伊勢の大巫女
伊勢の大巫女
伊勢は、気候が違っていた。
太陽が高く、風が暖かく、爽やかだった。
宮川に手を入れると、水の流れが気持ちよかった。
川を渡り、竹林に入ると、低い塀が、左右に広がっていた。入り口のような大きな門のような朱色に塗られた柱が二本立っていた。
そのまま中を通ると、警備の兵がいて、門になっていた。
族長が、警備に向かって伝えた。
「我らは浅間山の森の民だ。茅を持ってきた、大巫女様に奉納したい。」
と、小矛を見せた。
大きな扉を開き中に入ると、白い石が足元に埋められていて、正面の櫓の様な大きな柱が四本建てて、木の板で壁を囲い、屋根は茅葺きの屋敷だ。
これが神殿か。
二人は、出迎えた侍女に促され、中に入った。
中にも大きく太い柱が立っていて、真ん中に石で組まれた焚き火をする場所があり、木の棒の上に白い棒があって火がユラユラとついているものが二本立っていた。
祈りの部屋なんだろう。と思った。
侍女に促され太い柱の側面を前に行くと、また部屋があった。
茅を編んだ板が入り口の手前に置いてあり、中を見えないようにしてある。
侍女が、浅間山の者を二人連れてきました。と伝えると
「入れ」と返事が来て、侍女に促された。
二人は、中に入ると
「おお、三百年ぶりかのう。浅間山の者が訪ねてくれた。ありがたい。浅間山の婆様の気配がようやく見えるようになったのじゃ。そこに、座れ。」
二人は、茅を編んで敷物にして、四隅を模様のある布で留めてある所に座った。
前に大巫女様が座っていた。
体格は小さいが、豊かな母が語る感じがする低い声で、ゆっくりと話す。
「婆様に、来てもらいたいと願ったのじゃ。ほんによう来た。」
まず族長から話した。
「大巫女様、私は、浅間山の森で族長しております。桜婆様から言われてきました。」
続いて海彦が言った。
「大巫女様、私は、浅間山の森の民で佐久平で巫女をしている美和の夫です。」
大巫女が、感心するように答えた。
「桜とは、三百年前にここに来た巫女か。なるほど、それで浅間山とのつながりが消えたのか。佐久平もその頃、人がいなくなったと聞いておったが、いまは、戻ったのだな。うん、そうじゃ、茅を持ってきてくれたようじゃな」
海彦が答えた。
「桜婆様の教えで、いまは、毎年火を入れて新しい茅を得ています。」
「茅では飯の足しにはならんからのぉ、でも、これで分かった。婆様がここにそなたらを呼んだことが」
大巫女が大きく笑った。
二人は、なぜ笑うのだ。
何が起きたか、理解できなかった。
部屋には、日の光が入り、大巫女の顔を照らしていた。
爽やかな風が吹き込んでいた。




