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漂流者  作者: 熊さん
第三章:弥生集落の陰
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長岡の洪水

長岡の洪水



巫女は冬の間、川の動きを気にしていた。


だけど、何が起きるのか。

海彦が言った上流の崖崩れ、それに千曲川からは、集落は離れてる。

巫女は、いま出来る事はないかと悩んでいた。


集落では、噴火が起き、灰が振ってきたが、秋の収穫が順調だったのは、巫女の祈りのおかげと、冬は、落ち着いて過ごせていた。


春が近づき、苗床の準備が進んでいる。

そこへ海彦が神殿を訪ねてきた。


「巫女、今年は気をつけないと、千曲川が氾濫するかも知れない」


と、いきなり言ってきた。


「千曲川は、佐久平でも集落から離れてますよね。それで、、、」


「巫女、佐久平は、平なんですよ。氾濫が起きるとここまで水が来ると思います。巫女様の気遣いは当たりですよ」


冬場に悩んでいた事が実現になるのか。と、巫女はがっかりした。

それを見た海彦が続けた。


「上流の確認、雨の様子など確定するのは、まだ早いですよ。準備ができます。」


そうだ。準備が出来るんだ。海彦の言葉にすがるように聞いた。


「すみません。何が出来るんでしょうか?」


「雨の気配が来たら、浅間山の森の手前まで逃げれば、水から逃げれると思います。」


逃げることが出来る。

噴火では何も出来なかったが、逃げられる。

巫女は、すがるように海彦に頼むしか無かった。


「海彦さん、お手伝いいただけますか?」


海彦は大きく頷き、快諾した。


雪解けで水の量が増えると感じ、千曲川の上流を見に行くことにした。


去年見た崖崩れの場所に行くと、その先にも崩れて堰き止められてる場所があった。


《これは、洪水、起こるかもだな》


堰き止められたダムは、まだまだいっぱいになって無い。でも溢れるイメージがした。


使われなくなった洞穴が、虚しく風に吹かれていた。


これは、長雨の時期が危ないかも知れない。

早めの準備しかないな。


俺は管理者に声をかけることにした。


巫女に繋ぎを頼み、簡易テントの作り方を教えた。

さらに、茅を早めに刈り取ってしまい、屋根材に使うことを指示した。


やがて順調に田植えが始まり、田植えが終わると、長雨の時期になった。


俺は雨の中、千曲川の様子を見に行った。しかし川の流れに変化は見られなかった。


巫女に報告した。


「長雨の影響は、まだないようです」


巫女は、喜んでいたが、海彦は続けた。


「申し訳無い。上流でせき止められてるのは、去年の地震のせいだと思う。安心は出来ない」


巫女は、長を始め、今回の長雨は過ごせそうだが、緊張しておいて欲しいと伝えた。


長雨が過ぎて、夏はとても暑くなった。

俺は、胸騒ぎがした。


暑いさなか、保倉川の小屋を訪ねた。

「叔母さん、俺だ海彦。」


「ああ、海彦、長岡が洪水で田んぼがやられたらしいよ。」


え、と思った。

そんな、長岡の川は信濃川だが、あれは千曲川だ。

不味いな、上流も崩壊の可能性はあるな。

俺は急いで戻った。


太陽は高く、真っ青な空に輝いていた。

こんなに暑いのに皮肉だ。


俺は舌打ちした。


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