豊穣祭
豊穣祭
弓男と俺は、吉野川を見つけた。
川を渡り、山深い森へ入って行った。
吉野川はそれなりの川の流れがあった。冬だけの雪が解けたのか。
山の奥に入ると、あちこちに湧水が溢れていた。
竹筒に水を汲み入れ、薬草を探した。
夕方まで、小動物の狩りもして、朝方に戻ることにした。
簡単なテントで一晩過ごした。
翌朝、近畿圏の館に向かった。
田んぼは、馬を使い耕す様子が、春日山の方法に似てるなと感じた。
昼前に館に着いた。
弓男が、竹筒と薬草を差し出し、俺は、保倉川から持って来た魚の干物を出した。
巫女が俺に向かって言う。
「ありがとう。これで明日の豊穣祭の準備が整う。お前は、名前がないと困るので海彦と呼ぶことにする」
海彦か、まぁなんでもいいやと思った。
「茅も編んで、明日の祭りに使う」
集落の皆が喜んでいるようで、渡来の者どもに気圧されていた自分を恥じていた。
お前らも祭りにいてくれと言われたので、館の外側に簡易のテントを建てた。
翌日の朝早くから準備が始まっていた。
大きな広間になってる庭に櫓が建ててあった。
手前に板が引いてあり、奉納の籾、草、干物が並べてあった。
茅で編んだだろうものが上に乗っている。
櫓に火がかけられ、太鼓の様なものがタンタンタン、と合図の様になり始めた。
すると、渡来の者どもが左側に四、五名が並び、右側に侍女が三名、並んだ。
櫓の反対側には、集落の皆が集まりだした。
タンタンタン、と太鼓の音がタン、タタンとリズムが変わると、侍女が櫓の前に進み出て、音に合わせて、タン、タタンと踊り始めた。
巫女が入り口の扉を開けて登場して、櫓の前に立った。
「皆のもの、この集落も順調に栄えてきておる。儀式を始める。」
奉納物の籾、草、干物に膝混付いて竹筒の水をかける。周りでは侍女の踊りが続いている。
巫女は奉納物の一つ一つに頭を下げて、起き上がり、気合を入れて、バァーっと白い粉のようなものを投げ入れると、ボッと青い火が立ちのぼり、祈りを続けた。
炎が上がると皆はワーッと声を上げた。
見ていた渡来の者どももビクッとした。
タン、タタン
音が続いた。
朝もやが晴れて、太陽が真上に昇り、風が吹き抜けていた。
こうして、巫女としての力を示す巫女は、自信を取り戻していた。
渡来の者どもにも、それが分かった。
巫女は、何を恐れていたのだろうと感じていた。
民をまとめる力は見事だった。縄文巫女の力、そのものが政治に使えると思い直していた。
青い空は高く、白い雲が糸のように広がっていた。




