84 リッチィさん、天使さんに話す
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「そうだったのですか、本当に苦労されたのですね」
天使さんに私の苦労話を話すと、『やはりあの王国は根絶やしにしないといけませんね』と、怒気を込めて呟きを漏らしている天使さん。本当に王国は何をやらかしたのだろうか。物凄い怒りを感じる。私も怒ってるけど、天使さんの怒りには程遠いと思う。
あれから天使さんに色々とバレていた事が発覚した私は、これまでの事を話していた。勇者召喚しかり、魔族領での出来事を色々と。ていうか、天使さんは閻魔大王様の存在も知っていたのだ。
「それがリッカ様の固有スキルですか」
「はい、閻魔大王様から貰ったチラシのスキルです」
チラシのスキルを発動させ、天使さんに見えるように展開し説明する。天使さんは『なるほど』と言いながらチラシに指を伸ばすも、それは空を切った。やはり天使さんでもチラシには触れないみたいだ。
「流石は地獄の閻魔大王と言った所でしょうか」
若干、チラシの購入ボタンが押せなかった事に悔しそうにしながらも天使さんが納得している。
「リッカ様は物凄い スキル を頂きましたね。こんなスキル、私は初めて目にしました」
「そうなんですか?」
天使さんの言葉に少し驚く。
チラシは確かに便利だけど、天使さんが驚く程の物なのだろうか。
前回魔王様から教えて貰った固有スキルや、ミラさんの固有スキル、『精神干渉系魔法』の方が凄いスキルだと思う。
強いて言えば、ネットスーパーやネット通販のスキルが欲しかったと思うこの頃です。
私が不思議そうに頭を傾げていると、天使さんが説明をしてくれた。
「リッカ様が頂いたチラシのスキルは、異世界に直接干渉して物を直接取り出す事が出来ます。これは本来ならばあり得ない事なのですよ?」
そうなのだろうか。
勇者召喚とかもあるんだし、そんなに特別凄い事のようには思えなかった。
「リッカ様、勇者召喚には莫大なまでの魔力やお金、召喚魔法陣の触媒に使う希少な鉱石や宝石等、様々な工程までの代償があります。それらを消費してやっと取り出せる――召喚出来るのが異世界の人間一人だけなのです」
これは別に人間じゃなくてもよく、異世界の小石一つ召喚するのも同じ代償が必要だそうだ。要は物量とかではなく、個数や次元の壁を超える干渉の問題だとかよく分からない話しを長々と説明していく天使さん。ごめんなさい、後半からよく分からないです。
「成る程、何となく分かりました」
「何となく、ですか……」
「このお菓子一つが勇者と同じと言うことですよね」
「……そうですね。間違ってはおりません」
疲れた顔をした天使さんは不思議そうに私を見詰め出した。
「リッカ様はご自分の事を何も知らないのですね……」
「そうなのでしょうか。これでも一応、最近はこの体のスペックは分かってきたつもりだったのですが」
魔力特化の貧弱ボディとか、スレンダー美少女とか、嘘がつけない顔だとか、芳ばしい匂いがするとか。
その事に天使さんは『違います、肉体ではなく立場の問題です』と話してくれた。
「閻魔大王は地獄の十王に数えられる程の存在。それは私達天使からしても、かなりの高位の存在なのです。そして、その 力 を与えられたリッカ様も恐らくは、直属の閻魔大王の眷属と言わなくても、何らかの系譜に属するものなのでしょう」
それからも天使さんは色々と話してくれるが、難しい専門用語が混じっていてよく分からない。だけど一つ疑問、というか間違っている部分があるので訂正を兼ねて口を挟んでみた。
「あの、すみません。一応は私、閻魔大王様直属の眷属で秘書官を勤めているんですけど」
「……はい? 直属の、眷属? 秘書官?」
「更に言えば、どうも私は閻魔大王様の娘らしいです」
「……娘?」
「はい、一応はそうなってるみたいです」
「…………」
私の訂正に天使さんがピシリと固まった。
それから暫く、唖然呆然とした天使さんは恐る恐ると頭を撫でて何かを確認すると、次に胸に手を当てて『な、なるほど』と、一人冷や汗を流しながら納得している。
「リッカ様」
「はい、何でしょうか」
何やら復活した天使さんは、見惚れるくらいの笑顔でこう言った。
「人類撲滅に興味はありませんか?」
それはちょっと、遠慮します。
