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とある日常

 明日は2人だけのお茶会が開かれる。ブレアは国民に女だと公表してから忙しくなりなかなか会えなくなった。エリーは暫く会えなかったブレアと会える事に胸を躍らせた。

 様々なドレスをクローゼットから出しては仕舞い、出しては仕舞いを繰り返し、ブレアと会えるとわかってからかれこれずっと悩んでいた。


「お嬢様、もう夜遅いです。お茶会は明日ですよ。ずっと悩んでいますと夜更かしでお肌に悪いですし、このままだと明日になってしまいますよ」

「わかっているわ、フロール」


 メイドのフロールが話しかけてきた。エリーが振り替えるとフロールもドレスを持ってエリーにあわせていた。


「うーん、どれもお嬢様に似合いますから悩みますね…」

「…フロールも悩んでいるじゃないの」

「私も明日のお茶会にはとびきり素敵なお嬢様になって殿下に見せたいのです。…他のメイドを呼びましょうか?」

「いいえ、その必要は無いわ。更にメイドを呼んだらもっと悩むもの」


 エリーは2週間前にもフロールと他3人ほどのメイドを呼んで一緒に選んでいたがそれでも決まらなかった。悩み続けていたらついに明日お茶会が始まってしまう。

 そしてようやく絞った5着。ここから選ばなくてはと考えるがなかなか難しい。

 フロールは「どれも似合うのだからお嬢様が全部着れるように明日から5日間お茶会してくれないかしら」と思うが、多忙なブレアから休みを5日間取るのは難しい。だからこそこうやって悩み続けている。


「あとはここから選ぶだけね。さて、ブレア様はどんなのがお好きかしら」

「きっと似合うと言ってくださいますよ」

「…ブレア様はなんでも褒めてくれるわ。だから悩んでしまうの」


 そう、なんでも褒めるブレアにエリーは少し困ってしまう。お世辞ではなく本心から言ってくれるから嬉しくて毎回どのドレスを着ればいいのか迷ってしまうからだ。

 季節に合わせるのもいいし、ブレアの好む色を選ぶのもまたいい。記念日に買ったドレスもいい。


「…そういえば、ブレア様と会う時にこのドレスを着る機会はあまりなかったわね」


 そう言ってレモンイエロー色のドレスを手に取る。他のドレスと比べると少し落ち着いていて暑い日に着るにはピッタリの涼しげなデザイン。


「でしたら当日着るのはそちらのドレスはいかがですか?」

「え?」

「暑さは続いていますしピッタリだと思いますよ。それに普段は見ることのないお嬢様の姿をご覧になられた殿下はきっと驚くでしょう」


 確かに、と考える。驚いた姿なんて見たことない。エリーはブレアを驚かせたい気持ちがわいて出てきた。


「それもいいわね。明日のドレスはこれにするわ。メイクもお願いするわね」

「かしこまりました」


 驚いてくれるかしら。喜んでくれるかしら。そう思いながら明日を楽しみに心を躍らせた。



 翌日、フロールにカーテンを開けられ日の光で目を覚ます。とてもいい天気だ。フロールと他のメイド達にドレスを着替えさせてもらい、メイクと髪を整える。


「とてもお似合いですわ」

「これなら殿下もびっくりなさるでしょう」

「更にお嬢様の虜になりますよ」


 メイド達に褒められエリーはワクワクしていた。早くブレアに会いたいと。

 お茶会の準備もテキパキと進んで準備は整った。あとはブレアを待つだけ。

 この姿を見てどんな反応してくれるかしら と、ドキドキしながら待ってるとブレアがやってきた。

 いつもの男装姿。女だと明かした後も男装を続けているが、胸にはさらしを巻くことはなくなった。ブレア曰く、さらしを巻くと窮屈で苦しいからもうやらなくていいならやらない。服装はドレスよりもこの姿が1番落ち着くらしい。いつかはドレスを着た彼女の姿が見たいなとエリーは思った。


「お待たせ、エ…リ……」


 ポカン、とエリーを見つめる。


 何も話さないブレアにエリーは心配になり「どうかされましたか、ブレア様?」と話しかける。どこか変だろうか。やっぱいつものドレスがよかったのか。似合っていないのだろうか。不安になりそんな事がグルグルと頭の中で駆け巡る。


「いや…その………い……ぎて…」

「えっと…?」


 ゴニョゴニョと何かを話しているがよく聞き取れずエリーは聞きかした。


(やっぱりおかしかったんだわ!ああ、今すぐにでも着替えたい!)


 そんな気持ちになり目に涙がにじみ、顔をうつむく。


「……エリーが綺麗すぎて思わず見とれてしまった…」


 驚いて顔をあげるとブレアは頬を赤く染め顔をそらしていた。初めて見るブレアの表情にエリーは目が離せなくなる。


「そんなに見つめられると恥ずかしいな」

「も、申し訳ありません!」

「いや、いいんだ。僕の方こそ不安にさせて申し訳ない。いつもと違うエリーにすぐに綺麗だとか似合っているとか一言でも言えばいいのに言葉が出なくてずっと見てしまったんだ。」


 その言葉に今度はエリーの顔が赤くなる。エリーは恥ずかしさと同時に今にも跳び跳ねそうなくらいに喜んだ。側で聞いていたフロールも「長い期間悩んだかいがあった」と内心喜んだ。他のメイド達も微笑ましく彼らを見ていた。


「次のデートの時にまた着てきてほしいな。いつもの天使のような可愛いエリーと違ってギャップがあって更に魅力的に見えるね。まるで女神が目の前にいるのかと思うくらいに」

「殿下、そろそろその辺に…」

「おや?」


 フロールは褒め続けるブレアを制止した。何故ならエリーの顔は煙が出そうなほど真っ赤になっていた。そんなエリーを見てブレアはクスクスと笑う。


「さ、エリー。お茶会を楽しもう。またいろんな話が聞きたいな」


 我に返ったエリーはその後お茶会を楽しんでいろんな会話が弾んだ。


 ――初めてブレア様のあの表情が見れた。このドレスを来てよかったわ。


 エリーは心からそう思った。

ここまで読んでいただきありがとうございます!

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