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リッチ(金持ち)を願ったらリッチ(アンデッド)にされたんだが?  作者: キヒロ


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73 リッチィさん、半年ぶりの魔王城へ


 馬車に運ばれること長い時間。

 ピザを食べ終えても未だに辿り着かない魔王城に私は暇をもて余していた。本当に遠いですね、魔王城。ガタガタと揺れる馬車にお尻が悲鳴をあげそうです。


「ギルド長、まだ魔王城にはつかないんですか?」

「後もう少しだ、我慢しろ」


 もう慣れたとしたギルド長が面倒くさそうに答える。

 そう言えば、ギルド長は魔王城に自由に出入りできる資格を持つ、数少ない人物の一人なんでしたよね。流石に何度もこの道程を通っていれば慣れますか。


 色々と現実逃避しながら馬車の外を眺めていると、見覚えのある不可解な光景が目に入ってきた。 


「あ、ラブホだ」


 乱立するように建つお城、サキュバス達のお家が見えてくる。


 なるほど。

 それなら魔王城まで後もう少しですね。

 前回連れてこられた時も、サキュバス達のお家が見えて来たところで魔王城の真下に辿りついた記憶がある。


「そろそろ真下につくぞ」

「はい、分かりました」


 やはり私の記憶通りみたいだ。

 ギルド長が降りる準備をしろと私に声を掛けてきた。

 それにしてもしかし、魔王城の真下近くにサキュバス達のお家があるのってどうなんだろうか。

 魔王様はあの幼女なわけだし、色々と大丈夫なのか。情操教育的にも。


 それから数分後、私達が乗る馬車が魔王城の真下へと辿り着いた。


「うわぁ、やっぱり凄い光景ですね」


 馬車から降り、眼前に見えるのは天高く浮かび上がる天空の城、魔王城。いつみても幻想的なまでの光景に、私は驚愕して天空を見上げていた。


「リッカ、早く行くぞ」


 いつまでも魔王城を眺めていると、ギルド長が急かすように呼んでいる。

 すみませんと謝り急かすギルド長の後を追い、魔王城の真下付近に到着。そこには前回にも見た、何やら複雑そうな転移魔法の陣が地面真下に記されている。


「早くしろ」


 ギルド長が手を出してきた。

 前回と同じだ。

 魔王城へは資格がある者と一緒にしか転移出来ない。恐らくは勇者対策なのだろうが、色々と面倒くさそうだ。


 私は嫌々ながらギルド長の手を取ると、


「バ○ス」

「だからお前は何を言ってるんだ、諦めろ」

「チクショウ」


 やはり魔王城は難攻不落のようだ。

 苦虫を噛み潰した私の手をギルド長が握りしめると、転移の魔法陣が輝き出す。


 その瞬間、全身が浮遊感に包まれると私達はその場から転移したのだった。



 ◇◇◇



 一瞬の浮遊感の後、魔王城に直接転移した私は目の前の光景に驚いていた。


「おおぅ、直ってますね」


 魔族の象徴たる魔王城。

 前回訪れた際は、勇者との激戦の後でボロボロとなっていたのだけれど、あれから半年も経ち完全に修繕されていた。

 それは正に魔族の皆が羨む魔王の城、古城ながらに品格や歴史を感じさせる立派な城だ。ラブホとは違うね。


「早くしろ、行くぞ」


 新たに目にする美しい城に感涙していると、ギルド長が急かすように歩き出すので私も付いていく。


「やっぱり、人があまりいませんね」


 前回同様、ギルド長が案内する魔王城の中を歩いていると、やはり城の中で働く人が少ないのが目につく。


「魔王は人嫌いだからな。仕方ないだろ」


 メイドさんが慌ただしそうに働いているのが見える。この広い城の中を少人数で掃除したり整えたりするのは大変だろう。明らかにブラックな職場だ。私は絶対に働きたくない。それなのにメイドさん達の表情が凄い幸せそうなのは何故なのか。


「あいつらは魔王のお世話が独り占め出来るのが嬉しいんだそうだ」


 なんだ、ただの魔王信奉者の方達だったのか。

 立派な社畜戦士なのかと思いました。

 ギルド長の話によれば、魔王城で直接お勤め出来る従業員は極少数しか雇っておらす、欠員が出た際は魔族領全土から応募者が殺到するとか……まさかの魔族全員が魔王信奉者だった。欠員もその後釜を狙った者達の犯行で、毎年一人二人は行方を眩ますらしい。狂ってるよ。

 これは魔王様も人嫌いの引きこもりになりますね。だって皆が狂信者とか怖すぎる。


「あれ、そう言えば……」


 ふと疑問に思い、ギルド長に問い掛けてみる。


「今回の宰相様からの呼び出しですが、魔王様もいらっしゃるのですか?」

「そりゃあ、いるだろ。魔王だからな」


 どうやら魔王様もいるらしい。

 宰相様からの呼び出し=魔王様の呼び出しみたいだ。でも、


「いるんですか? また逃走とかしてそうですが……」


 前回の呼び出しの際は、見事に魔王様は逃げ出していた。理由は、リッチとかいうアンデッドが腐ってて臭そうだから……うぅぅ、泣きそう。


「今回はいるだろ」


 涙目の私にギルド長が言った。


「お前がいるから、大丈夫だろ」


 何故か確信を持って答えるギルド長。


「なんで私がいるから大丈夫なんですか?」


 全く分からない。

 逆に、魔王様は私――リッチが城内にいると分かったら全力で逃げ出そうとしてる姿が想像出来る。


「なんでって……お前ら、仲良くなったんじゃなかったのか」

「はい?」


 どういうことだろう。

 ギルド長の言葉にしばし考える。


「リッカ、お前は魔王と二人で何度か会ってたんだろ」

「あ、そう言うことですか」


 理解した。

 全部理解しました。

 しかし、それは少し間違いです。

 確かに私と魔王様は何度か会っていますが、それは――


「あの、魔王様は私がリッチ、アンデッドだってこと分かってないですよ?」

「……は?」


 そう、私は魔王様と結構親しくさせてもらってはいるが、それは田舎者の私と思っているからなのだ。私はリッチだと明かしたことはない。てか私も最初は魔王様と知らなかったし。


「そうだった、お前は魔王の顔を知らなかったんだよな」

「はい、初めて金貨を手にするまで知りませんでした」

「とんでもない常識知らずのアホぅだ」

「酷くないですか!?」


 私があの幼女を魔王様と認識したのは、一度目の呼び出しの後、指名クエスト扱いとなっていた呼び出しを完了した後の報酬を貰ってからだ。

 そこで初めて金貨を手にし、金貨に掘られた魔王様の簡単な自画像を見たのだ。

 ちなみに、今回の呼び出しはクエスト扱いにはならないそうです。なりませんか、そうですか。


 ギルド長に『いやぁ、あの時は驚きましたよ』と説明すると、


「私は知らん」


 面倒くさそうに呟き、魔王様の待つ謁見の間へと歩いていったのだった。



 ◇◇◇



 うん、魔王様はいませんでした。

読んで頂きありがとうございます。


すみません、リアルがそろそろ忙しくなってきました。書く時間はあるんですけど、帰ったら寝ちゃうんですよね。ps5も設定だけして放置状態です。次回ももしかしたら来週になる……かも、です。すまねぇ。


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