族長達の暮らし
族長達の暮らし
国分尼寺は、ヤマト政権とのつながりが悪くなり、尼は、自由な時間がとれるようになった。
国分寺や国府は二年ごとに入れ替わり立ち代りとしていたが、国分尼寺には、交代の話も来なかったようだ。
国分尼寺が、建ってから、暫くすると、尼は、族長に相談した。
「族長、森の民の生活を見せてくれませんか?」
「尼様は、森の暮らしに興味があるのか?米作はしてないぞ」
尼は、上田盆地の米耕作があまり上手くいってない事を知っていた。
それでも、何かと国分尼寺に来てくれる族長達を直に見てみたいと思った。
特に周りの状況に詳しい族長が気になっていたのだ。
族長達は、実は本当の拠点より、国分尼寺に近い場所に小屋を建てて、通っていて、そこに尼を呼んだ。
一見すると、森の木々に隠れていて、分からなかった。
尼は、彼らの小屋に初めて入った。
国分尼寺の隣に国分寺があり、その先に街道としての東山道が整備されつつあった。
その先に暫く行くと森が見えてきて、木を何本か過ぎると突然小屋が見えた。
尼が驚いていると族長が、入ったので、尼も続いた。
小屋の中に入ると焚き火の跡があり、族長は、前に燃えそうなクズをおいて、カチカチと火花を出して、火をつけた。
焚き火が燃え広がると、小屋の奥から鍋を乗せて、さらに水を鍋のなかに入れた。
また、さらに干し肉を出して木に差し込み、焚き火にかかるように周りに刺した。
水が沸騰すると尺で器に盛り、座ってる尼に渡した。
火の加減をみて、焼いた干し肉も渡した。
「族長、ここが拠点なのですか」
「いや、拠点はもっと山奥だ。ここは、国分尼寺に行くために用意した場所だ」
尼は器のお湯を飲んで干し肉を食べて続けた。
「狩りは、見せられますか」
「いいよ、大丈夫だよ」
小屋を出ると、仲間がいて、族長の合図で、森の中に入っていった。
尼は、仲間の女性に連れられ、付いていった。
森に入っていく途中に小屋がいくつかあり、その奥に入っていった。
森に入っていくと、族長や仲間が見え隠れする。
族長が、指笛で合図を送ると、仲間が左右に消えた。
尼を引き連れていた女性が尼の動きをとめると、族長が、弓を構えた。
すると、シュっという音がした。
族長が、弓をおろして、前に歩いて屈んだ。
そして足を持ち上げこちらを向いて、
「尼様、キツネです。」
と、見せた。
族長は、キツネをぶら下げながら、血抜きをして、空いている場所に仲間が火をつけていた。
平らな石の上でキツネを捌いて、焚き火の上の石の上に肉をのせた。
バーっと塩をふりかけ、焼き具合を見ながら、尼に木の葉の上に肉をのせ、ふるまった。
尼は、初めての狩りをみて、驚いてる暇もなく、食べた。
「美味しい。」
尼は、彼らが米作に頼らないのが、なんとなく分かったような気がした。
こんなに簡単に食べ物が得られる。現実の厳しさとは別に、そうも思った。
森は夕方の空が赤く、木々の間から風が吹いていた。




