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漂流者  作者: 熊さん
第五章:縄文の理
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尼の選択

尼の選択



ヤマト政権は、国府の移動を考えている。そんな噂が立っていた。


国分寺や国府の役目がおろそかになってきていた。


集落としての米作りも上手くいっていなかった。


国分尼寺でも、尼を見張るものもいなくなった。


奈良に戻っても、頼る家族には、兄弟が多く、多分、余計なものになるしかない。


尼は、どうしたら良いか決めかねていた。


そして、族長が来て言ってくれた。


「尼は、悩んでるなら俺たちの集落に来ないか?」


尼には、従うことで、新たな暮らしがあると期待できた。

族長に付いて行くことに決めた。


族長は、森に入り暫く行くと、口笛を吹いた。


小屋をそれぞれが適当に片付けた。


尼は、こんなに簡単に壊してしまうのかと思った。

しかも、彼らは当たり前のようにしている。


動き出すと、斜めに前に進むのが分かった。


そして左右に山が迫る谷に出て、今度は登り始めた。


木を掻き分け、岩を登ると、屋敷が見えた。


族長は、尼に言った。


「ここが我らの拠点です。」


尼は、山間の平らな部分を見つけて建てられている小屋を見て、屋敷を見た。

岩の上の小屋は、周りの木々の間に建っていた。


「この屋敷は試しに作ってみたんだ。尼様は、ここに住んだら良いよ。どうかな。」


尼は喜んだが、尼と呼ばれていることに違和感を覚えた。

そこで、考えた。


「私は、《沙羅》と呼んでください。沙羅は、奈良で呼ばれていた名前です。これからもよろしくお願いします。」


こうして、上田盆地の国分尼寺から尼が逃げ出してしまった。

しかし、国分寺でも国府でも尼の動きに無関心でいて、そのままになった。


族長達は、屋敷の前の小さな広場に集まっていた。


若者が男女三十人ぐらいいた。

族長が、《沙羅》の前で言った。


「沙羅様に付き人として、二人ぐらい必要だ。誰かいないか」


族長は、集落の働くメンバーを集め、役割を振り直していた。


そして、世の中の集落は、多くが豪族化していた。

それは、ヤマト政権に関わらなくても、豪族としての力を持つことも可能と思われていた。


族長は、屋敷のすぐ近くにあって、妻と子供達がいた。


尼であった《沙羅》の付き人して、付いたのは族長の娘であった。

そして、彼女の兄で、族長の息子は、警護として付いた。


体制が改められた集落を沙羅は歩いてみた。

そこで、湧水を利用した米の田んぼを見つけた。


そこは湧水の池に米をまいただけのもので、沙羅はそこから、下にもう一枚田んぼを作ることを考えた。


そこで警備をしてくれてる族長の息子に話しかけた。


「ねえ、この田んぼ、苗床を作り、田植えしないと育ちが悪いと思う。それに池の下側に、もう一枚田んぼを作れるわ。どうすれば良いかしら」


沙羅は湧水から出で池になっている所に水の流れを止める部分を作り、湧水田んぼの水の出入りを工夫してみた。


そして狭くなった田んぼは、平らな部分を広げてみた。


「そうそう、こうすると水の管理ができるわ、それに、坂になってる部分にもう一枚田んぼを作れるわ。来年は苗床からやり直せば、米作ができると思う」


こうして、沙羅に入った集落の活動が始まった。


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