大巫女の苦悩
大巫女の苦悩
海彦を先頭に桜とリコが後をおった。
周りの竹林のサラサラとした音の中、神殿の正門に入った。
中に侍女が待っていた。
入ると広い広間が正面にあり、左右に通りがあり、奥に促された。
海彦は、これはかなり建て直してあるなと感じた。
奥の部屋は、火が焚いてある祈りの場として、その先に小柄な女性が侍女を横において座っていた。
海彦は、浅間山のものと挨拶して、佐久平で巫女をしていた桜を紹介した。
桜が海彦の前に出て話した。
「大巫女様に申し上げます。私は佐久平で巫女をしていた桜と申し
ます。私は佐久平を捨てた身です。縄文巫女としてお許しください」
大巫女は、桜を気の毒そうに見て、海彦に問いかけた。
「海彦、浅間山は噴火で森も焼けたと聞いた。どうしてるのだ。」
海彦は、噴火の影響で森が燃えて、佐久平が逃げた集落の近くで、森の縄文の者共と暮らしていると伝え、いまも、浅間山の森の民としていると言った。
二人の話をゆっくりと聞いていた大巫女は、話した。
「我ら縄文巫女は、自然の厳しさの中で生きなければならぬ。海彦も桜も次の生き方を選ばねばならぬ」
海彦は近畿圏の流れを汲む大巫女が縄文巫女として生きてあることを感じた。
「桜も同じじゃ、佐久平という土地は逃げねばならなかったのだろう。だか、いまも米作をしてる民のために生きることこそ大事ぞ」
桜は巫女としての目的を見失っていたことに気がついた。
「とはいえ、伊勢も浅間山の婆様には随分と助けられた。その小矛が証拠だ。」
海彦は先代たちの動きに思いを寄せた。
桜もかつての海彦の子孫だ。
大巫女への助力があったことに驚いていた。海彦の父であった当時の族長が関わっていたのだろう。
己の血筋に、深い思いを寄せていた。
「桜よ、治めよ。桜が治めることが、己の土地だ。土地を治める事こそ、本望ぞ。我もそうありたい。」
大巫女は、桜に向かい告げた。
「桜、お主は、その土地の巫女じゃ。巫女に戻れ。」
桜は、理解した。
佐久平から逃れたが、米作をする民はついてきている。その土地の巫女なのだという事だ。
海彦も、理解した。
縄文の暮らしの中で、森の民であるが、この巫女を守るものなのだという事であった。
大巫女は、海彦に言った。
「何年かに一度で良い。茅を持ってきてくれ。」
海彦は、了解し、桜に顔を向け笑いかけた。
桜も笑顔になり、頷き返した。
大巫女は、浅間山のものを引き留め、桜が蘇ることを期待していた。
桜も今ある土地の巫女になる事を理解した。
外に出ると竹林から風が吹き付けてくる。
宮川の流れは、キラキラと輝き、祝福してくれているようだった。




