大巫女の願い
大巫女の願い
伊勢の大巫女の部屋は、侍女が囲い、焚き木が前にあった。
大巫女は、小柄だが、膨よかだ。
俺を見て、大巫女が続けた。
「お主は、こっちの海の匂いと違うな。森の者でもないな」
「すみません。俺は漂流者です。今は移動するグループにいます」
「そうか、お主は大陸の、、、いや違うな、野生の匂いが強いのぉ」
俺は渡来人とは違うらしい。
「敦賀の地に降りた者が、徐々に大陸の内部に広がり、米作が広がっていている」
渡来人が米作を広げているらしい。
「元々、もっと南の方に渡来人が入って来て、米作が進んだのじゃ。
しかし、我の母は、敦賀に降りた者と結ばれ、我が生まれたのじゃ。」
米作は、渡来人と共に拡がっているらしい。
南北の移動するグループが言っていた事だ。
「いまは、広い平地を目指して、奈良盆地に近畿圏としての勢力を生み出している」
「何故、大巫女は伊勢にいるのか?」
「我の母は、元々伊勢にいたが、奈良盆地の動きに反応して、近畿圏の勢力と結ばれた。米作には人が必要で母が山の者を呼んだんじゃ。我は大人になって、ここに戻ったんじゃ」
弓男が喋った。
「伊勢は昔からの拠点で、巫女がいないと困ると、婆様が言ってた」
「わしは、渡来人の血も引き継いでおるが、縄文巫女じゃよ。婆様によろしく言っておくれ」
弓男が了解したと告げた。
大巫女が続けた。
「それにしても春日山の巫女が渡来人を助けたのは、面白いのぉ」
米作が進むのは悪いことじゃない。平地に人が溢れることになるんじゃろうと、大巫女が告げた。
「この辺にも米作が進むと思う」
米作が新たな食料を生み、冬越しが楽になるから、平地に人が降りてくるのは、理じゃと、大巫女が笑いながら告げた。
俺も弓男も米作りが進むと平地に人が降りるという言葉に、実感は沸かなかったが、色々婆様に伝えることが出来た。
「そうじゃ、奈良盆地の館にいって、準備が出来てることを伝えてほしいんじゃが、どうだ」
弓男は、大きく頷いた。
大巫女は、それを見て、侍女に言いつけた。侍女が運んできたものを大巫女が受け取り、弓男に渡した。
「それは小矛じゃ、これを見せれば館に入れる。わしの言葉が伝わるはずじゃ、頼むぞ」
小さな矛を弓男に渡した。
俺のナイフとは違うみたいだ。鈍い光が異質さを究めていた。
外に出ると竹林から風が吹き抜けた。
ザーという風の音に、俺は身震いしたが、ホッとしていた。
宮川に出て、渡ると海辺の小屋が見えた。
ここら辺でも、米作りが行われるのかな。と、考えた。
「弓男は、奈良盆地への道は分かるのかい?」
弓男は、国見山を知っているらしく、俺は付いて行くことにした。
伊勢路に出て、暫く経つと、櫛田川が見えた。水量が多く、川の事が宮川とは違っていた。
水量が多い分、音が低くゴォーと響いていた。
空は青空。
川沿いの山に入って行った。




