72 リッチィさん、またまた魔王城へと移動中
「か~え~り~たい~か~え~り~たい~お~う~ち~へ~」
現在、馬車に乗って魔王城へと移動中です。
あの後、『私も魔王様に会いたいです!』と語るミラさんを冒険者ギルドに残し、私とギルド長は二人で魔王城へと向かうことになった。
それにしても、ギルド長がわざわざ私の横に座り込み――逃がさないように――進んで、もう30分くらいは馬車で走り続けている。前にも思ったけど、どんだけ遠いんですか魔王城までの道程。
しかも魔王城は天空に浮かんでいるので、魔王城の真下に辿り着いてもそこから転移の魔法陣で移動しないといけない。
これはもう面倒くさいので帰ってもいいのでは? そうですよねとギルド長に確認をすると、
「いいわけないだろ、馬鹿たれ」
「あぐっ」
軽く頭にチョップされた。
「いい加減、諦めろ」
「やだぁ……」
だって本当に行きたくないのだもん。
どうせ呼ばれた理由なんて予想はつく。
昨夜の闇ギルド襲撃への件だろう。
あれは私は悪くない。
だって襲撃される前に襲撃しただけだから。
傭兵団はついでで襲撃した。
あれ、でも何でこんなに早くバレたんだ?
闇ギルドと傭兵団に襲撃を掛けたのは数時間前の事だし。それに私とソラは間違いなく殲滅した、一人も逃がしたりなどしてはいないはずだけど……もしかして、
「ギルド長、喋りました?」
「いきなり何を言ってるんだ、お前は」
面倒くさそうに私を見るギルド長。
「あの子達のことです。エルダーゾンビさん達のことを喋っちゃいましたか?」
それはモンスター襲撃事件のことであり、私がダンジョンからこっそりと予備戦力として、エルダーゾンビさん達を外に出していた時のこと。
「あー、どうだったかな。知らん、忘れた」
「ギルド長ぉ……」
約束したのに。
内緒だって言ったのに。
ご飯ご馳走するって約束したのに。
「安心しろ。忘れてたってことは、私は誰にも話してない。というか面倒くさいから話さん」
なんだろう。
言ってることは凄いめちゃくちゃなのに、妙に説得力がある。これがギルド長かぁ。尊敬はするけど憧れません。
「という訳だ」
「はい?」
ガシッと唐突にギルド長が私を拘束する。
嫌な予感がする。
「ご馳走はどうした」
「……あ」
マズイ。
自分から墓穴を掘ったかもしれない。
アンデッドだけに。
「私は半年も待った」
「あ、ちょっと、ちょっと待って下さい」
ギルド長の顔がだんだんと私に近付いていく。
「ぎ、ギルド長」
「なんだ」
ゆっくりとギルド長の口が開き、私の答えを待っている。
「今度、美味しい物をご馳走しますね」
「お前、絶対に私のことをチョロいとか思ってるだろ」
違うんですか?
と思っていたら、首筋に噛みつかれた!
「ああああああ!! い、痛い、痛いですギルド長ぉおお!! 私はまだ何も言ってませんよぉおおお!!」
「いい加減、お前は顔に出ることを学習しろ――がぶりっ」
「あんぎゃああああああ!! チクショウがぁああああああ!!」
◇◇◇
「うぅぅ、痛いよぉ……」
マジで痛かった。
今回ばかりは本当に食べられるかと思った。
馬車の中だし、密室だし、止める人はいないし、ギルド長は結構怒ってたし。
「旨いな、これ」
そんなギルド長は美味しそうにピザを食べている。
「これは何ていう食べ物だ。アホみたいに旨いぞ」
「それはエビマヨピザですね。というか私のも一枚残して置いてくださいよ」
「すまん、もうない」
「チクショウ」
密室の中、馬車の中で漂うピザの香りにお腹が鳴る。久しぶりの暴力的なまでのジャンクフードに、私は我慢が出来ないでいた。
ギルド長の前で気にすることなく《チラシ》のスキルを展開し、テイクアウト用のピザメニューを選んでいく。
「今度のは何だ」
「チキテリですね」
「よし、寄越せ」
「待って下さい、その前に私の分を取り分けるので――はい、残りはどうぞ」
「うむ。ヤバいな、マジで旨いなこれ」
「確かに、これは暴力的な美味しさですね」
新たに購入したチキテリMサイズを丸ごとギルド長に渡す。私のは一枚だけで十分なので、それだけは確保した。
「お前はこんな便利な固有スキルを持っていたのか」
「言っときますけど、バレると面倒なことになりかねないで絶対に秘密ですよ」
私はもうスキルを隠すことなく、ギルド長に全てを話した。だって、そうしないと本当に食べられるかと思ったから。今回は本当にヤバかったんです。
もしも今日の日替わりチラシが【ドレミピザ】でなければ、私が食われていたかもしれない。
「分かった。私もこれが食べられなくなるのは辛い。安心しろ、死んでも話さん。だからお代わりを寄越せ」
「はいはい、分かりました。ですけど、ピザは値段が高いので程ほどにしてくださいね。あ、それともギルド長がお金を入金してくれますか?」
「そうか、やはり旨い物は高いのだな。了解だ。ちなみに金はない」
「まぁ、ギルド長がお金が無いのは最初から知ってましたけど……はい、今度はシーフードトマトピザですね」
「うむ、それならばいい」
何がそれならばいいのか、私には分かりません。先程からガンガン残金が減っていく。
一応、賞金首の時のお金がまだ残り100万ゴールド近くあるから別にいいのだけど、そろそろ止めにしてほしい。魔王城のディナーが入らなくなりますよ? え、それは別バラだから関係ない? そうですか、そうなんですね。
「これが一番旨いな。このシーフードトマトとかいうやつが。魚介類が入ってるのが妙に合う」
「あ、それ私も分かります。私もシーフード系のピザが一番好きなんですよね」
どうやらお気に入りのピザがギルド長と一緒のようだ。意外とギルド長も魚介類の食べ物が好みらしいし、もしかしたら私と好き食べ物が被るのかもしれない。
ギルド長が美味しそうにピザを食べているのを見て、私もシーフードトマトピザをパクりと食べる。うーん、美味しい。あ、手がチーズやトマトでべとべとだ。何か拭くものは……無いか、舐めとけばいいよね。ギルド長と一緒ならマナーとか別に気にしないし。
「…………」
「ん? どうしたんですか、ギルド長」
なんだ?
私の手をジット見てる。
「じゅるり」
「そんな顔をしてもあげませんよ? ピザを食べて下さい。ピザならいくらでも出すので私は勘弁して下さい。私はトッピングしても美味しくありませんよ」
そんなこんなで、何とか危機を脱しながら私とギルド長は馬車に揺られながらピザを堪能し、魔王城まで進んでいった。
ちなみに私が呼ばれた理由だが、何でも兵士さん達が詰める屯所から魔王城へと急ぎの通報があったらしい。
私は納得した。
そう言えば、大量の賞金首の換金の為に訪れた場所は、私が一度お世話になった牢獄でもある兵士さん達の屯所だったなと。そりゃバレるわな。あはははははは………はぁ……。
読んでくれてありがとうございます!
すみません、ちょっとガチでリアルが忙しくなってきたので、1週間ほどお休みさせて頂きます。
あ、ちなみに時々とひっそり更新していた小説が完結しました。
もし暇だったらどうぞ。
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