「すみません。一応は私も色々と忙しいので、先程もオガちゃんと宰相様からお仕事をお願いされたので……」
「リッカ様なら割と本気でいけそうなのですが……仕方ありませんね」
ぐいぐいと迫る天使さんに何とか御断りする事が出来た。私なら割と本気でと言ってる天使さんが笑えない。私もレベルさえ上げれば、もう一つの固有スキル、クリエイトアンデッドで産み出したゾンビ達の大群で物量攻めで押しきれそうだと思っているからだ。流石は伝説のスキルにカテゴリーされてるだけはある。無限にゾンビを世界に放てそうだ。やらないけどね。
「それはそうと、リッカ様は経理課のオガ様と仲がよろしいのですね。あの方をオガちゃんと呼ぶのは魔王様くらいだと思ってましたが……」
話は変わって、天使さんがオガちゃんの事について聞いてきた。
天使さんの顔に若干曇りが見えるのは、やはりオガちゃんがオークという種族と言うのもあるのだろうが、一番は見た目だ。
「恐ろしくはないのでしょうか?」
「? 見た目は凄い怖いですが、中身は凄く良い人ですよ」
確かに見た目は怖いが、実際は超紳士なのだ。
私が軍部に振り回され困ってた時もさりげなく手伝ってくれたり、経理課に入り浸って男連中と仕事している時も心配したオガちゃんが、『こんな所に入り浸ってはいけません』と注意してくるのだ。
「そうですか、リッカ様も魔王様と同じ事を言われるのですね」
「魔王様も同じ事を言ったのですか?」
「はい、オガ様は中身は凄く優しい人物で、頼れる人だと仰ってました」
天使さんも一応は頭では理解しているが、何故か種族的に拒絶反応が出てしまうとか生理的に受け付けないとか……中々に酷い理由だった。超紳士なのに。
ちなみに経理課のみならず、魔王城で働く文官さんは何故か種族がゴブリンとオークに片寄っている。
何でも魔物から魔族に進化する途中で、頭が良くなる個体がかなり多いのだとか。
そう言えばと、私の知り合いのゴブリンさん――ゴブブブさんも魔物から魔族に進化したとかそんな事を言ってた覚えがあるのを思い出した私は、オガちゃんにどうやって進化したのか聞いたのだが、『女の子がそんな事を言ってはいけません』とはぐらかされたのだ。
まぁ他の職員さんが教えてくれたんだけど……進化とはある一定の条件を満たすと魔物から自我のある魔族へと進化する事らしい。
種族によって異なるが、オークとゴブリンは最も特殊で同じ条件らしく、その内容が『片方、又は全ての生殖器官を破壊する事』、だそうだ。中々に酷い進化条件である。片方潰しの片玉残り……想像したくない。私にはもう片方も何も残ってないが、股がヒュンとした。
ちなみにオガちゃん、種族はオークでも実はオークの上位種に当たるオークキングなのだそうだ。実力は勿論、体格も普通のオークよりも一回り大きく、威圧感もそれなりに凄い。過去にはオークキングの魔王も在籍していた事もあり、実力は魔族の中でもトップクラスの折り紙つきだ。
そんなオガちゃんを進化させたのは誰でもなく、魔王様だ。今代のあの魔王様なのだ。
私は最初、色々と情操教育的にも大丈夫なのかと思ったが、当時魔物で性欲の限り暴れるオガちゃんを討伐する為に出向いた魔王様がオガちゃんと戦い、偶然にも進化を果たしたらしい。当時オガちゃんを知る職員さん曰く、色々とスッキリして魔王様に忠誠を誓い、今の超紳士に至るとか。
要はオークとゴブリンは魔族になる為には性欲が強すぎる為、自我が保てないので玉を無くすか半分にする必要があると。そして、自我を取り戻したオークとゴブリンは頭脳が飛躍的に高くなる。
これはあれだな。
絶対に神様、オークとゴブリンのスペック間違えて造り出して、『やっべ、ゴブリンとオーク、ハイスペックすぎた。……ま、代わりに精力MAXでトントンかな。豚だけに』てやつだな。
天使さんに試しにどうなんですかと訪ねたら顔を『プイッ』と反らされた。おい、マジかよ。
それからは天使さんと色々と時間を潰しながら散歩をし、一応は駄目元で『文官とか興味ありませんか?』と聞いてみたのだが、やはり断られた。絵面的に無理だそうだ。そうだよね、怖いよねー。そして天使さん曰く、私がそこに入り浸って仕事するのが奇妙な光景だと。
更にオガちゃんと二人並び仕事する私は、絵面的に超ヤバいらしい。
読んでくれてありがとうございます。
今日から数話ずつの連投で一気に更新していく予定です!




