69 リッチィさん、金策に走る
ブクマが600を突破しました!
ありがとうございます!
「600万ゴールドの返済期限は半年、つまり残りは1日――明日の朝までとなっております」
私はその場で絶望した。
ば、バカな。
あと1日で600万ゴールドを返済?
無理じゃね。
私は慌てて残金を確認した。
手持ちのお金は25ゴールド。
チラシに入金されている残金は、オリハルコンの500万ゴールドを除いて30万ゴールド……あれ、減ってない? 確か、前回のお魚祭りの時に貯めた70万ゴールドの内、40万ゴールドが消えている。何故だ?
「――っ」
あ、思い出した。
エルダーゾンビさん達の宴で提供したクラーケンの一部と、地獄で閻魔大王様と獄卒の鬼さん達にお裾分けした分のお魚が減っている。
ヤバい、調子に乗って使い過ぎた!?
オリハルコンを入れても530万ゴールドと25ゴールド。あと699975ゴールド足りない。
いや、オリハルコンは切り札なので元々は売り払う気はないんだけど……ないんだけど……そんな事を言ってられるのかな? いや、でも、しかし、う~ん、それは、ね。
ポケットから取り出した手持ちの全財産25ゴールド。
それを手にぶつぶつと呟く私をミラさんは確りと笑顔で見ていた。
「大丈夫ですよ、安心して下さい」
「み、ミラさん……!!」
優しい言葉で語り掛けてくるミラさん。
やっぱりこの世界で頼れるのはミラさん達しかいない!
返済期間を伸ばしてくれるのか、又は逃走した冒険者達に押し付ける事が出来るのかと期待した私は、
「私が、責任を持って、しっかりと、リッカさんを買って、あげますね!!」
ミラさんの言葉に崩れ落ちた。
「あぅ」
終わった。
私の異世界生活が今終わった。
いや、待って、ミラさんの奴隷ならむしろご褒美では? うえるかむでは?
「嬉しいです。私、前にも言いましたが、妹が欲しかったのです。それに、一度リッカさんを可愛いお洋服を着せたいと何度も何度も思ってましたから」
終わった。
私の異世界生活が今本当に終わった。
『フリフリ』とか『ヒラヒラ』とか『ゴスロリ』とか。
私の男としての最後の尊厳が本当に終わる。
「もう冒険者なんて危ない仕事はしなくていいんですよ。私がこれからは養ってあげます」
ずっと一緒ですねと淡々と話すミラさん。
とても目が虚ろで怖いです。
周りの屈強な冒険者達が後退りをしています。
私、知ってます。
これは色々とヤバいパターンです。
ミラさんから少しずつ後退りをしていると、
「ひゃっ!?」
ふわっと体が浮かび上がった。
「なんだ、リッカ、お前生きてたのか」
突然現れたギルド長が私を抱えている。
「ギルド長?」
約半年ぶりのギルド長。
久しぶりですねと声を掛けたら『腹が減った』と返ってきた。会話をしましょうよ。てか降ろして?
一体何の騒ぎだと言うギルド長に、ミラさんが説明してくれた。私の借金返済期間が明日に迫っていることを。
「私が買ってやろうか?」
「本気で止めてくれませんか?」
マジで止めろ。
本当に私の異世界生活が終わる。
一生ギルド長のエサ、非常食でかじかじされて終わってしまう。
「ミラさん!!」
「はい、なんですか、リッカさん」
私は覚悟決めた。
「あと1日、死ぬ気で頑張ります!」
「頑張らなくてもいいんですよ、リッカさん」
「むしろ頑張るな。お前は不死だから無限に食えそうだ」
改めて、本気で覚悟を決めた私はその場から急いで逃走した。
下手したら、二人にこのまま明日まで監禁されかねないと思って。
◇◇◇
「詰んだ……」
ガクっと膝をつく私。
あれから足りない金額を工面しょうと、思い当たる場所を必死に走り回っているのだが、どれもが外れた。
まず一番の可能性、商業ギルドマスターのクマさんに野菜をまとめて――半年分の野菜がダンジョンを彷徨いている――買って貰えないかと思い相談に行ったのだが、
「まさかクマさんが外出中なんて……」
どうやら商業ギルドマスターのクマさんは、今現在多忙で色々な領地や都市を回っているそうな。
普段はここまで忙しくはないそうなのだが、ここ半年はクマさんが何やら予想外だと焦って動いていると、前回お会いしたエルフのお姉さんが教えてくれた。
もしかしなくても、私のせいなのかな?
