95 リッチィさん、とん汁を作る
連投です。
ということで、アリアさんから一品だけ料理を任せてもらえることになった。
よし、胸焼け回避の為にも頑張らないと。
「沸騰したかなー」
任せてもらったのは鍋料理だ。
作るのは勿論、お肉と野菜たっぷりのとん汁。凄く簡単だからね。
まずは材料となる野菜をチラシのスキルから取り出していく。
ニンジン、ジャガイモ、タマネギ。
全てダンジョンで収穫したお野菜達だ。
ソラやエルダーゾンビさん達のお陰で在庫は沢山ある。タグ機能で入金の保留リストに全て収納済みだ。……ちなみに、チラシにはダンジョン産の野菜は売れなかった。いや、売れはするのだが、入金金額が0円なのだ。どれだけ投入しても0円。
大豊作ともいえるお野菜達にこれからはチラシでお買い物し放題だと喜んでいたのに、あまりにも酷い仕打ちだ。何かしらの制限がついてるのだろうか。
「全部入れてー」
ニンジンとジャガイモとタマネギはまとめて皮を剥き、一口大に切ったら鍋に投入。
そして、あらかじめスープ用としてアリアさんが用意してくれていたゴロゴロのお肉も投入する。
「お次はー」
ぐつぐつと煮込みながら今度は調味料をチラシから取り出す。
醤油、塩、本だし。
此方は前回に購入しストックしていた物。
本だしは傭兵団に捕まってた時の使いかけがまだまだ沢山あるのだ。
「全部入れてー」
目安で適量入れていく。
「後は煮込むだけー」
鍋に蓋をし、時折に味をみて醤油や塩を足せば完成だ。
実にお手軽で簡単な美味しいレシピ。一人暮らしにはピッタリな料理だね。
物凄く適当な、男の料理ともいえるとん汁をぐつぐつと煮込んでいると、
「リッカちゃん? その鍋の具材って……お野菜だよね?」
アリアさんから声を掛けられた。
「どうしてリッカちゃんがお野菜を持ってるの? それに、そんな貴重な食材使っちゃって大丈夫? リッカちゃんお金に困ってたんだよね」
アリアさんがまじまじと煮込まれた鍋を眺めながら問い掛けてくる。その声にはもったいないという事と、貴重な食材への興味津々な姿が含まれているようだった。
「大丈夫ですよ。ほら、沢山ありますので」
そう言って追加のお野菜達を《チラシ》から取り出す。
「んん? リッカちゃん、お野菜もそうなんだけど、今どこからお野菜を取り出したのかな?」
あ、そう言えばアリアさんはチラシのスキルの事を話してなかった。
突然、何処からともなくお野菜を取り出したもんだからアリアさんが驚いている。
「固有スキルの《チラシ》ですよ。ここから取り出してます」
固有スキルを発動させると、目の前に半透明状のチラシが展開され、そこからお野菜を再度取り出しては入れ直したりする。アリアさんが目を白黒とさせて驚いているが、固有スキル――ユニークスキルですよと説明すると納得してくれた。
この世界の固有スキルはユニークスキルでもあるからね。訳が分からない固有スキル持ちは少なからずいるのだ。
冒険者ギルドも私の所持している固有スキルを把握はしていても、その詳しい詳細については分かってない。説明してないからね。知ってるのは物を出し入れするということだけだ。私の《チラシ》スキルを詳しく知るのは、ソラと魔王様と宰相様、後はギルド長にメイドの天使さんだけ。皆には内密にしてもらってる。
「ミラからリッカちゃんの固有スキルは聞いて知ってたんだけど……思ってたより凄いわね」
やはりアリアさんは、ミラさんから私の所持しているスキルを聞いていたみたいだ。個人情報とはなんだろうか。まぁアリアさんなら別にいいんだけど……だが、闇ギルドに流れるのだけは本当に止めてくれ、マジで。
「絵柄があるけど、これは何かしら。物を出し入れするスキルじゃないの?」
チラシを見詰めながらスキルを聞いてくるアリアさん。その手が半透明状のチラシに触れようとするも、スカッと空を切る。チラシは私しか操作出来ないのだ。魔王様やソラも何度か挑戦したことがあるが、触れることすら出来なかったのだ。
ちなみに今日のチラシは前回と変わらぬままの『お菓子のハダダ』。掲載期間が三日あるので明後日までだ。
「このスキルはお買い物のスキルなんです。ほら、こうしてタップすると……」
アリアさんにはスキルの詳細を隠す必要がないので、説明がてらにドラヤキの画面をタップし購入ボタンを押す。するとドラヤキが目の前に現れたので、そのままアリアさんに食べもらう。
「美味しいわ」
その味に驚きながらも簡潔に答えるアリアさん。ドラヤキの優しい甘さが気にいったようで、黙々と静かに食している。
「他にも色々とあるんですが……それは後にしましょうか」
今は晩御飯の仕度の途中なのだ。
ドラヤキを食べ終えたアリアさんが、どことなく他の絵柄が載っているチラシをチラチラと見ていたので、諭すように言うと『……そうね』と残念そうにしながらも分かってくれた。
やはりアリアさんも甘い物には目がないみたいだ。食後のデザートにでも出してあげようかな。なぁに、お金は賞金首の時のがまだ残り50万ゴールドは残ってる。問題ない。……最初は100万ゴールド残ってたのに、ギルド長のピザ代で半分近く消えた。どんだけ食べたんだよギルド長ぉ。
「よかったらアリアさんもお野菜使いますか?」
「いいの?」
「はい、どうぞ遠慮なく」
むしろお願いしたいくらいだ。
私が使うよりもアリアさんの方が美味しく調理できると思うから。
色々な種類のお野菜を手渡すと、何処か納得したとアリアさんが頷いた。
「なるほど、お野菜もリッカちゃんのスキルで出したのね」
「あー、そっちはちょっと違うんです……」
お買い物のスキルと説明したことで、アリアさんが勘違いしてるようなので説明する。
只今、ダンジョンで絶賛お野菜を栽培中であり、商業ギルドマスターともお話し済みで近々に販売予定ですと。
そう説明すると、真顔になったアリアさんから『その話詳しく』と、宿屋にも優先的にお野菜を卸すことになった。言い値で。全部OKだけど。
ということで自分の調理に戻る。
といっても、こっちは味をみて醤油や塩を足すだけだ。その際、アリアさんが調味料の醤油に興味を示したので一本提供した。
醤油の残りがあと一本と少し。
ちょっと後悔しながらも、次回のチラシで載った際にはまとめて購入しておこうと決めた。アリアさんも気にいったようだし。
「にしても……」
ぐつぐつと煮込む鍋の側で、アリアさんが手渡されたお野菜を嬉しそうに調理している。
うん、私が作らずともアリアさんにお野菜渡して全部お願いすれば良かった。
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