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リッチ(金持ち)を願ったらリッチ(アンデッド)にされたんだが?  作者: キヒロ


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70/120

70 リッチィさん、闇夜に暗躍する

そろそろ魔王様sideの閑話もいれたい……


 

「なんでこうなった」


 時刻は深夜。

 私は人目を忍ぶようにして魔王城都を駆け抜ける。先頭を誘導するのはソラであり、私の走るペースに合わせて駆け抜けていく。


 つい数時間前、ソラに借金があると正直に打ち明けた私。もうどうにもなりませんわとソラに相談をしたところ、『ん、任せる』と自信満々に言い放ち、簡単にお金が稼げる、ソラのお気に入りの場所があると教えてくれた。


 人が出歩く街道を避けつつ、慎重に建物の間を通り抜け、見回りの兵士をかわして闇へと――人気のない区域へと潜り込んでいく。


 周辺は既に見慣れた城都ではなく、ボロボロに崩れた廃墟な建物が並び建つスラム街なような場所を更に奥へと進んでいった。


「本当にどうしてこうなった」


 真っ暗な深夜でも幻想的に視認出来る魔王城を眺めながら、私は後悔するように呟いた。


「ん、静かに」


 隣でソラが私の口を塞ぎ、止まれと合図をしてきた。

 どうやらお目当ての場所にたどり着いようだ。


「見つけた」


 嬉々と語るソラが示す場所を見てみれば、そこはゴロツキのイカツイ兄ちゃん達が集まる怪しい建物。

 うん、明らかにカタギじゃない人達が沢山集まってるね。


「行く」


 マジか。

 本当にここがお目当ての場所なの?

 明らかにヤバい所なんだけど?


「獲物、沢山」

「よし、帰りましょう」

「ダメ、行く」

「えぇぇ……」


 これは無理だと撤退を指示し帰ろうとしたが、ソラが手を離してくれない。いやいや、ソラさん、これは無理ですって。マジで。

 私の必死の抵抗もむなしく、話は終わりだとソラが動く。


「楽しみ、行く」


 そう言って、愚図る私をひきずり建物の裏口へと回っていくのだった。


「お家かえりたい」


 本当になんでこうなった。

 数時間前の私を殴りたい。



 ◇◇◇



「見張りがいま……したね」


 裏口に回ると、そこには怪しい扉を守るように二人のゴロツキの兄ちゃんがいた……いたのだ。過去形で。


「ん」


 血濡れのナイフを横に凪ぎ払い、ピュッと血糊を落とすソラ。その側には、二つのモノを言わぬ骸……いや、ギリギリ瀕死の状態で転がっている二人がいる。とんでもない早技だった、私が瞬きをする間もなく終わったよ。ひっでぇなおい。


「待って下さい、ソラさん」

「なに」


 瀕死状態の二人の懐を漁り、ナイフで止めを刺そうとするソラに恐る恐る待ったを掛ける。全くの躊躇もなく、見知らぬ二人の急所を切り裂こうとするソラに若干引きぎみです。


「殺す必要、ありますか?」

「?」


 問い掛けた私の言葉に、何を言ってるのと首を傾げるソラ。襲うなら殺す、当たり前のことだとソラが言ってるようだった。それに、


「こいつ、賞金首」


 嬉々と話すソラの説明を聞けば、どうやらここに集まるゴロツキは全員が指名手配の犯罪者集団であり、殺すとお金が貰えて素材も取れる絶好の狩場だと話してくれた。


「えぇぇ……」


 ドン引きです。

 指名手配の賞金首に慈悲などないとするソラだけど……一応、あなたも、ソラも指名手配の賞金首ですからね。それも魔族領ならず人間領まで含む全世界指名手配犯で手配されている、歴代最高額の賞金首ですから。知らないのかな? あ、知ってる、と。そうですか。問題ないですか。嬉しいと。サイコパスだなー。


「とりあえず、殺すのはなしでお願いします」

「なんで?」

「なんででもです」


 これだけは譲れないとする私に、ソラは若干つまんないと不機嫌な様子を見せるも了承してくれた。やっぱり話せば分かってくれる良い子だ。小声で『いい素材……』と、残念そうに呟いていたのは聞こえなかった事にしょう。

 魔族的にはソラの考えの方が正しいのかもしれないけど、私には未だに無理そうだ。精神的にはアンデッドよりで不快感や嫌悪感は驚く程に感じないが、やはり前世の頃の価値観の方が大きい。人殺しはなるべく避けたい。


 南無南無と念仏を唱えながらも、ギリギリ瀕死の二人にソラ特性の回復ポーションを掛けていると、ソラが一枚の紙を手渡してきた。


「なんですか、これ」

「見る」


 とりあえず見ろと渡してきた紙を広げると、


「はい?」

「仲間、一緒」


 そこには私の名前と顔が書かれた高額の手配書があった。しかもレベルやステータス、スキル等が細かく載っている。

 おい、冒険者ギルド。

 情報がだだ漏れなんですが、どうすんだこれ。

 個人情報とかプライバシーとかへったくれもないな。

 まぁ、載ってるのは登録したての初期の情報だから別にいいんだけど……よくねぇよ。


「嬉し?」


 嬉しくねぇよ!

