洪水
洪水
落ち着け。
俺は、佐久平の神殿の前で深呼吸した。
神殿に入り、巫女に挨拶し、話した。
「巫女、長岡で洪水が起きてしまった。同じ川の下流の集落だ。」
巫女は、長を通じて管理者達に気を引き締めるように伝えた。
夏だ。暑い日が続いた。
青い空に雲が広がり、強い風が吹いてきた。
雨がくる。
俺は、巫女に伝える。
皆には伝えても危機感まで伝わらない。
集落を捨てて、逃げる。
簡単には出来ない。
でも、巫女には準備が出来る、いまが大切だった。
巫女は、皆に頼み込んだ。
長や管理者達は、巫女の必死の頼みに動かされた。
農民も巫女の言葉を信じた。
皆の腰を上げる時、風に混ざり、雨が振ってきた。
大粒の雨だ。
集落全体が動き出した。長たちが先頭に立って、浅間山の森前まで来て、簡易テントを作ります。
背の高さぐらいより少し長い木を三本立て、早めに切った茅を束にして、屋根のかわりにする。
次々に人が逃げて入る。
雨の音がザーッと雨の音が響いてきた。
坂になってるこの地の横に雨が流れ落ちる。
凄い雨だ。
雷が、ガガーンと響く雷、雨がまた強くなった。
子供が泣き出す小屋もあった。
夜になっても、雨はやまない。
焚き火は、小さく静かだ。雨の音だけが続いた。
翌日も雨が続いた。
そして静かに、水が迫ってきた。
川の氾濫が見えるわけじゃないが、水の高さが上がってくる。
静かに、しかも確実に水の高さが上がると、水田が、小屋が水に飲まれていく。
雨がやんだ。
まだ曇り空だ。
巫女は、皆の様子を見て回った。
皆に時間はかかるが必ず水は引くからと、話して回った。
地面の上に水が迫り、テントを動かすグループもあった。
日が沈み、暗くなった。
心細い時間が続く。
翌日になった。
太陽が眩しい。
翌日まで、眠れない夜が続いていた。
日が昇り、水の高さは落ち着いたようだ。
皆は、ようやく眠りについた。
昼過ぎに皆が自分達が生き延びたことを理解し始めていた。
石を並べて焚き火して、鍋をかける。
ようやく火の煙が立ち上がるようになった。
安堵の気持ちが広がってきた。
俺は森で、小動物が混み合ってきたので、仲間と狩りをした。
血抜きをして捌いた肉は、夜になって、巫女の小屋に届けた。
朝になって、気がついた巫女は、長を通して、配れるだけ配った。
肉は、1日おきに届いた。
巫女は、浅間山の森に感謝するのであった。
佐久平の洪水は、10日ぐらい水が引かなかった。
小屋を片付け、グチャグチャの田んぼを整備して、苗がまだ充分に回復した。
まだ暑い日が続いた。
浅間山の噴煙が白く、青い空に吸い込まれていた。




