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12話 最初の接触

743年秋季第1の月6日

 ベルリットはリーゼベレクの頭脳にして心臓と言われている。

国家の方針を決定する皇帝を始め、統合陸軍の総司令部、外務局の本部、全土保安警察の本部など統一帝国の主要な機関のトップ は全てベルリットにいる。

さらには人や物を運のに重要な役割を果す街道はベルリットと他の主要都市を結ぶように大きな物がひかれ、その大きな街道から毛細血管の様に小さな道が枝分かれしていた。

その為心臓に全身の血液が集まる様にベルリットには多くの人や物が集まってはまた国中に送り出されていく。

リヒトはそのベルリットの中に整備された行商人が市場を開くためなどに使われる広場にいた。

なぜ、リヒトがここにいるのか理由は国家レベルの話になる。

戦争が終結した直後、皇帝ジークベルトはベルリットで大規模な

戦勝パレードと統一帝国に勝利をもたらした陸軍士官たちと、それを支えた全ての領主をねぎらうための舞踏会の開催を支持した。

これには国民の間に密かに流れる統一帝国の勝利ではないのでは無いかといった声を掻き消すための物だった。

そのためそれらはかつて無い規模で開催される事になり、普段は絶対に呼ばれることが無いヴァレンティア家も招待された。

かくして、ヴァレンティア一家はベルリットへと向かい、退屈したリヒトは気を使ったサラに連れられ、パレードを見に来ていた。

ベルリットには行商人が店を開くために広場が整備されている。

その広場でサラとリヒトはパレードが始まるまでの時間を潰していた。

アクセサリーから香辛料何に使うか解らない物まで広場には様々な物を扱う行商人がいた。

だがリヒトの目は目立たないように置かれている車輪つきの檻に釘付けになった。

 最初は獣が乗っていると思ったのだが良く見ると体らしきものがあるのだ。

中を良く見ると彼らは男女の区別がつく程度には人間らしかった。

その中の少女がリヒトに気がつき檻の間から手を伸ばしてきた。


「……タスケテ」


発音を悪く言葉も途切れ途切れだったがリヒトに助けを求めてきた。

その手を横からはたいた。


「獣人ごときが、リヒト様に触れるな」


そう言ってサラはどこからか取り出した拳銃のそこで、もう一度手を叩いた。

その眼出会ってから見たことも無いほど冷たく、汚らわしい物を見る目だった。


「おい、内の売り物に何してくれるんだ」


この檻の持ち主らしき男がサラに向かって叫んだ。


「こんな物を人通りの多いところに持ち込むからです、貴方のご両親はどんな教育をしてきたのですか?」


リヒトには無茶苦茶に聞こえるサラの言い分には彼の両親も同調気味で、相手の男もバツが悪そうにしている。


「リヒト様、パレードが始まりますよ」


サラは獣人に忌々しげな視線を送ると、リヒトを大通りの方へ引っ張ていった。


*****


 豪華な音楽が響き渡り人々が華麗に踊る。

大人達が踊るなか、舞踏会に連れてこられた、子供達は壁際で退屈そうにしている。

 ヴァレンティア家は周辺の貴族から敵視されているため、リヒトは退屈に居心地の悪さを感じていた。


「リヒト、久しぶり」

「ティアナ」


リヒトは話しかけてきた人物が一瞬、誰か解らなかった。

それ程、半年程度会えなかった許婚は変わっていた。


「綺麗だよ」


美しいドレスを着た婚約者の姿にリヒトの口から自然とその言葉が漏れた。

初めて会ったときに、将来美人になると予感はしていたが、半年会わない内に彼女は随分と大人びて、リヒトにはこの空間の誰よりも美しくすら見えた。

リヒトの反応にティアナは得意げな微笑を浮かべる。


「おい、帝政への背信者が居るぞ!!」


声がしたほうを見るといかにも貴族でございますといった感じの子供が三人いた。

リヒトにとっては予想できた事でもあり特に気にもならなかった。


「馬鹿みたい」


だが、彼の許婚はそうも行かなかった。

ティアナは表情の変化が乏しい彼女にしては珍しく、侮蔑と怒りが入り混じった表情を少年達に向けていた。


「貴方達はリヒトに偉そうに言える事なんて何もしてない。

戦争に参加したのも貴方達じゃない、貴方達の父親。

自分に自慢できる事が無いのに、リヒトを見下すなんて滑稽」


