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リッチ(金持ち)を願ったらリッチ(アンデッド)にされたんだが?  作者: キヒロ


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85/120

85 リッチィさん、悪魔を紹介される

連続投稿です。

 

 天使さんと別れた私は、再び魔王城内を歩き回っていた。


「ソラが帰って来ないんですけど……」


 あれから結構暫く時間が経つのだが、ソラが一向に研究所から帰って来ない。

 いい加減、自分の (ダンジョン) が気掛かりなので早く帰りたくてソラを探しているのだが、


「何処にいるのでしょうか」


 研究所にいる事は分かってる。

 ソラ自身が研究所に用事があると言ってたのだから、そこにいると言う事は分かってるのだ。しかし、


「誰も分からないってなんですか」


 魔王城内で働く人達、メイドさんや文官さん、兵士さん達にソラの研究所の場所を聞いたのだが、誰もがその詳しい場所を知らないと言う。

 唯一分かっている事は、魔王城の奥深く――封印され隔離された決して近寄ってはならない場所だと言う事。


 正直、話を聞いた限り絶対に近寄りたくない場所である。

 しかし、尚更そんな話を聞けば、絶対に迎えに行かなければならないと思う。

 あの娘、そんな場所に行って研究所から何を持ち出すのか分かったもんじゃない。これ以上の厄介事を (ダンジョン) に持ち込むのは本当に勘弁願いたい。


 そうこうしながらも魔王城を彷徨いていると、目の前には魔王様の執務室がある。


「仕方ないですね。宰相様に聞いてみましょう」


 ソラのお爺ちゃんでもある、魔王城のNo.2の権力者、宰相様ならば研究所の場所を知っているだろう。

 出来れば今はここに、魔王様が泣きついて来そうで近寄りたくなかったのだが……まぁ仕方ないので諦めよう。執務は手伝わないけども。


「……ん?」


 執務室の扉に手を掛けると、何やら扉の向こう側から怒鳴り声――聞き慣れない声が聞こえて来た。一瞬、面倒事ならぬ取り込み中だろうかと思ってその場を後にしょうかとしたのだが、『そこにおるのはリッカかや? 丁度いい、はよう入るのじゃ』――魔王様に気付かれてしまった。


 絶対に面倒事だと思いながらも、仕方なしと執務室の扉を開けるとそこには、


「成る程、貴女が魔王様の新しい秘書官ですか」


 茶髪のイケメンが佇んでいた。


「聞いていたよりも幼い……いえ、美しい女性の方のようですね」


 にこりと此方を見据えて笑うイケメンさん。

 宜しくお願いしますと、爽やかな笑顔で私に握手をと手を伸ばしてくるのだが……何だろう、この嫌悪感は。生理的に何故かこの人が受け付けない。


「よ、よろしくお願いします」

「此方こそ、魔王城でこれから一緒に働く仲間同士、仲良くやっていきましょう」


 嫌々ながらも握手を交わし、何とか笑顔で言葉を返す。若干、イケメンさんが苦笑いな気がするが、それは私の隠しきれない感情がモロに伝わってるからだろう。触るなイケメン野郎。


 横目でチラリと魔王様に、『この人だ~れ?』と目を見やると、凄く面倒くさそうに答えた。


「リッカ、お主にも紹介しとくのじゃ。こやつは魔王城の外交官、インキュバスのキールじゃ」

「ご紹介にあずかりまして、僕は淫魔族のキールと言います。主に外交を担当させて頂いています」


 淫魔族。

 確か性的な事をご飯とする下級悪魔だった筈。

 地獄にいたときに、魔界から訪れた使者の一人、イケメンの悪魔が私に『お前が我輩のご飯か?』と聞いてきた下半身野郎と同じ種族……ぶっちゃけ、私がとても嫌いな悪魔の種だ。


 成る程、私のこの嫌悪感の正体が分かった。

 どうりで生理的に受け付けない筈である。

 こいつらが地獄で夜中に、私に夜這いを仕掛けてきたのは忘れられないトラウマの一つだ。勿論、返り討ちにしたけど、それでも本当に怖かった。元は男とはいえ、寝室で男に襲われるとか勘弁してほしい。なに考えてんだこの下半身悪魔。イケメンなら許されるとか思うなよ。


 一応は外交問題ではないかと抗議したのだが、『我輩はご飯を食べに来ただけだ』と強情に一点張りの下級悪魔に、『なら好きなだけお食べ』と女ゾンビをご馳走して許してあげたのは私の優しさだ。後々に、閻魔大王様が苦労していたけど……私は悪くない。全て下半身で考える淫魔が悪い。魔界のサタン様もめっちゃ笑って許してくれた。


 静かにそっと距離を取り出す私に、淫魔のイケメンさんは『あれ?』とした顔をしている。


「言っておきますが、私はご飯ではありませんよ」

「酷い誤解だ!? 僕はそんな見境なく人を食べませんよ!!」

「そうですか。ちなみに、もし夜這いを仕掛けてきたら問答無用でゾンビをご馳走しますから覚悟しておいて下さいね」

「だから僕はそんな事はしません! 確かに貴女は凄く僕好みの女性ですが……ってあれ、ゾンビをご馳走? 何処かでこの話を聞いたような覚えが……」


 淫魔のイケメンさんの言葉に更に距離を取る。

 こいつ、否定しながらもサラッと『凄く僕好み』とか言いやがりましたよ。

 私は絶対に淫魔の男の悪魔の言葉は信用しない。

 だってこいつら基本、下半身で考える悪魔なのだから。なんでこいつら淫魔が外交や使者を任されるのか本当に不思議でならない………顔かな?


 私の忠告の言葉に、淫魔のイケメンさんは何か引っ掛かるのか『……先輩?』と呟いて考え込んでいる。


 もしかしなくてもあの下半身悪魔の後輩なのかな? えんがちよー! 私はこいつに絶対近寄らないからな!


「まぁ後で先輩に確認して聞いてみましょう」


 聞かないで下さい馬鹿野郎。

 あの下半身悪魔に私の居場所がバレるじゃないか。

 あれから『我輩、目覚めた』と、責任を取れとか言われて迫る奴を魔界に強制送還するのは大変だったんだからな。


「魔王様は実に素敵な人を側近にしましたね」

「うむ、ワシがじかに選んだ者じゃ。信用できる優秀な面白い人材じゃな」


 その後に『ちと常識知らずのアホぅじゃがな』と、余計な一言を付ける魔王様。

 イケメンさんも納得したと頷いているが……私、隠してるけど元勇者だからね? そんなに信用されても困るんだけど。

 それでもいいのかなぁと宰相様に確認すると、『よろしいですぞ』と頷いている。知ってた。


「それならば丁度いいですね。ここは魔王様の側近の秘書官でもあるリッカさんにも意見を聞いてみましょう」


 突然、私に話を振ってくるイケメンさん。


「意見ですか?」


 何だか面倒くさそうな予感がする。

 もしかしなくても、先程に扉の外で聞いた怒鳴り声の事なのか。

 イケメンさんは魔王様に『よろしいですか?』と確認を取ると、私に問うて来た。


「人間族、王国との和平交渉についてです」


読んでくれてありがとうございます!

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