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漂流者  作者: 熊さん
第一章:珍しい渡来人
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近畿圏の男

近畿圏の男



机の前の男が聞いてきた。


「伊勢の大巫女の使いとな。」


弓男が、答えた。


「はい、これをご覧ください」


弓男は、小矛を前に出し、答えた。


「伊勢の大巫女様は、準備はできてると伝えろと申しておりました」


男は、小矛を見ながら、大きく頷き、兵を呼んで、耳打ちした。

兵は、話を聞くと素早く動き、部屋から出ていった。

男が弓男に向かって言った。


「姫様の言付け、よく届けてくれた。ありがとう。隣の男は、連れか?」


俺を見たので、答えた。


「俺は、漂流者で、いまは浅間山の婆様の指示で動いている。」


男は、驚いたように切り返した。


「浅間山の婆様だと?本当にいるんだな。姫様の御母上から聞いておったが、弓男は、そこのものなのか?」


弓男が答えた。


「俺は、婆様のもとで昔から動いておった。大巫女様もご存じだ。」


男は、大きく頷き、これからも力を貸してほしいと、頭を下げた。


弓男と俺は、何の力を貸すのか、と思ったが、何も言わず、こちらも頭を下げて、部屋から出ていった。


何処かで、ドンドンドンという足音がして、気合いの声が響いていた。


外に出ると、門までの距離が遠く感じた。

空では、先程鳴いていた!チチチという鳥の声が響いていた。


ようやく門の外に出た。

威圧から解放された気分で、二人は大きくため息を吐き出し、顔を見合わせ、笑った。


平地に植えられた米という草は緑色が綺麗で、これ、どうすると食べ物になるのか分からなかった。


ようやく、米の草の田んぼからはなれると、小屋が立ち並んでいた。


皆、白い服を着ていた。

山の者とは違うなと感じた。声をかけることもなく、弓男に付いて行った。


ヤブのような、林になっていた。

湧水なのか川なのか、よく分からなかったが、その近くに木を倒し、柱を作って、三角の形にして、草を集めて、簡単な小屋を作った。目の前で焚き火を起こし、休むことにした。

まだ肉があったので、焼いて食べた。

俺は、弓男に聞いた。


「大巫女様のことを姫様と読んでたな、姫ってなんだろう」


弓男は、分からないと答えた。


「とにかく、別世界だったな。凄く緊張したよ。どうしてかな」


弓男は、頷くが分からないと言った。


俺は、テントの中に頭を突っ込んで寝た。


雨が降って来た。霧雨のような雨だ。

林が続いた。

足元が滑る。

峠の様な道が続く。


山から降りると、天気が回復した。

伊勢路に戻ったのだろう。

広がる海に記憶があった。


海岸線で休み、愛知に入った。

見慣れた森になってきた。

まだ伊那には遠いらしい。


でも、狩りができた。

キツネ等を狩って、また、小屋を作った。

雨でちょっと疲れた。


弓男は、器用に小屋づくりや狩りで動いてくれた。

学ぶことが多い。


身体も頭も混乱していたかもしれない。


伊那や諏訪を通過すると、戻ったという感じになり、八ヶ岳の親父の小屋で、こらまでの話をしたら、親父は、なるようにしかならん。

と関心が無いようだった。


振り返ると、浅間山が見えてきた。


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