87 リッチィさん、悪魔と決闘する
連投です。
「それではリッカ殿とキース殿の決闘を始めますぞ。お互いよろしいですかな?」
宰相様が私とイケメンさんとの間を取り仕切り聞いてくる。
事態が急展開を迎え過ぎて訳が分からない。
目の前では何故か私に剣を突き付けているイケメンさんがいる。
「うむ、ワシはリッカを信じておるのじゃ」
勝手に話が進んでいく。
おい、マジで誰か説明しろ。
面倒くさそうに私に全振りするな魔王様。
「ちょっと待って下さい。何で私がこの人と決闘する事になってるんですか」
本当に誰か説明して下さい。
何で私がイケメンさんと決闘せにゃならんのだ。
「ん? あぁ、キースがリッカを自分の側近に欲しいと言ってな。ワシはやらんといったのじゃが……こやつしつこくてのぅ。なら決闘でリッカに決めてもらった方がはやいと思ったのじゃ」
おいコラ、何で私が自分を掛けて自分で決闘せにゃならんのだ。ますます意味が分からんぞ。
てかお前達、さっきまで王国との和平を結ぶかで重要な話をしてたのに、何でそんなアホな事になってんだ。
「僕はこの剣を使いますが……リッカさんは素手でよろしいですか?」
剣を片手に鬼畜な事を言い出すイケメンさん。素手で剣に挑めと? お前は馬鹿か。てか私はまだ決闘をするとは言ってないんだけど……え、決闘を挑まれたら断れない? 魔族の国の一般常識? そんなん知るか!? どんな常識だよバカ野郎!? こんな酷いご都合主義があるのか!?
そんな漠然とする私を置いてきぼりに話が進んでいくように、宰相様が声を掛ける。
「リッカ殿、準備はよろしいですかな?」
よろしくねぇよ。
だけど断れない。
断ったら私の問答無用で負けであり、私はイケメンさんの側近にならないといけない。
チラリとイケメンさんに視線を向けると、爽やかな笑顔で微笑み返された。
「ヒェ……」
うん、絶対に無理だね。
生理的に受け付けなくて鳥肌がたった。
「――《錬金》」
こうなりゃもうやけだ。
チラシのスキルを発動させ、オリハルコンを取り出し土魔法でコネコネする。
「前にも思うたが、なんじゃあの魔法は……」
遠目で魔王様が呟くのが聞こえる。
「ふむ、どうやらリッカ殿の固有スキル――土魔法らしいですな。あれが土魔法と呼べるのかは些か疑問ですが……」
「いや、おかしいじゃろ。リッカのやつ、無詠唱で発動しておるぞ? てかあれオリハルコンじゃよな。ワシでもあれはムリなんじゃが?」
魔王様と宰相様の声を無視し、オリハルコンの形をタコ足イカ足バージョンに造り変える。
「なん、だ……これは……」
造り終えたオリハルコン――五本の足を高速でブンブンと振り回していると、目の前のイケメンさんの顔が真っ青になっているのに気付く。
「さぁ、やりましょうか」
「いやいやいやいやいやいや、ちょっと待って下さい!?」
準備万端ですと宰相様に合図を送るも、焦りまくるイケメンさんに止められた。
流石のイケメンさんも今の私には分が悪いと思ったのか、めちゃくちゃ動揺してる。
この形態は今考えられる私の中で最強バージョンなのだ。数百のモンスターの襲撃から私を守りぬいた実績は伊達じゃない。
魔法使いの魔女さんの方々からも『これ絶対おかしいわ!!』と絶賛されたくらいだ。
「今なら決闘を止めても別に私は構いません。無駄な争いはしたくはありませんから」
イケメンさんは生理的に嫌いだが、私も鬼ではないので優しく諭すように言った。
ぶっちゃけ決闘とか興味がないので止めてほしい。はやくお家に帰りたいです。
「……やはり貴女は素晴らしい。それだけの力を持ちながらも此方を敬う心もお持ちだとは……いい、凄く良いです。ますます欲しくなりました」
「ヒェ……」
キモい、キモすぎる。
なんだこいつ、マジで気持ち悪いんですが!?
