77 リッチィさん、お家に帰れない……
新年明けましておめでとうございます!
お 家に、帰れません!
「帰りたい……」
何故か魔王様の執務室でお仕事をする私。
隣では宰相様が凄く良い笑顔で『貴女がいると凄く仕事が捗ります』と、一緒に執務に励んでいる。評価されるのは嬉しいけど、嬉しくない。働きたくないでござる。
ちなみに、ギルド長は昨夜ディナーをたらふく食べて帰りました。
あれからなし崩し的に、私の秘書官としての新しい人生がスタートとした。
《秘書官》のスキルではなく、秘書官としての本物の立場とした役職で、である。
宰相様から『これで貴女も魔王軍の幹部の一人ですね』との大変有り難くないお言葉を頂戴した。
やっすい幹部ですね、それでいいのか魔王軍と聞いたら人手不足なので問題ないと言われた。
そもそも文官や役人が人手不足ならば、応募すればいいではないかと宰相様に意見したのだが……どうにも魔族には脳筋しかおらず、軍人に適正がある兵士は沢山いるが、文官や官僚といった適正がある職員は極僅かで、その極僅かも商業ギルド等に引き抜かれていてまるで手が足りないそうだ。
そしてそれに加えて、魔王様の人嫌いということもあり、人格や性格、相性まで審査すると誰も通過するものがいないとか。
魔王様ェ……。
どんだけ人嫌いなんですか。
私は元から能力、人格、性格は調査済みであり、相性は魔王様自身が私を推薦したとあってオールパーフェクトで通過したらしい。
何気にパーフェクトでの通過は、魔王様が魔王に即位して二人目の快挙だとか……どんだけ狭き門なんですか。
てか、身元調査なら私は《勇者》なんですが……あ、はい、そうですね。私は《元勇者》でした。更にアンデッドなので問題はないと。
「私、いい文官になりそうな人を知ってますよ」
「ほぅ、それは凄く興味がありますな。お教え頂いてもよろしいでしょうか、有能な人材ならば是非とも来ていただきたいですぞ」
宰相様が執務の手を止めて聞いてくる。
どうやら一息休憩を挟むようだ。
「ミラさんです。冒険者ギルドで受付をしてい――」
「ささ、休憩はこれまでにして、執務を始めましょう」
さっさと執務を片付けましょうと話を反らす宰相様。
うん、知ってた。
宰相様がミラさんを異常に警戒、苦手にしていることを。懐には欠かさず緑色のポーション、状態異常回復ポーションを持ち歩いていることを。
過去にミラさんは宰相様と何か因縁があったのだろうか。
これは気になって、魔王城の書庫で過去の出来事を色々とあさって分かったのだが、ミラさんは昔、魔王城で働いていた経歴があったみたいだ。そう、経歴だけが残っている。魔王城で働く誰もがミラさんが働いていた事実と内容を覚えていない。ホラーかな?
