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帝都中心部にある特務機関「東雲」隊舎。立派な正門の奥に佇む本舎には、黒の隊服とマントに身を包んだ東雲の隊員たちが続々と出勤していた。
帝都を二十四時間体制で守っている彼らは、基本的に交代勤務制。いま出社する隊員たちと入れ替わるように、夜勤担当だった隊員たちは帰路につく頃だった。
組織内には主に魔鬼討伐を仕事ととする退魔師のほか、魔鬼の生態を調査する研究部、討伐に使用する武具開発を行う技術部、報告書の作成や諸々の手続きを行う総務部など、さまざまな部署に分かれている。
なかでも退魔師は霊力の保有数によって上級、中級、下級と階級が決められており、神奈は組織の中でも数が少ない上級の称号を与えられている、エリート退魔師である。
「桐生院先輩、おはようございます」
隊舎に到着した神奈を出迎えたのは、朝霞夏樹だった。朝に相応しい爽やかな笑みを浮かべ、廊下ですれ違う同僚たち全員に挨拶をするコミュ力抜群の後輩である。
「ごきげんよう、朝霞君」と神奈が返せば、のほほんとした調子で「今日もいい天気ですね」と毒気のない笑顔が向けられる。人の出入りが激しい隊舎内は賑やかで、時折大量の資料を抱えた隊員が忙しなく廊下を駆けていく。
「そういえば今日の見回り番は、先輩と俺、あと新入り退魔師の三名体制らしいです。なんでも、新入りとペアを組んでた上級退魔師が体調不良で休みみたいで」
「場数を踏んでいない新人の見回りは、上級退魔師の帯同が必須ですものね」
「ええ、基本的なフォローは俺の方でしますから」
「分かりましたわ」
夏樹とともに今日の任務の流れを確認しながら、隊舎内の廊下を歩く。洋の要素が取り入れられた別棟のホールまで来ると、ひと気も少なくなり、二人が履いているブーツの足音がよく響き渡る。その時だった――。
「おや、桐生院君じゃないか」
前方から、右目に片眼鏡をつけた白衣の男がやってきた。