全身に凄まじい嫌悪感が走ったよ。
すると唐突にイケメンさんの眼が赤く光り出し、私を貫くような視線がぶつかる。
「……やはり貴女には効果が無いみたいですね。リッチという特性からなのか、僕の《魅了》スキルが完全に効かないのは魔王様以来ですよ」
どうやら《魅了》スキルを使われたらしい。
私の中のイケメンさんへの嫌悪感が更に増していく。
「リッカさん、子供は何人欲しいですか?」
「殺すぞ」
天元突破した。
もうヤっちゃってもいいだろうか。決闘だしいいよね? 魔王様が遠目で『ワシは構わんぞ、むしろヤれ』と言ってる。
「やれやれ、本当はこの姿では戦いたくなかったのですが……仕方ありませんね」
魔王様と視線を交わしていると、イケメンさんがやれやれと言い出した。
「全力でいかせてもらいます。この姿を地上で見せるのは貴女が初めてです――よっ!!」
ぶわっと黒い魔力がイケメンさんから放たれ、この部屋中を多い尽くすように溢れ出す。
凄まじい圧力の魔力がイケメンさんに集まるのが分かる。
ヤバい、これは下手したらヤバいかもしれない。
めきめきとイケメンさんの頭から角が生えだし、背中からは蝙蝠に似た翼が飛び出す。
そして何故か上半身の服が弾け飛び、半裸のイケメンさんがイヤらしいいオーラを垂れ流しながら佇んでいた。
「さぁ、始めましょうか」
「いやいやちょっと待って下さい」
見ただけで分かる。
無理、こんなん無理ですわ。
ただの外交官じゃなかったの!?
「言い忘れておったが、キースは魔王軍幹部の一人じゃぞ」
なん……だと……
もっと早く言って下さい、魔王様。
「それでは決闘を開始しますぞ」
無慈悲にも決闘の合図を出す宰相様。
ちょっと待って下さい!!
「出し惜しみはしません。初めから全力で貴女を倒させてもらいます!!」
油断はしないと初手から全力で黒い魔力を剣に纏わせ始めるイケメンさん。
ガチだ、こいつガチで倒しに来てる!?
「いきますよ!!」
「――ちょっ!?」
言葉を発する間もなく、大きな翼を羽ばたかせ一瞬で肉薄する。
こうなりゃ本当にやけくそだ!!
迫り来るイケメンさんに対し、同時にタコ足イカ足をぶつける。
「――ふっ!!」
うげっ、全部弾かれた。
一瞬で五本も弾くとかどんだけだよ。
「終わりです!!」
目の前にイケメンさんの剣が迫る。
打つ手がない。
この姿のイケメンさんに奥の手、《クリエイトアンデッド》でただのゾンビをぶつけても無駄だろう。
もう駄目だ、詰んだ。
このままでは本当にイケメンさんの側近にされ――いや、ご飯にされるかもしれない。
「チクショウ」
そんな未来は絶対にごめんだ!!
タコ足イカ足を瞬時にインゴットに変形させ手元に戻す。そして即座に私の周辺にオリハルコンを薄く広く伸ばし、箱状に形を形成させイガイガを内側を量産する。
やりたくはなかったけど、マンティコア戦以来の私の最終奥義である自爆技――アイアンメイデンを喰らわせてやろうではないか。
わはははははは、私もろとも串刺しになーれー
「……あ」
その時だった。
アイアンメイデンを発動させる瞬間に、私は見てしまった。
勝ちを確信し剣を振り下ろすイケメンさんの姿――ではなく、その背後に潜む銀色の物影、魔王軍幹部一のサイコパスと呼ばれる存在が、破顔しイケメンさんの背後に張り付きナイフを振り下ろしている姿を――
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