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『……豆だらけの、汚い手でしょう』
堪らず神奈がそう言えば、御幸は「汚くなんかありません」と返した。時折、鳥の鳴き声が聞こえるだけの縁側に、静かに響いた御幸の声。
『貴女が努力を重ねた証ですから』
そう言って優しく微笑みかけてくれた婚約者に、神奈の胸がどきりと音を立てた。だが、すぐに俯くと綺麗なハンカチを汚す自分の手が目に入る。
『……ですが女が刀を振るうだなんて、とおっしゃる殿方もいらっしゃいますわ』
そんな神奈の言葉にも、御幸は陽だまりのような笑みを浮かべ「僕は、かっこいいなと思っていますけど?」と返してくれたのだ。それがどれほど神奈の心を慰めてくれたか、きっと御幸は知らないだろう。
その年の誕生日、御幸が神奈に贈ってくれたのがこの花飾りだった。
『春の花のように美しい貴女に、ぴったりの髪飾りだと思って選んだんですよ』
にこりと綺麗に微笑む婚約者に、神奈の胸はときめいた。「つけてあげます」に言われ、差し出すと一つに結った髪の根元に髪留めをつけてくれた御幸。
『以前、女が刀を振るうことを気にしていたことがあったでしょう? ですが外野が何と言おうとも、退魔師という仕事は誇らしい仕事です。……もし不安に思うことがあった時は、どうかこの花飾りを見て、そのことを思い出してください』
御幸からそう言ってもらえて、神奈は嬉しかったことを思い出す。あの日以来、仕事中には必ずこの花飾りをつけていた。愛しい婚約者を少しでも身近に感じられるように、己の使命を胸に刻み込むために――。




