御影新田の苦悩
御影新田の苦悩
夫婦古墳を建てた後、新しく美和、海彦が御影新田の集落を治めていた。
しかし、墓を建てて先代を祀っても、現状は停滞が続き、食べさせるのにやっとだった。
海彦が森に入った。
狩りをする約束だった。
狩りは順調で、小動物は、浅間山の森には、完全に戻っていた。
しかし、山の恵みで集落は食べさせられない。海彦が族長に相談した。
「ようやく、安定した収穫が出来ているが、ギリギリの暮らししか出来ない。何とかしたいのだが、何か出来る事はあるかな」
「俺たちは、森の暮らししか分からない。いまは、何処に行っても米作だけだかな、、、そうだ。婆様の洞穴に行くか?」
族長が言うのももっともで、海彦は、桜婆様の洞穴に向かった。
洞穴の中は、焚き火がユラユラと揺れ、桜婆様が見えてきた。
「そなたは、海彦か、先代たちの墓は、良い考えだ。食べられないが、茅を育てるのが良いと思う」
桜婆様からの助言を受け、米作を維持しながら、茅の育成にも力を入れることにした。
まず、茅を育てる場所とした所の木を伐採し、春に野焼きを行った。
水利は、田んぼとは違い、そのままにした。
米の収穫の後から、茅を伐採し、冬場は乾燥させていた。
順調に育った。
一方、佐久平での豪族の集落が、広がっていた。
諏訪や山梨からの最初は農民の動きを見て、佐久平に来たが、土地の争いが増えて、いつしか武力を優先し、力で治める集落になっていた。
海彦が森で族長と狩りをする約束の日。
族長が海彦に桜婆様が会いに来いと言ったと伝えた。
二人は、洞穴に入った。
石で組まれた炉の焚き火がカチッと音を立てた。
桜婆様が見えてきた。
「おお海彦よ、伊勢の大巫女が気にしておった。族長と言ってくれぬか?」
「桜婆様のお言葉、しっかりと承りました。」
海彦が、族長と頷き、穴を出ようとすると、桜婆様が続けた。
「茅を忘れるなよ」
二人は、頭を下げ、わかりましたと言って、出ていった。
海彦は、美和に伝え、族長と伊勢へ行くことにした。
茅を束ね、それを背負って伊勢へ向かった。
茅の香りが、海彦の背に広がっていた。
まず、八ヶ岳を経由して諏訪に入った。
諏訪は米作の田んぼが増え、大きな屋敷も幾つか増えていた。
河畔で休憩し、休んだ。
翌日は、伊那を抜け、飯田まで進み、山に入り休んだ。
そして、愛知に入り、伊勢へ向かった。
何泊かへて宮川にたどり着いた。
宮川は、いつものようにキラキラと光り輝いていた。
風が海から吹き付け、青空が爽やかに晴れ渡っていた。




