新たな動き
新たな動き
笑う大巫女が、答えた。
「茅があるなら、馬飼いを入れれば良いぞ。」
族長が、馬は簡単には、育てられない。
しかし、佐久平なら可能性はあるのか。
海彦は、馬の存在は知っていたが、佐久平に来てくれるだろうか。と思った。
「内海に行けば、私の名を出せば良い。どうじゃ。」
族長が聞いた。
「あの内海とは何処ですか?」
「そうじゃ、伊勢の漁師に船を出してもらい。半日で行けるぞ。」
族長も馬彦も、佐久平を駆ける馬を想像した。
「内海の族長に私の名を言えば良い。小矛を見せれば信用する」
茅を半分返してくれて、二人は伊勢の海辺に向かった。
海辺の小屋で大巫女に言われて、内海に行きたいと言うと、大巫女の頼みなら、俺が乗せてやるという人間が直ぐに見つかった。
舟は板を張り合わせたもので、底板もあった。
後ろに艪のようなものがあり、前に二人を乗せた。
後ろでは、艪を交代で使う為にもう一人乗っていた。
伊勢湾は内海だからだろうか。波が静かで海に出た感じがしなかった。
穏やかな海を交代で半日ほど進むと、対岸の内海に到着した。
漁師二人に礼を述べ、陸を見ると青々とした草原が広がっていた。
佐久平とは違い、草が低い。
気が付くと、馬が走っている。
族長と海彦は、草原の端にある小屋を目指した。
カンカンカンという音が小屋の中から聞こえた。
馬飼いの族長と思われる者が、若い蹄鉄職人を見守っていた。
「すまん邪魔をする。大巫女様から教えてもらってここに来た。私たちは浅間山の者だ。」
海彦が伝えると、族長が、小矛を見せた。
馬飼いの族長は、小矛を確認すると答えた。
「大巫女の願いか。そうか。分かった。何が望みだ。」
海彦は、茅を見せて、大巫女の言葉を告げた。
「大巫女は佐久平の茅を見せて、ここを紹介した。私たちは、佐久平に来てくれる馬と馬飼い、蹄鉄を扱える者を探している」
「ほほう、馬飼いと蹄鉄師がお望みか。大巫女様は、我らの願いを聞き入れてくれたんだな。この茅は佐久平のものか?」
海彦が答える。
「そうだ。春に野焼きをして、秋に収穫するようになっている。そして佐久平は、高地だが、とても広い草原がある。」
「分かった。ちょうど良い。いま、馬を引き連れてるのが馬飼いで、蹄鉄師は、こいつで良いだろうか。若いが技術は充分だ。今日はここで寝て、明日の出発でどうだ。」
族長や海彦は、笑顔で了承した。
海彦は、佐久平を駆ける馬の姿を見た。
その夜は、馬乳の酒が出て、魚を焼いたものが夕食となった。
甘酸っぱい酒が、焼き魚の焦げた匂いと混ざり合っていた。
馬飼いや蹄鉄師がたくさんいた。
若手の馬飼いとも挨拶ができた。
彼らの牧草地体に馬が植えてしまい、新たな土地を望んでいたようだった。
馬飼いの族長たちに馬を選んでもらった。
海からの風が吹いていて、波の音が聞こえた。
草原の方は真っ暗だったが、馬たちの気配もザワザワしていた。




