確かなこと
確かなこと
現代なら、関川の河口付近は広く、ビルも立ち並んでいるので、春日山の麓の景色は見えないかもしれない。
しかし、古代の保倉川は、関川につながっていない。
しかも、暴れ川だった関川は、横に広く春日山が、よく見えたと思う。
移動するグループは、関川に沿って妙高へ向かった。
春日山の麓に出来た屋敷や小屋が点在してるのが見えた。
《春日山の巫女が渡来人を受け入れたんだろう》
俺は、移動するグループについて行った。
妙高で休むことになった。
焚き火を囲んで、リーダーに声をかけた。
「春日山は、縄文巫女が、渡来人を受け入れたんだな。馬もいたから、どんな集落になるんだろう?」
俺の言葉にリーダーが疑問を返した。
「渡来人が、来たのか?」
「そうだ。秋の終わりごろかな。でかい船が入って来て、三十人ぐらいが入植した。」
リーダーは、そうか、見てたのかと言って、なら、田んぼは米作だな。
と、教えてくれた。
「米作?って何だ」
リーダーは笑って、自分たちもよく分からんが、米というのが食べ物になるらしいと、教えてくれた。
春日山では変化があったが、戸隠に向かうと、いつもの変わらない自然が迎えてくれた。
山に入ると、険しい獣道が続いた、そして大岩にぶつかった。
その先に小屋があった。
戸隠の巫女には、春日山の渡来人の話をして、春日山の巫女が受け入れたのだろうと、答えてくれた。
それにしても、春日山に直接、渡来人が来たことは、驚きだったようだ。
戸隠から、山を進み、森を進む。
そして、森は変わらず、森であった。
森で一泊して、白馬に出て谷間を進むと、春日山の出来事のようなこともなく、順調に進んだ。
諏訪に着いた。
諏訪の巫女にも、伝えたが、渡来人の流れは、初めて聞いたようだった。
しかし、近くにあった集落も、変化は見受けられなかった。
その後、八ケ岳の小屋でも変化は無かった。
佐久平は、相変わらず広い草原に光が差し、緑が眩しかった。
浅間山の噴煙は、白く青い空へ吸い上げられていた。
そして、森に入った。
森へ入ると、弓男がいた。
「おう、来たか。婆様が待ってるぞ。」
移動するグループのリーダーが答えた。
「何だ、お前の目当てはコイツだろう」
と笑い、俺を指した。
「おう、今年も狩りに混ぜてくれ」
笑いながら、弓男もリーダーも森を進んだ。
婆様は、よく着たと迎えてくれた。
俺は、婆様が俺たちが来ることを予想していた。と感じた。
毎年、来ることは予想出来る。
しかし、今日来る事は、わかるはずがない。
すると、婆様が答えた。
「分かるよ。我には、人の動きを感じることが出来るじゃよ。
だが、お前の気配は、強い。
たが、それはそれだけのことだ。
深く考えても仕方がない。」
婆様が、俺の考えている事の答えを言い出した。
俺は、婆様の言う《仕方がないこと》という言葉を繰り返した。
この婆様は、人じゃないのかと考えたが、《仕方がないこと》と、腑に落ちるのが分かった。
だが、信じられると言う事も理解出来た。
春日山の新しい動きは、ハッキリと《仕方がないこと》と思われた。
理解することは言葉ではないのかもしれないと考えた。
浅間山の夜は静かに更けていった。




