南の国
南の国
南の国は、敦賀に新たに入った武力を持った集団だった。
奈良盆地の近畿圏勢力とは別のようだった。
敦賀に入り、近隣の縄文集落をまとめつつ、米作を中心に弥生集落を作っていた。
米作の魅力は年々その力を示し、近辺の縄文集落を引き込み、集落を形作ったが、集まった人間は、嫌になったら山に逃げてしまう。
まとまりが中々上手く作れないでいた。
そこで遠くだが、上越の春日山で米作が成功している直江津王国に目をつけて、動き出していた。
しかし、南の国の者は、縄文巫女が集落の根本にあることを理解していなかった。
一方、柏崎は、直江津王国が米作を上手くやっていて、長岡を支援できる力を持つことに嫉妬していた。
そこで、南の国と柏崎が、まず接触することになった。
佐久平では、森の族長からの報告を聞いていた。
まずは、千曲川の上流は、大雨で崩れた岩が流れ出して、素直な川に戻っていた。
佐久平への洪水の心配は無くなっていた。
直江津王国は、洪水で水田が消失した長岡を助けていた。
戸隠の巫女が戻っていたこと。
諏訪ては、米作が広がり始めていること。
族長の今の動きの報告を聞いて、巫女は、判断が出来なかった。
そこで、族長は、南の国が直江津王国を狙ってるかもしれないと、憶測を伝えた。
すると巫女が聞いた。
「族長さん、では南の国の動きが問題ですね」
「巫女が、そのように仰るなら、南
の国の動きを注視します」
巫女はよろしく頼むと言った。
南の国は春日山の海側に陣地をつくった。
そこに、柏崎が訪ねてきた。
「南の国の兵隊さん、私が、直江津王国にご案内しますよ」
テントを出て海側を歩き、春日山を右手に見て直江津王国の館に向かった。
「柏崎殿、直江津王国は、随分と米作が豊作だな。」
「ここは、三百年以上経ってるからね。管理のものと農民が頑張ってるから」
「でも、兵などは居ないみたいだが、、、」
「兵隊は昔から居ないよ」
南の国の兵隊は、しめたと思った。
これは簡単に力に屈服するかも知れない。
と、舘の侍女が柏崎を出迎えた。
「どのような御用でしょうか」
「王に紹介したい者がおる、取り次いでくれ」
柏崎は、王族とつながりがあることは分かっていたので、宰相を通して、王に伝えた。
執務室に通された柏崎と兵隊は、王と宰相に挨拶をした。
宰相が聞いた。
「柏崎様、紹介したい人がいると聞いたが、どなたじゃ」
「宰相、ありがとう。
王よ、こちらは敦賀で勢力をつけている南の国の兵隊である。ご挨拶をしたいので、私が連れてきた」
兵隊は大きく礼をして南の国の兵隊であることを伝えた。
すると王が、聞いた。
「南の国の兵隊が挨拶だけか?遠い所から何用じゃ」
「はい、我らは南の国の王の下で、民を従えて集落を守っているものである。直江津王国でも、兵を持って民を従えねば、皆が離れてしまうのではないか?我らがその役目を果たしてやろうと王が申しておる」
王も宰相も兵が必要な事が理解できなかった。この三百年以上も兵等なしでやってきたのだ。
「南の国の王にお伝えください。
直江津王国では、兵など必要ない。
そう、お伝えください」
柏崎を使って王とは謁見できたが、話し合いにもならなかった。
柏崎は、南の国の兵が来れば怖がるだろうと思ったが、それも無駄であった。
遠くで海の音が虚しく響いていた。