ティアナの淡々とした言葉が少年達に突き刺さる。

それは全て間違って居ないだけに少年達は言葉による解決を諦めた。

拳を握り少年他はティアナに殴りかかった。

リヒトはティアナと少年達の間に入り代わりに殴られた。


「これは、これは、大した事をしたものだね君」


この険悪な雰囲気を壊すような穏やかな声を発したのはは中性的な雰囲気を持つ軍服を着た人物だった。

身長は女性にしては高く、男性にしては低い。

声からも丁度両方の平均を取った高さで。

かろうじて、男とわかる程度だった。


「ミューラ将軍」


少年のうちの一人が怯えきった表情で言った。

リヒトたちの後ろに立っていたのはキセルを持ったミューラ大将その人だった。


「貴族同士の決闘やそれに準ずる行為は禁止されている。

これは、明らかに有罪判決が下るだろう」

「お待ちください閣下。

失礼ながら閣下の見間違いでは?

我々はここで親睦を深めただけです」


リヒトは彼らを庇ったのは善良な心ではない、将来他家の家督を継ぐ子供たちに恩を売るため。

もう一つは他の貴族に目を付けられないためだ。


「君の頬のあざは?」

「これはさっきよろめいた時に机で打ってしまいました

そうだよな!!」


リヒトは少年たちをに同意を求めた。

少年達は首を千切れんばかりに大きく振った。


「ふむ、私の見間違いだったようだねこれは失礼な事を言ってしまった」


少年達どこかに小走りで何処かに逃げていった。。


「余計なことをしてしまったかな」

「いえ、助かりました……ミューラ将軍」


間が開いたのはしばらく男の名前が思い出せなかったからだ。

その様子を見ていたのかミューラ将軍が名乗った。


「ケント・エルシュ・ビセント・フォン・ミューラだ。

爵位で呼ばれるのはあまり実感が湧かないので、ミューラ大将と呼んで欲しい。

君と私の関係を考えると、公的な階級を付けて呼ばなくても良いかもしれないがね」

「……?」


リヒトは彼がまるで自分と近い関係に有るような言い草に疑問を覚えた。

彼自身はミューラと有った覚えはないし、ヴァレンティア家に将軍とのつながりがあるとも思えない。


「ああ、サラは何も話していないのか。

私はサラの魔術の師にあたる」


リヒトは彼の言葉に驚きを隠せなかった。

サラは元軍人なのだから、その師匠が軍人だった所で不思議など無いが、何せ大将である。

もう、その上の階級と言えば平時なら上級大将、戦時には上級大将の上の元帥しかない。


「そちらの可愛らしいお嬢さんは?」


リヒトが衝撃から立ち直る前に話は進む。


「ティアナ・フォン・トリップス、リヒトの婚約者です。

話はいつも父から伺っております。」

「トリップス子爵のご令嬢か、なるほど目元が父親によく似ている」

「まだ幼いカップルには大人は邪魔だろう。

私はここで」


ミューラはキセルを口に加えて何処かに行った。

煙草の煙に周囲が迷惑そうな顔をするが本人は気にしてないらしい。


「知り合いなのか?」

「統一戦争時の大将の一人、元は平民で他国の人間、貴族になったのは統一戦争後」

「すごい」

「シュトルフが最高の戦略家ならミューラは最高の戦術家」


リヒトの中では何よりサラがそんなそんな人物との関わりを持っていたのも謎だった。

彼女は平民で貴族ではない。

しかも、その後ろ楯があってなぜ軍を止めたのか。

彼女はリヒトの人生のなかで両親についで三番目に付き合いが長い人間だったが、未だに謎が多かった。

その時、丁度曲が終わった。

ティアナが何かを期待するようにリヒトを見てくる。

彼女は他人に物を頼むのが苦手でほとんど自分から言葉に出さない。

次の曲が始まる前にリヒトは手を差し出した。


「私と踊って頂けませんか?」


果たしてこれで正解だったのだろうか?

リヒトはティアナの表所を伺うが、心配は杞憂だったようでティアナは笑みを浮かべてリヒトの手を取った。


「はい」


リヒトとティアナはダンスのステージに向かった。

大人たちは歩日笑ましそうに二人を見る。

曲が始まりリヒトはティアナをリードするため緩やかに最初の一歩を踏み出した。

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