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現場に駆け付けた神奈たちは、目の前に立ちはだかる魔鬼の数に驚いた。あちこちで負傷者も発生しているようで、退魔師以外の東雲隊員が救護に当たっている。
「朝霞君、行きますわよ」
「はい、先輩!」
神奈と夏樹も鞘から刀を抜いて、すぐに魔鬼討伐に加わった。すると額から角を生やした鬼たちが己の危機を察知したのか、次々に襲い掛かってくる。
神奈は飛び込んできた魔鬼を、まずは一体真正面から斬り伏せて、続けてやってきたもう一体も突きの一手で消滅させた。黒い煙となって消えていくそれは、まるで存在そのものが幻だったかのように跡形もなく失せていく。
「くっ……!」
斬っても斬っても果てなく、迫ってくる魔鬼たち。だが、神奈はぐっと刀の柄を握りしめると、力でそれを押し返し、間髪入れずに真正面から刀を振り下ろした。
数が多いので体力の消耗戦になりそうだが、やるべきことはいつもと変わらない。ただ目の前の敵を倒すのみ、だ。
(ん……? これは――)
その時、神奈は黒い煙となって消えた魔鬼の側に、白い紙の切れ端のようなものが落ちていることに気が付いた。焼け焦げた跡があるそれは、以前見回り中に五体の魔鬼と遭遇した時に見つけたものと同じようにも見える。
「どうして、こんなものがまたここに……」
これは果たして偶然なのだろうか。どこか頭に引っかかるような違和感を感じ、神奈はじっくりと目を凝らそうとした――。
「桐生院先輩、危ない!」
少し離れたところから聞こえてきた夏樹の声に、慌ててその場を飛びのく。見れば、二体の魔鬼が同時に神奈に襲い掛かろうとしていたところ。神奈は地面を同時に蹴って体を翻し、ものすごい勢いで自分の方へと飛び込んでくる敵から身をかわした。
「はぁっ……!」
倒しても倒しても現れる魔鬼たちに、周囲の退魔師たちも苦戦しているようだった。神奈はちらと周囲に視線を向け辺りにいる敵の数を数えた後、「朝霞君!」と相棒の名を呼んだ。
その一言と刀の構えを見て、勘のいい夏樹は神奈が今から何をしようとしているのか分かったらしい。「了解しました!」と応えると、周囲で戦う退魔師たちに「皆さん、後方へ」と呼びかける。
「おい、朝霞! どういうことだ!」
「なぜ後方に⁈ 一体、何が――」
状況が分からぬまま後ろに下がった退魔師が、夏樹の背後から声を上げた。だが、次の瞬間、ひらりと蝶が舞うような身のこなしで駆けていく神奈の姿を見て、息を止める。
圧倒的な速さと、敵の急所を的確に突く正確さ。黒の隊服に、同じ色のマントをなびかせ、次々に多数の魔鬼たちを黒い煙に変えていく神奈に、みな言葉を奪われていた。
膨大な霊力が込められた調伏刀を扱えるだけでも凡人には難しいのに、それを軽々とやってのけるのが桐生院神奈だった。そんな彼女の頭には、可憐な山茶花の花飾り。
「……帝都随一の退魔師、桐生院神奈の本気が見れますよ」
そう言った夏樹の口元には、笑みが浮かんでいた。すべてを凌駕する圧倒的な強さを前に夏樹の体はぞくりと震え、ただただその刀捌きに見惚れていた。




