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◇◇◇
「うっ……」
手首にひんやりとした冷たい感触を感じて、御幸はゆっくりと目を開けた。埃っぽい匂い。薄暗闇の中で目が慣れず、ここがどこだか分からなかったが、ほどなくして視界の輪郭がくっきりとしてくる。
目だけで辺りを見渡してみると、黒い服装に身を包んだ男たちがこちらを見下ろしていた。
「起きたか、芦屋殿」
からかうように自分の名を呼ぶ男たち。御幸は眉間に皺を寄せ、目の前の男たちを睨みつけた。数は三名。みな、《《黒の隊服に黒のマント》》を羽織っている。
「……どういうことですか。東雲の隊服を着た貴方がたが、一般市民の僕を拘束するなんて」
御幸は壁際に背を預ける形で座っており、両手首を頭上にある鎖のようなもので拘束されていた。どうやら目が覚めたきっかけになったのは、この鎖が原因だったようだ。体を動かすと、じゃらと無機質な音が部屋に響く。
すると目の前の男が「いい眺めだな、似合っているぞ」と愉快そうに笑うので、御幸は男をきっと睨みつけた。
「ふざけるな」
「おうおう、色男が台無しだ」
「一体どういうつもりで、僕を拘束している」
湧き上がる怒りを抑えて、冷たい声でそう問うた御幸。すると一人の男が近づいてきて、御幸の目の前にしゃがみこんだ。
「俺たちは、とある御方の崇高な理念に賛同して集まった同志というやつだ。今日は、この帝都にその理念を広める記念すべき一日となるだろう」
「崇高な理念……?」
「ああ、お前はその計画を遂行するのに邪魔になる、桐生院神奈をおびき寄せる餌になってもらうためにいる」
その言葉に御幸は目を見開いた。すると、男はうっそりとした笑みを浮かべ、手を伸ばしてきたかと思うと、御幸の顎をくいと遣る。