 なんだこれ、本当になんだこれ。

 なんで私が賞金首にされてるの?

 え、リッチだから仕方ない?

 珍しい生き物だから高値で売れる?

 闇ギルドで今もっとも人気の賞金首?

 そしてその闇ギルドがここで、月に一度の集会を兼ねた作戦会議と情報交換をしている?


「よし、全員ぶっ殺しましょう」

「ん!」

「すみません間違えました。全員半殺しでいきましょう」

「……ん」


 危ない危ない。

 ついノリで発言してしまった。

 テンションを上げて落としたソラが恨めしそうに此方を見てる。ごめんね。

 それはそうとして、奴らは一人も無事では返さないし逃がさない。

 襲われるなら襲ってやる!

 どうせもう私はアンデッド、魔族でありリッチなのだ。既に本物の地獄も見ている。悪人に良心なんてないよ。


 最近はよく忘れそうになるが、やはりここは魔族領であり、基本的に力が全てな場所なのだ。私、よく今までこんな場所で生き残ってこれたもんだ。本当に自分の運の良さと、良心的な魔族達との出会いに感謝します。ありがとー。


「ん、あげる」


 改めて閻魔大王様に祈りを捧げていると、ソラが戦利品だとお金が入った布を渡してくるので、とりあえず受け取った。

 ずっしりと重く感じる質量。

 お金は重いけど、ここでは命が羽毛のように軽い。


 闇ギルドの皆さん。

 申し訳ありませんが、私の為にゴールドになって下さい。

 そちらも私のお金が目当てのように、私もあなた達のお金が欲しいのです。この世は弱肉強食。仕方ありませんね。だから成仏してください。南無南無~。


「《錬金》!!」


 となれば即行動である。

 闇ギルドの建物に手を当て、土魔法を発動し魔力を全体に行き渡らせコネコネする。その際、能力の副産物なのか、頭に建物の詳細が浮かんできたので『これはいいですね』と、まずは表の出入口を全て封鎖し、窓や地下通路への逃げ道も全て完全に閉ざす。


「いや、これ完全にチートだわ」

「凄い……!!」


 改めて認識した土魔法のぶっ壊れ性能に、側にいたソラが興奮するように誉めてくる。

 建物内では流石にこの異変に気付いたようで、慌ただしい物音が聞こえてきていた。


「《クリエイトアンデッド》」


 次にすかさず、完全に閉ざされた建物内に大量のゾンビを生み出し、闇ギルド内の敵を殺さない程度に捕縛せよと命令を出して送り込む。


 うん、建物内から懐かしくも酷い悲鳴が聞こえてくる。阿鼻叫喚だ。地獄にいた頃の日常BGMですね。私は慣れました。ソラもワクワクした顔で此方を見詰め、自分も参加すると言いたげだ。まぁ、止める理由もないので、殺さないでと一言だけ忠告して建物内へと送り出す。


 うん、建物内からの悲鳴の質が桁違いに上がった。地獄の最下層でも中々に聞く事が出来ない悲鳴だ。中は色々とひっどいことになってるんだろぅなぁ……南無南無。


 それからゾンビをちょくちょく追加し、この数分後、闇ギルドはただ一人も逃がすことなく壊滅した。


 そしてその数分後にもまた、私の手配書が回っていたいくつかの悪名高い傭兵団もついでに壊滅することになった。


 ソラは賞金首のお金は全額、私にくれると約束してくれたが、対価として《りっか汁》の返却と使用許可を求めてきた。

 勿論、私に断ることなど出来るはずもなく、返却と使用許可を渋々出すことになった。というか少し意外だった。ソラなら勝手に無許可で生産、又は複製でもして使用すると思っていたのだけれど、意外にもきっちりとしてたんだね。……え? りっか汁は私がいないと生産不可能? 複製は無理? だからこれからも宜しく? おぅ、マジか。

読んでくれてありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
閻魔大王自家製の汁だから真似出来ないね
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