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15.パーティーまでの時間

入学式が終わり今は午後6時。もうすぐ生徒会主催のパーティーが開かれる。新入生は中庭に移動するよう伝えられレイト達と共に会場へと向かっている。


人の波に乗って移動している訳だがなかなか進まない。それはレイト達に人が集まっているからだった。先ほどからレイトやテスター、ルイスを求め、主に女子生徒が集まっている。社交にも顔を出しているレイトとテスターは貴族のお嬢様から引っ切り無しに声をかけられその対応に戸惑っている。


う~ん、彼女らの眼差しはやけに熱がこもっているように感じる。ルイスの人気も負けておらずお嬢様がたから名前や趣味、好きな女性のタイプなどアタックが凄い。


ただ驚いた事がもう一つある。それは平民の人たちのアタックも凄まじい事だ。レイトやテスターは公爵子息だ。この学園で身分は関係無いといえど普通なら声をかけることさえ難しい存在。貴族令嬢ならまだしも、平民となるとそこは少し…。


だが、3人とも皆に優しく接している。そういえば、私にもチラホラ男性から声がかかる。けど、すぐ顔を青くして去って行ってしまうのよね。一体何がしたかったのかしら?


すると、一緒によこにいてレイト達の様子を見ていたアンナが口を開いた。


「お嬢様、レイト様達を置いて先に行きましょうか」

「えっ?置いていっていいの?」

「女の子たるものパーティー前に準備もあります。それに公爵様に会う時間を増やしたくありませんか?もう、会場にいらっしゃると報告が入っていますよ。」


お父様が!それは確かに早く会いたい。レイト達は置いて先に行こうかな。でも、お父様がいるって報告を受けたって一体誰から……。でも、そんな事知らなくたっていい。特に気になりはしない。昔から少し雑な性格なのだ。


「アンナ、お父様に会いたいから先に行くわ!レイト達にこの事を伝えたいけれどあの中に入って行くのはなぁ」


あの中とは、レイト達を渦巻く女子生徒の集団だ。突進したところできっと渦から追い出されてしまうのが落ちだろう。


彼女たちがあんなに必死になるのはきっとレイト達が格好良すぎるからだと思う。けどそれ以前に、きっと彼女一人一人が自分に自信があるからあんなに向かっていけるのだとも思う。この国は女子が少ない。女の子が生まれると親が大切に蝶よ花よと何もかも与えるのでわがままな子が育つ。そうなると、何もかも与えられた子供は自分が中心に世界が回っているように感じ、こう、自信がつく。


もちろん、そんな風に育たない子もいる。ただ、多くがそうなってしまうと言うだけ。


「それならお任せ下さい。大丈夫です!伝わりますから。さっ、私達は行きましょう!」

「誰が伝えに行ってくれたの?」

「秘密です」

「そう」


アンナが伝わると言ったならそれを信じるだけだ。それに「秘密」と言われてしまえばその奥は聞けない。そういえばアーサーの姿が無い。入学式までは一緒にいた…………はず。


まぁ、いっかと思い、アンナと手をつないで人混みを進んでいった。











僕は今凄く苛立っている。社交用の笑みを貼り付けながら、言い寄ってくる女を適当に相手しているのだ。


ルーナとクラスが離れ、ルイスとテスターがルーナと同じクラスだという事も腹が立つ上に公爵家の使用人から入ったアンナとルーナが先に行ったと言う情報。ルーナが何故僕達を置いていくのかというと公爵様に会うため。


どうせ、アンナがそそのかしたんだろう。(当たり)くそ、女が邪魔で全く前に進めない。僕はルーナ以外どうでもいいし早く彼女の元へ行きたい。


そう思っているのは僕だけじゃないようで、テスターとルイスもまでが内心イライラしていることに気がついた。ルイスはいつもするりと女に囲まれても逃げるくせに今日はなかなかうまくいかないらしい。だけど女をむげに扱う事も出来ず頬をピクピクさせながら対応している。あれに気がつかない女の方も相当だが。


テスターはきちんと女を相手している。だが、だんだん対応が雑になってきているのでそろそろやばい。


そして僕はといえば貴族の令嬢に多く囲まれている。名前も知らないようなやつが自分の事をこれでもかとアピールしてくる。大声で叫びたい。ルーナ以外どうでもいいと。だがそんな事出来るわけないのがこの場である。


ちょこちょこしか進まないこの道のり。大きな鎖を付けられた気分でパーティー以前に疲れた。


早くルーナの元へ行こう。可愛いその姿を見て癒やされたい。







「お父様!」

「ルーナ!」


人混みを抜けて遂にやってきた中庭。そこでお父様を見つけた。


会場は花に囲まれた場所で大きい。ランプが所々立っていて優しい白で会場を照らしている。用意されているテーブルにはスイーツがこれでもかと並び、給仕をしている人の手には飲み物が運ばれている。


って、あれ?給仕の人じゃなくて先輩だ!生徒会なのかは分からないけど…。


「入学式は大丈夫だったかい?それにレイトとルイスはどうした?いや、それよりルーナは制服姿も似合っているね!可愛いよ!」


お父様は聞きたい事と話したい事が多いようで質問を沢山してくる。でも、制服姿を似合っていると言われ嬉しい。前世ではお父様が褒めてくれるのはテストで満点を取った時だけだったから。


「制服似合ってますか?嬉しいです!」


くるりと回って見せるとお父様が頬を緩くする。


「うん、本当に可愛いね。段々と君のお母様に似てきているよ。」

「お母様ですか?」

「ああ。」


お母様に会ったのはいつが最後だろう。もう記憶から薄れてしまうほど会っていない。今頃、また違う殿方と小作りでもしているのだろう。


「そうだお父様!もうすぐ会えなくなる日が続くでしょう?だから、沢山お父様とお話したいの!」

「そうだね。じゃあ少し端に行こうか。」

「はい!」


お父様に手を引かれパーティー会場の端に移動する。端の方は花の香りがより一層強く心地良い。


段々と空は暗み始め、パーティーの時間に迫っていた。




「新入生の皆様、そしてその親御様。お待たせいたしました。これより生徒会主催の新入生歓迎パーティーを始めさせていただきます!」


突然響いた声の方を向けばステージに人が何人か立っている。今話した人は副会長だという。まだ、レイト達は来ていない。


ステージの上に立つ人物に私は驚いていた。シフリ王子が生徒会メンバーの1人としてステージに立っていたのだ。


急に体が強張るのが分かる。アンナはハッとして私の手を握ってくれる。その温かさに私も手を握り返した。


「ルーナ、安心なさい。王子はお前にしたことを反省していた様子だった。それに謝りたいとも言っていたから。大丈夫。怖くなったら私の所へおいで。だが、もう一度王子にチャンスを与えてやりなさい。」


お父様の通った声が耳元で聞こえる。大丈夫だと宥められているような感じで安心する。それにお父様は私の瞳の事を王子に口止めしてくれているようだ。


心に余裕を持って。大丈夫よ私。


「はい。お父様」


私の言葉を聞いたお父様から大きな手が伸びてくる。優しく頭を撫でられた。


そういえばレイト達遅いわね。大丈夫かしら?もう、大分時間が立っているのに会場に姿を見せない3人を思い出しふと、そう思った。

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