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その後、しばらく有栖の腕を組んだまま歩いた神奈だったが、安全な場所まで来ると、そっと腕から手を離した。ずっと黙ったままの有栖が気になり、ちらと彼女を見れば居心地が悪そうに佇んでいた。
『芦屋様もがっかりされたのではないかしら。退魔師としての力を見込んで、桐生院家の貴女と婚約したというのに』
そう言えば霊力測定会の日に、彼女は神奈にそんな言葉を掛けてきたのだった。
(こうやって顔を合わせるのはあれ以来ですから、気まずいのでしょうね)
神奈は小さく息を吐くと、涼しげな表情を浮かべたまま「では、私はこれで」と有栖の隣を通り過ぎようとした。
「待って……っ!」
だが、自分を呼び止める声が聞こえて振り返る。
「……助けてくれて、ありがとう」
有栖はそう言って神奈の方を見たものの、その後すぐに唇を結んでしまい、助けられたのは不本意だったのだろうかと思う。
「別に……たまたま通りかかっただけですわ。あそこにいたのが、私でなくとも貴女を助けてくれる人はいたでしょう」
周囲には誰もおらず、長い廊下に二人きり。あまり気遣わないでほしいと思いながらそう返せば、有栖は俯いた。
「……いいえ、いつも皆黙って通りすぎていくだけ。誰も助けてくれないわよ」
静かにそう呟いた有栖に、神奈は目を瞬かせた。
「退魔師としての実力は中級。男相手に、いつもニコニコと愛想を振り巻ている軽い女だと、周りは私のことをそう言っているもの。さっきの先輩も、誘えばすぐについてくると思ったから、私なんかに声を掛けてきたのよ」
吐き捨てるようにそう呟いた横顔は憂いを帯びていた。
社交界で注目を浴びている令嬢だということは神奈も知っていたが、いかんせん友人が少ない神奈にとって、裏で彼女がそんな風に言われているとは初耳だ。
白百合のように可憐な令嬢。
それが神奈のもつ、有栖への印象だったから。




