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漂流者  作者: 熊さん
第三章:弥生集落の陰
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噴火

噴火



紀元前1世紀過ぎ、浅間山は噴火寸前であった。

そこに浅間山の森から男が神殿に来た。


「噴火が起きるぞ」


巫女は、虫の声が聞こえなくなった原因に思い至った。

巫女は、その男を受け入れた。


「噴火はいつ起こるのですか?」


男は、浅間山の森の者であった。

巫女は、長に向かって、農民に噴火が来ることを知らせてと言った。


その時、浅間山の山頂から赤い炎が拭き上げ、ドカンと大きな音が響いた。

皆は小屋に隠れるしかしょうがなかった。暫くすると辺りが暗くなり、噴煙の灰が振り注いできた。


暫くして、二度目の噴火の音が響いた。


ドドドーン


灰は、音もなく振り注いでくる。

小屋に、田んぼに至るところに、振り注いだ。


皆は小屋の中で、静かに見守るしか無かった。

幸い、噴火の向きがこちら側ではなかった。


巫女が男に聞いた。


「どうして来てくれたんですか。いまは、浅間山の森にも入ってないのに」


「俺は海彦を継いだ者だ、昔から佐久平の集落と関わりがある。」


巫女も代々、浅間山の森の話は言い伝えられていた。しかし内密のことと勘違いしていた。


巫女は海彦に礼を言い、しかし灰への手立ては思いつかなかった。


灰は時間を待つしかなかった。


巫女は、これからも伝えに来てほしいと言い、森のことは他には知らせないことを伝えた。


海彦は、了承し、戻った。


巫女は、侍女を伴い祈りを繰り返すのであった。


海彦は煤だらけの道を進み、浅間山の森へ戻った。

森にも灰は降り注いでいた。


噴火から二日が経った。


佐久平の農民は、稲の灰を祓い、水を引き直した。


噴火による灰の被害は、生活の影響よりも精神的な衝撃が大きかった。


巫女は予見とその対処が必要と考えていた。

まずは、祈りを繰り返し、農民の皆に、集落を歩き、落ち着かせる努力を忘れなかった。


巫女は、農民から信頼されていた。


その年の収穫は、灰の影響もあまりなく、無事終えた。


浅間山の森や佐久平には、冬になっても豪雪にはならない。とはいえ、雪は積もる。気温は低い、高所だからだろう。

だから、冬越しは必要だった。

海彦は、雪の積もる前に神殿に着ていた。

巫女が呼んだのだ。


「海彦さん、浅間山は、どんな具合ですか」


「落ち着いたよ。と言っても大きな噴火だったから、暫くは大丈夫と思う」


「暫くはって、いつ頃までですか?」


「俺は、そこまでわからないけど、」


そうですよね。未来を見ることなんて誰にも出来ない。気配を感じることだけだ。

海彦が続けた。


「千曲川の上流が大分と崩れていた。地震のせいだと思う。」


「それってどういう事ですか?」


「川の流れに変化があるって事だよ」


変化?とはなんだろうと巫女は思った。分からないという顔してると海彦が続けた。


「雨が降ると川が氾濫するかも、」


「そんな事が起きるんですか?」


「千曲川って大きな川で、長野盆地辺りも崩れたときがあったし、どうかな」


巫女は、春になっても知らせて欲しいと願った。

海彦は、浅間山の森は、この集落を見守る森だ。巫女が願うなら動く。

と、約束してくれた。


凍りつくような地面の上に、白い雪が降ってきていた。


風は冷たい。冬になる。


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