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漂流者  作者: 熊さん
第五章:縄文の理
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族長と沙羅

族長と沙羅



族長は、上田盆地の山奥の角間の集落に向かい、山を進んでいた。


木々の間からこぼれる日の光を感じながら、谷を登り、獣道に入り、さらに登った。


山の上の平ら部分の広場で老人たちが茅を編んでいる。

あれ、子供がいない。と思っていたら、屋敷から子供たちの笑い声が聞こえていた。


族長は、老人たちに挨拶して、屋敷を覗いた。


屋敷内では、付き添いの娘と沙羅が、子どもたちに字を教えていた。

白い紙みたいに字を書く子どもたち。

これはどういうものだと思った。


「沙羅様、ただいま戻りました。この白いのは、なんですか?」


沙羅が気が付き、挨拶を返し、返事をした。


「これは木の皮を叩いて伸ばしたものです。便利ですよ」


族長は感心した。

沙羅は我らに田んぼのことばかりか、色々なものくれると感じた。

この集落の話もせねばと感じた。


外を見回り、自分の小屋に戻り、日が沈むのを待った。

自分の小屋で夕食を済まし、息子を連れて屋敷に入った。


「沙羅様、色々子供達のためにありがとう御座います。私は単独で長野盆地や北陸、諏訪を回って参りました。」


沙羅は、一人で何をしたのか分からなかった。


「そんなに遠くに何されに行ったのですか?」


族長は、笑いながら伝えた。


「我らは移動するグループとして、大分と昔から、拠点の暮らしをしながら北陸や諏訪を経由するものなのです。」


どういう事か分からなかった。


「移動するもの?とは、どういうものなのでしょうか」


「ものや情報の交換をしているんだ。昔からの我らの仕事の一つだ」


昔からの仕事とは、なんだろう。

沙羅は、今の米作の集落が広がる前に、暮らしていた人々がいた事に思い当たった。


「米作が広がる前から、、、ですか?」


族長は、頭の良い子だと感じた。


「分かるのか?まぁ良い。我らの体の中にある仕事なんだ。それで春日井や諏訪、そして佐久平を見てきた。」


沙羅は、族長の深さに感心した。


「我らは、結果的に豪族になるしかないと思う。だが、我らは隠れる事で、周りに左右されずに豪族になる必要があると思う」


沙羅は、それは賢い方法だと感じた。


「族長のいう事に賛同します。私も力になりたいです。」


族長は、大きく頷き、沙羅に言った。


「こちらにに来て暫く経った。息子をどう思う。」


沙羅は突然、何だろうと思ったが、息子には期待以上に動いてもらったと思っていた。


「沙羅は息子と結ばれたら良いと思う。どうだ。」


沙羅は、そういう事かと納得して思った。


「私は、族長の家族になりたいです。よろしくお願いします」


と、沙羅が返した。

族長は、息子に向かい言った。


「お前は、今日から、《まこと》と名乗れ、そして沙羅と結ばれるのだ」


息子は、素直に受け取って、ハイと大きく頭を下げ、沙羅を見た。


月が大きく光る夜だった。

風のない静かな夜。


屋敷の部屋で松明が、四方に光を差していた。


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