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「投降などするものか。俺たちが、この計画のためにどれだけの時間を費やしてきたと思う! お前らの言葉で『はい、やめます』と引き下がる程、生半可な気持ちでこんな騒ぎを起こすはずがないだろう!」
日比谷はそう言うと、側にいた御幸の頭を鷲掴みにして首にもう片方の手を回した。「うっ……」と苦しそうな表情を見せる御幸に、「やめなさい!」と即座に神奈が反応した。
「おい、退魔師ども!」
そして大声を上げると、皆の注目が日比谷に集まった。ふと嘲笑を浮かべた日比谷の手には、手のひらよりも大きい小刀。もう片方の手は御幸の体を掴んでいた。
その刀が御幸の首筋に当てられた瞬間、その場に緊張が走る。
「お前ら、数で俺たちよりも優位に立っている気になっているが、ここに人質がいることを忘れているだろう! おかしな真似をしてみろ! この男の命はないと思え!」
その言葉に、退魔師たちの動きが即座に止まる。日比谷はその様子をおかしそうに見ると、今度は神奈を見た。
「裕福な家柄も、誰もが認める才能も、麗しい婚約者も……その全てを手にしたお前みたいな人間に、俺の苦悩は分からないだろう? 桐生院神奈!」
「いい様だな」と笑う日比谷に、ぎりと歯を噛みしめる。
「まずいぞ、桐生院君。まだ帝都中で魔鬼が出現している。早く奴らを捕らえなければ被害は拡大する一方だ」
「……ええ」
視線を日比谷に向けたまま、小さな声で正宗が神奈に耳打ちする。
けれど、状況が状況だ。御幸が人質に取られている以上、迂闊な真似はできない。どうするべきかと悩んでいる内に、時間は刻一刻と過ぎていく。
その時、こちらをまっすぐ見つめる御幸と目が合った。
小さく頷いた御幸からは、「覚悟はできている」とでも言うような潔さが浮かんでいる。その顔を見た瞬間、神奈は目を見張り、両手をギュッと握りしめた。
もう悩んでいる暇など、ないことは神奈も分かっていた。




