佐久平の帰還
佐久平の帰還
紀元400年、桜の孫で、美和を継いだ巫女は47歳になっていた。
海彦と結ばれ生まれた娘は、既に22歳になっていた。
佐久平の御影新田では、米作が進み、昨年はそれなりに収穫も得た。ある程度回復したので、春になる前から神殿作りも終わり、佐久平に戻ることになった。
海彦が先頭になり、栗林からの移転を開始した。千曲から上田盆地までの険しい道を整備し、そこから小諸を通り、佐久平の御影新田へと向かった。
浅間山の森の民は、新たな族長が木々の陰に隠れながら、その行列を見守っていた。
御影新田では、大きな門を囲むようなその中に広場を設け、その奥に大きな柱が4本建てた、高床式の神殿があり、階段を登り、海彦達が、順番に侍女が続き、美和や娘が入っていった。
神殿の祈りの部屋では、石で囲まれた焚き火の奥に、120歳になった桜が座っていた。
海彦や美和は、桜婆様が、生きていることに気がついていたが、久々に顔を見れて、大いに喜んだ。
桜が言った。
「皆のもの、よう耐えてくれた。ようやく、佐久平に戻ることが出来た。バアは、浅間山に入ることになった。これからは、よく耐えてここを死守するのだぞ。よろしく頼む」
海彦達が膝まづくと、頭を下げて、「こちらこそ、おめでとうございます。これからもよろしくお願いします。」と、返すのであった。
桜は手を伸ばし火に白い粉を振りかけると、バアーっと青い火が燃え上がり、風が入り口の方に吹くと、一瞬姿が消え、そのまま見えなくなった。
美和は涙を流したが、海彦が肩を抱え、伝えた。
「美和を娘に引き継いで、新たな巫女が、ここで誕生させる。頼むぞ」
美和は、ナイフを出して、娘に渡し伝えた。
「今日からお前が美和じゃ、このナイフはその証。頑張るのだぞ。」
ナイフの重さに、時の流れを感じ、緊張した。
娘は、恭しくそのナイフを受け取り、頭を下げた。
御影新田では、苗床づくりが進んでいた。
浅間山の森では、森の民が族長達が、狩りをしていた。
森では気が再生しており、小動物が集まっていた。
木の実にも期待ができる。
森の奥に少し開けだ場所に小屋が幾つかあって、その先に大きな岩が重なるようにあった。
浅間山の婆様の洞穴であった。
族長が若い青年と獲物をもって入っていった。
中は、暗いが石が組み合わさった炉が真ん中にあり、火が焚かれていた。火の陽炎の間から、ボォっと浮かび上がると、桜婆様が見えた。
「族長、その子が、次の護衛か」
「はい、桜婆様、いかがでしょうか。」
「うむ、賢そうな顔だ。分かった。」
桜婆様は、満足そうに笑った。
族長は、安心したようだ。
若者も、事の重大さに緊張していた。
外では、木々の間から青空が見え、暖かくなっていた。
鳥の声が聞こえた。




