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後編

 久し振りに見たブレア様の笑みに顔が熱くなる。ああ、やっぱりわたくしはこのお方が大好きなのがわかる。目が合ってわたくしに笑い掛けてくれただけで嬉しいなんて。


「ありがとう、僕もエリーに会いたかったよ」

「!ありがとうございます」


 なら何故、何故……。


「何故婚約を解消なんて言うのですか?」

「…それについて話すよ」


 ソファーに座るとブレア様も隣に座った。

 部屋には2人だけ。

 シンと静かな部屋にブレア様はどう言い出すか悩んでいるのか、少しだけ険しい表情をしていた。


「……ずっと話そうか悩んでいたんだ。でもこの話をしたらエリーが離れていくんじゃないかと思って…」


 わたくしが側にいなくなるのが、嫌われるのが怖いと怯えるようにポツリと話し始めた。

 何故怯える必要があるのだろうか。自分は決してブレア様から離れることはないのに。今離れていったのはブレア様からなのに。


「わたくし、ブレア様から婚約破棄されてとても悲しくて怖かったですわ。ブレア様がわたくしから離れていってしまって。それと同じ気持ちなのです。何故何も言わずに離れていったのですか?」

「……そうだね。話をしてから嫌われるくらいなら、何も言わない方がいいと思ったんだ。でも父上に何度も説得されて決めたよ」


 わたくしの目をじっと見つめる。ブレア様の深く吸い込まれそうな緑の瞳。先ほどの表情と変わって何か決心した表情。


「実は僕…――――女なんだ」


 …………はい?


「えっと……もう一度お願いします」

「僕は男ではなく女だ」


 はい!?!?


「あ、あの…つまりどういう――」

「いきなりで驚くよね。この事は今父上がキミのご両親に説明しているはずだ。あ、ちょっと待ってね、見たほうが早いと思うから今脱ぐよ」

「ぬ、脱ぐ!?!?」

「ね、ちゃんと僕のことしっかり見てね」


 脱ぎ始めたブレア様に顔が爆発しそうなくらい赤くなる。あわあわしていると脱ぎ終わったブレア様の胸にはサラシか巻いている。確かに女性の体のラインをしていた。

 ずっとそのままにいられるのは恥ずかしくてブレア様を見るのが難しいのですぐに服を着てもらった。

 ――――あれ。今わたくしはとんでもないことを聞いてしまった気がする。だってブレア様は第一王子と聞いている。それなのに――――女性?


「驚くのも無理はないよ。僕は男として育てられたからね」


 曰く、男が生まれなかった王家は生まれたばかりのブレア様を男として育てることを決めたそうだ。

 期限は男が生まれるまでとしていたが、ブレア様を最後に子は生まれなくなりもう女だと言うことに公表出来なく婚約者まで作ってしまう。

 罪悪感を感じて耐えきれなくなり婚約破棄をして女であることも世間に公表しようと思ったのこと。


「何度も話そうと思ったんだ。キミに嘘をつき続けるのも限界を感じてきて…。」

「……わたくしを愛していたのも嘘なのですか?今までそうわたくしに言ってくれたのも…」


 冷たい声がでた。もしブレア様がわたくしを愛していなかったと言われたら……。


「違う!!」

「!!」

「確かに女であることを隠してたのは悪かったと思っている。だけどエリー、キミを愛しているのは本当だ。この気持ちに嘘はない!」


 嬉しい。嬉しい。嬉しい。嬉しい!

 どうしよう。好きの気持ちが溢れて止まらない。ブレア様が女性でも関係ない。だってわたくしが好きなのは―――。


「気持ち悪いかい?女が女を好きなんて……。もし嫌ならもう会わないように――――」

「ブレア様」


 ブレア様の頬に手を添えて唇を重ねる。そっと離れるとポカンとした表情のブレア様を見てクスリと笑った。


「そんな事仰らないで。わたくしがお慕いしているのはブレア様なのです。男性でも女性でも構いませんわ。ブレア様自身を愛しているのです」


 ブレア様が女性とわかってもこの気持ちが冷めることはなかった。むしろ真実を教えてくれてとても嬉しかった。もしわたくしとブレア様の歳がどんなに離れていても好きになる。そんな自信しかない。


「ありがとう。キミと同じ気持ちで嬉しいよ。ねぇエリー、婚約破棄してしまったけど、もう一度僕と婚約してくれないか?」

「……いいのですか?」

「キミじゃなきゃダメなんだ。僕と結婚してくれ」


 返事は勿論決まっている。


「――――はい。勿論」



 その後わたくし達はこの事を報告するため、王様と両親がいる部屋に戻った。もしかしたら反対されるかもしれない。だけど諦めることはできない。


「……本当にいいのかね?」

「はい、父上。」

「エリー、後悔はしない?」

「お母様、わたくしは後悔なんてしません」


 報告すると両親は複雑そうな表情をしていた。やはり女同士だと認めてくれないのだろうか。


「……エリーが幸せになるのならこの婚約に反対はしないよ。だけどこの先困難な事だって――」

「心配しないでお父様」

「僕達はどんなことがあっても2人で乗り越えると誓ったんです」


 お父様達はわたくし達の話を聞いて婚約を認めてくれた。もし反対されたら駆け落ちだってするつもりだった。


「お前を女としてではなく男として育てずっと男装させてたのをずっと気がかりだった。これからは男装ではなく好きな物を着て欲しい」

「父上…。心配して下さりありがとうございます。だけど僕はこの格好がとても気に入っているんです」


 ドレス姿のブレア様も見たかったな。

 そんな事を思いながらこれからの事を考える。きっと周りの人間から好奇な目で見られるかもしれない。だけどきっと大丈夫。わたくしは1人じゃない。ブレア様がいる。


「さて、結婚式はいつ挙げようか?3日後でもするか?」

「王様…流石に早すぎます。まだエリーには私の側にいて欲しいのです」

「ハハッ。娘がいなくなる寂しさはわかるぞ」


 お父様と王様が賑やかに会話をしている。

 結婚式…。ブレア様もウェディングドレス着るのかもとワクワクしてしまう。


「ねぇエリー。愛してるよ。ずっと僕の側にいてくれ」

「はいっ。わたくしも愛しています!」

ここまで読んでくださりありがとうございます!

2人のその後は番外編として投稿出来たらなと思います。

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