私が死亡した事になっていたから、野菜販売の件が消えたと焦ったクマさんが色々と動いている? メリー商会を潰す絶好の機会だと言ってただけに、野菜の仕入先の大元である私がリタイアしたから計画が頓挫したと……本当にごめんなさい。
とりあえずクマさんに私の生存報告をお願いしますと頼んだが、どんなに急いでも5日は掛かると言われた。
私は絶望した。それでは間に合わない。
次に思い当たった可能性が、魔王様だ。
前回お会いした時に、困った事があれば相談しろと言われたのを思い出した。
これは本当に悩んだけど、幼女にお金を借りるのはどうかと葛藤したのだけど、背に腹には返られないと魔王城に『田舎者が会いたがってます』と一報を入れて貰った。
リッカが会いたがっていると一報を入れても、あの魔王様なら『はて、リッカ?』と忘れてそうなので敢えて田舎者と名乗った。それなのに、
「魔王様ぇ……」
『ただいま魔王様は家出中です』と返された。
しかも宰相様から直々に返信が来て『この事は内密に』と。ちなみにお帰りは未定。
それならばと、駄目元で一か八かで高額クエストを受けようと再度冒険者ギルドに向かったのだが……諦めた。
『人間領のとある都市の殲滅』
『炎竜の討伐』
『災厄級モンスターが住まう廃都市の奪還』
『ユートピア教徒の殲滅』
『伝説的にお伽噺的な存在の珍しい生き物の捕獲』
こんなん無理ですわ。
特に最後の奴とか誰がクエストを出したの?
明らかに、内容をぼやかしているけど私だよね。バカなのかな? 急いで取り消しなさい!
そして、本当に最後の可能性と信じた《チラシ》のスキル。家電製品や食品ならば、珍しい物ということで高値で売れるかもしれない。
一発逆転を願い展開したチラシのスキルは――
【夏のリフォーム承ります】
私はそっとチラシを閉じた。
ここぞというときに使えないスキルだ。
チラシの範囲が広くて、最近はよく分からないモノばかりが出てくる。
チラシは便利なんだけど、出来ればネットスーパーやネット通販みたいな使い勝手がいいスキル欲しかったと思うこの頃です。
「どうしょう……」
本当に詰んだかもしれない。
あと最低でも699975ゴールド。
気がつけば、お空は真っ赤な夕日が沈もうとしている。タイムリミットは明日の朝まで。残りは僅かしかない。
絶望的なまでの状況に愕然とする私。
もう駄目だ、万策尽きた。
いやそれならばと、このまま逃走してみるのも悪くないいやアリだな。
それならばと別の意味で覚悟を決めていると、
「遅い」
いつの間に現れたのか、ソラが無表情で私の横に立っていた。
「あ、ちょっ――」
「早く」
私の手を取り、ぐいぐいと引っ張って歩くソラ。どうしたんだろう、もしかして、
「迎えに来てくれたのですか?」
「ん」
当たりのようだ。
コクンと頷いてくれた。
珍しい、今まで迎えに来てくれたことなんて殆どなかったような気がするんだけど……。
――まさか、
「もしかして、ダンジョンでなにか起こったのですか?」
「ない」
よかった。
特に問題ないらしい。
また何かやらかしたのかもと焦りました。
あれ、じゃあなんで迎えに来てくれたんだろうか。
そう思って隣で歩くソラを見ると、何故か若干、私に寄り添うようにして歩いている。
そう言えば、何故か昨日からソラとの距離感が妙に近い気がする。ベッドにも潜り込んでくるし。
もしかして、私が半年も目覚めなかったのを少しは気にしてくれてたのかな。
「心配かけてごめんね」
「……ん」
やはり色々とこの半年、私を心配してくれていたようだ。
無表情で分かりづらいけど、この子はやっぱり良い子なんだなぁと思う。サイコなマッドを除けば……。
ほんのりと暖かい気持ちになりながら、私はソラに手を引かれながら静かに思い返していた。
「――って、そんな場合じゃないから」
「ん?」
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