5
◇◇◇
「この辺りは、大方片付いたかしら……」
辺りを見渡して、魔鬼の姿がないことを確認した神奈は、小さく息を吐いて調伏刀を鞘にしまった。
戦闘の激しさを物語るように、魔鬼たちによって周辺に立ち並ぶ建物はあちこち破壊されてはいるものの、人的被害は今のところ最小限に留められていると夏樹から報告を受けたばかりだ。
「神奈さん!」
神奈が荒くなった息を整えていると、同僚の白鳥有栖がやってきた。ところどこに傷があり、黒のマントには切れ目が入っている。
「有栖さん、怪我は大丈夫ですか」
「ええ、少しかすっただけ。それよりも、桐生院副隊長が神奈さんを探していたわよ。今は二区先の現場で指揮を執っていらっしゃるわ」
(お父様が……?)
聞けば有栖は二区先で、父の玄瑞と同じ現場で魔鬼討伐に参加していたらしい。副隊長の玄瑞が指揮を執っているおかげで、人手は十分と言われ、有栖は他地区の応援に来たというわけだった。
(何か知らせたいことがあったのかしら)
神奈は首を傾げつつ「わざわざ知らせていただき、ありがとうございます」と礼を述べる。
「桐生院先輩!」
ひとまず有栖に現状の説明をしている途中、今度は夏樹がやってきた。
「ここの後処理は任せて、他の地区の応援に行ってくれとのことです」
「分かりましたわ、急ぎましょう」
神奈の言葉に頷いた二人も、共に次の現場へと向かうことになった。戦況が定かではないため、どこもかしこも慌しく、混乱を極めている。
途中、荒れた街を見つめながら神奈は頭の中に浮かんだ疑問を反芻していた。
(通常、何かあった時の伝令は式神を使って行われる……。けれど、今それが使われていないということは、式神が使えない状況ということかしら。ということは――)
と思案したところで、ある考えにたどり着く。
「まさか、この東雲の隊内に今回の事件に関わっている人物が……?」
ぽつり呟いた神奈の言葉に、夏樹と有栖の表情が強張るのが分かった。
「それって、反逆者がいるってことですか?!」
「だとしても、なぜ……!」
戸惑う二人をよそに、神奈は冷静に「可能性のひとつですわ」と継いだ。
「式神を使って伝令を飛ばす方が情報伝達速度は速いものです。けれど、それを使わなかったということは、式神を飛ばすことで何かの情報が洩れる危険性を回避したかったのでしょう。それに――」
神奈はそこで言葉を区切ると、夏樹の方を見た。
「朝霞君、貴方も、気づいていませんか……この刀の違和感に」




