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「先日の変死体の件についてだが、詳細に検死を進めたところ被害者の体の一部に異形化が認められた」
帝都の中心部にある退魔師組織「東雲」隊舎の会議室。しんと静まり返っていた部屋が、総隊長の言葉にざわついた。
退魔師はもちろん、技術部や研究部の面々も集められた会議で発表された内容を受け、室内には緊張が走った。総隊長の隣いる神奈の父、桐生院玄瑞も険しい顔をして座っている。
先日、御幸の両親を招いて食事会を開催する予定だったのだが、その途中に緊急出動要請の報が入り、会は中断。そこで発見されたのが、一部が異形化した人の変死体だったのだ。
「体の一部が異形化って、もとは人間だったってことだよな」
「それって、かなりヤバいんじゃないか?」
会議室には不安の声があちこちから上がっていたが、総隊長の隣に控えていた玄瑞が「静粛に」と諫めると、ざわめきが止む。
とはいえ人間の異形化など、今までにない異常事態だ。何か不穏な影が迫っているような不気味さに、神奈の胸もざわざわと落ち着かない。
「原因は研究部が調査しているものの、依然として不明点が多い。混乱を避けるため、一般市民には異形化について伏せているが、現場に出る退魔師各員も気を付けて任務に当たるように」
「どんな些細なことでもいい。不審な点を察知した者は、すぐに本部へ報告しろ」
上官の指示に全員「はっ!」と敬礼をし、会議は終わりを告げた。あちこちで円を作った隊員たちがひそひそと今回の件について話し合っているのを横目に、神奈は小さく息を吐いた。
「不気味な事件ですね」
神奈が資料を整理していると、隣に座っていた夏樹が憂い気に呟いた。
「ええ……前代未聞の事件ですから上層部もピリピリしているのでしょう。しばらくは忙しくなりそうですわね」
「そうですね。先輩もお気をつけて」
「朝霞君も」
退魔師として常日頃から不測の事態に備えているが、こういった予期せぬ事案にはより一層身が引き締まる。今日からしばらくは街の見回りにも人員が投入され見回りが強化されるだろう。
忙しい日々が続きそうだ、と神奈はちらと窓の外を見た。非番の日も常に調伏刀を携帯するようにと命じられたことが、それを物語っている証拠。何事もなければいいけれど、と神奈は思いながら会議室を後にした。