私も最近まで何故か忘れていたが、ミラさんは精神系統魔法のエキスパート――固有スキルに精神系統魔法を持つ、ユニークスキル持ち者であるのだ。
その気になればひと一人の記憶など楽に消せる存在。
その固有スキル持ちの数は人間と魔族全員を含めてもただ一人の極めて超レアの存在であり、それの下位のスキルを持つ存在として、アンデッドモンスターの『スペクター』があげられる。
ちなみにこれ、一匹で都市が壊滅するほどの超危険モンスターであり、私のダンジョンにも数匹ほど確認されている。最近はダンジョンで見ないけど……何処にイッタノカナー。
それにしても、ミラさんは本当に一体何者なのか。
よくよく思い出してみれば、ちょくちょくミラさんが『何でリッカさんには効きが悪いんでしょうか?』と呟いてたのを思い出した。
私も後で宰相様からポーションを分けてもらおう。
「あの、宰相様」
「なんですかな、リッカ殿」
一息休憩を入れ事なく執務を続けていると、ある書類で私の手が止まった。モンスター襲撃による外壁の補修工事の決算書。
「これ、予算で通された金額と一致してませんね。いえ、書面では予算と同じ金額で記されているのですが、その工程に掛かる費用と人件費、あと日程作業が間違ってますし、全体の内容があやふやで経理から苦情が来てます」
「ふむ、なるほど。ではそちらの修正はお願いしてもよろしいですかな?」
「大丈夫です。既に修正済みです。後で経理に回しておきますね」
「そうですか、ありがとうございます。……本当にこれは良い拾い者でしたな。予想以上に執務が捗りますぞ」
流石は《秘書官》スキル持ちだと誉めてくれる宰相様。嬉しいけど、嬉しくないです。
ちなみに《秘書官》というスキルなのだが、このスキル持ちは過酷な労働に耐えた優秀な文官にのみ希に与えられる中々にレアなスキルだったらしい。
そのスキルは《秘書官》スキルを発動させた時のみ付与される効果――
『思考加速(大)up』『集中力(大)up』『暗算(大)up』『速記(大)up』『速読(大)up』『言語理解(大)up』『睡眠耐性(大)up』『疲労耐性(大)up』『病気耐性(大)up』『精神耐性(大)up』『毒耐性(大)up』『ストレス耐性(大)up』
と、中々にぶっ壊れたふざけた効果だった。
どうりで宰相様が強引にでも引き抜くわけだ。アホみたいなスキルだ。
言語理解(大)upのせいで、文字が読めません書けませんの言い訳が使用不能になった。
とは言っても、スキルを使わないと文字が読めない書けないのは変わらずなので、後々に勉強が必要であると宰相様が私の為に空いた時間に文字を教えてくれることに……。ありがたいけど、何故か素直に喜べない。
このスキル、実は魔王城でも同じスキル持ちは私を含め二人しか在籍していないらしく、経理課の責任者でもあるオーク種族のオガという名前の魔族が所持している。
ちなみに私は職務上、よく書類を届けたりするので面識はあるし、オガちゃんと呼んで仲良くさせてもらっている。
私と二人の時は絵面的に凄くヤバい。
まさに美少女と野獣ならぬ、くっ殺である。
実際はめちゃくちゃ紳士ですけど。
出会った魔族では一番の紳士かもしれない。
いったいオークとはなんなのか。深く考えさせられましたね。
ついでにいえば、オガちゃんは私と同じで、二人しかいない魔王様から直接推薦を頂いたオールパーフェクトで審査を通過した一人目の魔王城の職員でもある、私の先輩だ。
「というか、魔王様は何処に行ったのですか!?」
ついに堪えきれず叫んでしまった。
ここは魔王様の執務室、なのに肝心の魔王様は朝から姿を眩ましているのは何でなのか。
「逃げられましたな」
宰相様が苦い顔で笑っている。
もはや諦めの境地だ。
「あのロリっ子魔王……ッ!?」
宰相様もいつもならば執務の職務上、魔王印を持つ魔王様を探しに行かなければならないのだが、今は秘書官としての私がいるから問題ないと執務を続行している。
――そう、私は《秘書官》なのだ。
宰相様の秘書官ではなく、魔王様直属の秘書官なのである。
しかもあのロリ魔王様は、魔王の証でもある魔王印を私に一方的に預けて逃亡しやがったのだ。
宰相様からは『私に継ぐNo.3の権力者ですな』と、なんともやっすいNo.3の権力を頂いた。
それで本当にいいのか魔王軍。
私は元勇者だぞ。
適当過ぎるだろ!!
あと、絶対に後で魔王様泣かす。
読んでくれてありがとうございます。
話数が丁度、77話目でビックリしました。
ラッキーセブンのダブルです。
なにか良いことがあればいいんですがね。
2022年もまた宜しくお願い致します。
皆さん良いお年を!!




