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「まさか、桐生院神奈が……っ!」
予想外の展開に、日比谷は驚いているようだった。緻密に練られた計画で、神奈が到着するまでに、まだまだ時間はあると算段は十分につけていたのだろう。だが、日比谷は見誤ったのだ。この帝都随一の退魔師と呼ばれる、桐生院神奈の実力を――。
「くそっ!」
日比谷が懐から取り出した白い札を持ち、何かの呪文のようなものを唱えた。すると、どこからともなく魔鬼たちが現れ、神奈を襲う。
「ハァッ!」
だが次々に襲い掛かる魔鬼の大群を、まるで舞を踊るように軽やかな刀捌きで仕留めていく神奈。たった一人で、この数の魔鬼の相手にするなど普通は成しえないことだ。
「馬鹿な……っ!」
けれど、それをやってのけてしまうのが、桐生院神奈という退魔師だった。
地面を蹴り、高く飛んで刀の柄をぐっと握る。そのまま重力を利用して、手を伸ばしてきた魔鬼を一閃。続けざまに襲い掛かってくる、もう一体を空中で斬り、背後の魔鬼も刀を回転させ振り返らぬまま、突き刺した。
息つく間もないほどの量の魔鬼が、四方八方から神奈に群がるも、その全てを斬り伏せていく。
「化物なのか、あの女は……っ!」
そう言って刮目する日比谷に、御幸は「化物なんかじゃありません」と継いだ。その横顔には恍惚とした笑み。
「彼女は僕のかわいい婚約者ですよ」
刀を振るうたびに、長い黒髪をひとまとめにしている花飾りがゆらと揺れる。それが彼女の力の源だと言うように、醜悪な魔鬼たちに囲まれてもなお、輝きを放ちながら。
「くそっ! すぐに第二部隊を投入しろ、今すぐにだ!」
苛立ちを含んだ声を上げ、日比谷が式神を使って仲間に指示を飛ばした。この場にいる部下たちも腰にぶら下げた刀を取り、応戦しようとする。しかし――。
「その式神を飛ばすお仲間なら、すでに牢の中だが?」
厳格な声と共に現れたのは、ここへ来るまでに合流した、別現場で討伐に当たっていた退魔師たち。黒の隊服に身を包んだ帝都を守る英雄たちがずらりと並び、反逆者を一斉に取り囲んでいた。




