと話していなかった。どうして? どうしてなの?


 どうして――こうなったの?


 当時の芦馬にはわからなかった。


 この後起きたことを簡潔に言うと、いじめ(?)は未遂に終わった。丁度その時担任が教室に入って来たことで、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 何もかもがなかったかのようにふるまわれる日常。


 その日常に対して気持ち悪さを抱く芦馬。


 自分が異常なのか。そんなことを思いながら授業を受け、授業の内容など聞かないまま、彼は思った。


 否――決心したのだ。


 聞こう。


 お父さんに、お母さんのことを聞こう。


 お母さんの過去について。


 学校で起きたことを伝えた後、お父さんが知る限りのことを聞こう。


 そう当時の芦馬は思った。


 もっと先に聞いておけばよかったかもしれない。そうすれば、何かが少しでも変わっていたかもしれない。そうアシバは思ったが、もうそれも過去の話。


 過去ゆえに――変えることなどできない。


 できない世界を見ながら、アシバは思い出していく。


 この時から始まった。そう心の中で呟きながら。



「お父さん、お母さんって、何か悪い事でもしたの?」



 家に帰った芦馬は、父が返って来るのを待ち、父が帰宅し、食事を終えた後で彼は聞いた。


 いつも三人で座っていたテーブルには二人分の食器しかなく、それを下げようとした時アシバは聞いたのだ。


 その言葉を聞いた父は驚きの顔をした後、下げようとしていた食器をサイドテーブルに置き、芦馬に向かって言った。


 面と向かって――真っ直ぐな顔で。


『お母さんがそんなことするわけないだろう? 誰がそんなことを言ったんだ?』

『あ、えっと………クラスのみんな』


 父の顔にしわが寄る。


 眉間にしわが寄り、芦馬のことを真剣な目で見つめながら続けて聞いて来る。


 空気が重くなった。それは小学生の芦馬でもわかるほど、重くて息ができない様な、緊張感が漂う空気だった。


『クラスメイトが? いじめられているのか?』

『いじめ………、直接的なことはされていない。ただ、無視されている』

『それも立派ないじめだ。何もしていないのに無視はいけないことなんだ。分かるな芦馬?』

『うん………。でも』

『でも?』


 少しの会話のあと、芦馬は父に教室で起きたことを話した。


 クラスのいじめっ子達が口裏でも合わせていたかのように言っていた内容。


『違う』

『悪いのは賀来の母親』

『賀来くんのお母さんはいじめをしていた』

『その子は今も苦しんでいる』

『悪い事をしたんだ。懺悔しなかったから罰が下った』

『自業自得なんだよ?』

『いじめをしていたことを懺悔していればこうならなかった』

『これは罰なんだよ。懺悔の神様が天誅を下したんだ』


 この言葉を言った後、彼等は口をそろえ『懺悔しない奴は禊』と言っていたことも伝えた。手には危ない物も持っていたから怖かったけど、誰も助けてくれなかったことも、しっかりと父に向かって伝えた。


 伝え終えた後、部屋に静寂が漂い始める。が、空気が依然と重いまま――否、更に重くなったかのような、呼吸できない様な空気が漂っていた。


 なぜこんなに息ができないのか? 緊張していたからか? それともあまりに緊張し過ぎて呼吸することを一瞬忘れてしまったのか?


 いろいろと小学生の脳で考え、何が原因なんだろうと思いながら視線を父に向けると、芦馬は――目を見開いた。


 あんな父を見たのは初めてだった。そうアシバは思った。


 いつも頼りになる大きな背中と、小さい自分を担いで肩車してくれた頼りになる父親の姿。


 母が病院に運ばれた時、初めて見せた涙。


 あれも初めてで今でも記憶に残っている。


 そして、あの時見た――何かに気付いて血の気を引いたまま虚ろな目をして汗を流している父の姿も、初めての光景だった。


 多分だが………親父はあの時何かに気付いていたのかもしれない。


 お互いを理解した上で結婚したんだ。隠し事の一つや二つを打ち明けていてもおかしくない。


 だが、それでも隠し事は絶えないんだ。


 おふくろも、親父に隠していたんだ。


 自分だけ隠し通せるように、墓場まで持っていこうとしていた真実。


 それに気付いたんだ。親父は………。


 父に打ち明けてから数日後、父と一緒に芦馬は母の実家に向かっていた。


 目的は――母のことについて。


 母のことについて詳しく知っているのは義両親。芦馬からすればお祖母ちゃんお爺ちゃんであり、母の親。産みの親がよく知っているだろう。


 藁にもすがる思いで芦馬と父親は母親の実家に向かい、事の経緯を話して真実か否か問い詰めた。


 母親の話題を利用してのいじめとなれば陰湿で狡猾だと思い、そんなことを言ういじめっ子達に真実を教えてやろうという親の優しさを感じていた芦馬だったが、年齢を重ねるごとにアシバは思ったのだ。


 真実を知りたかったのかもしれない。


 もしかしたらと言う可能性が消えれば、いじめっ子達の正気を取り戻せるかもしれないという建前の中にある父の本心。


 あんな優しい母に限ってそんなことはあり得ない。


 しかしもしかしたらと言うこともある。


 父も昔言っていた。やんちゃな時代があったと。母にもそんな時代があったで終わる。


 そうなる――はずだった。


 義両親から告げられた言葉を聞いて、父は言葉を失いながら肩を落としてしまう。


 当時の芦馬は分からなかったが、思い出していたアシバは理解できた。


 あの時言った祖母の言葉。


 それは――あまりにも受け入れがたい真実だったことに。





()()()()()()()()()()()? ()()()()()()()()()()()………!』





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