尼の計画
尼の計画
国分尼寺の建物が出来上がった。
まだ、庭やいくつかの小屋は途中にあった。
尼は、族長達に伝えた。
「もしかして、あなた達は、夜にひっそりと来ることって出来ますか?」
族長が聞いた。
「どういう意味ですか」
「ごめんなさい。あなた達と話をするのを役人や侍女には見られたくないのよ」
「どうしてでしょうか」
「私が森の民達と話してるのを見られると叱られるは、、、」
族長は、潜る部屋を教えてもらい、尼と会うことを了承した。
尼は、奈良から来る国分寺の高層や役人が地元の人との交流をよく思わないと感じていた。
しかし、彼女の好奇心は、それを押しても彼女を導いた。
国分尼寺は、夜、寝静まったていた。
族長は、静かに忍び込んだ。
「尼様、族長が参りました。」
「族長、どうしたんだすか、こんなに遅くに、どうやって、、、」
「尼様、ここに来るのは自由が利きません。何か方法を考えませんといけません。」
内緒に話すのは無理かも知れないと尼も思った。
しばらく考えて、尼は答えた。
「族長達って、文字は読めますか?」
族長は当然読めないと答え、尼にどうするか聞いた。
尼は、文字を教えるから皆を呼んでくださいと言い出した。
「尼様、皆とは誰のことですか?」
「皆は皆です。族長、集落の者達を連れて来てください。時間を作ります。」
族長は、それなら、尼様との時間が作れるなと感じた。
「分かりました。」
族長は、密かに退出した。
翌朝尼は、朝食を食べた後、国分尼寺の祈りの間の扉に張り紙を書いた。
《文字どころ》
彼女は、まだ建設中の集落の者達に、声を掛けた。
皆様に興味があれば、文字を教えます。時間がある時に祈りの間へお越しください。
尼は、ニコニコしながら、祈りの間に座った。
族長は、尼の動きを理解して、集落の者ども数人を連れて祈りの間に入っていった。
「尼様、文字を教えて下さるようで、よろしくお願いします。」
尼の考えは、皆に堂々と文字を教えるという事をして、集落の人ばかりでなく、来れる人を誘い込もうという事であった。
こうして、少しずつ、尼は族長たちとの会話を続けた。
族長は、山の民の暮らしや佐久平の草原の風、長野盆地の季節の移り変わりを語った。
尼は、海の向こうから渡ってきた仏の教えや、ヤマト政権が新しい制度で農の民をまとめようとしていることを、静かに話した。
祈りの間には、彼らの声が少しずつ文字の形を結び、やがて、族長たちもその形を読めるようになっていった。
工事が終了した後も、祈りの間では、尼の交流が続いた。
国分尼寺の先には千曲川が流れていた。
川は谷間になっていて、崖の下を悠々と流れていた。




