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リッチ(金持ち)を願ったらリッチ(アンデッド)にされたんだが?  作者: キヒロ


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56 リッチィさん、お野菜を味見する

 

 早朝、ソラに無理矢理起こされた私は畑に来ていた。


「うわぁ……」


 ややドン引きする私。

 目の前には青々しく育った葉と、大きな実がついた野菜が大量に成っていた。


「い、いくらなんでも早すぎませんか?」


 種まきをして僅か3日で収穫可能って……農家の人達からしたらトンでもないことじゃないですかね。ケンカ売ってませんか?


「ん」

「アアァァァ」


 どうだと言わんばかりに胸を張る田中君とソラ。

 確かに今、目の当たりにしている光景は凄いを通りこし、すさまじいものがある。


 トマト、ピーマン、ナス、唐辛子、ネギ、カボチャ、トウモロコシ、サツマイモ。


 この8種類の全てが発芽し、大きな実を付けている。

 種まきの時に田中君が直植えだから成功するか分からないと説明していたのは何だったのだろうか。

 一番難しいとしていたトウモロコシも沢山のお髭が出ている。


「……とりあえず、収穫……ちゃんと食べられるか味見をしてみましょうか」


 ここまで成長が早いと逆に心配になる。

 見た目は良くても、味が不味いとかだったら最悪だ。


 まずは手頃に食べられそうなトマトとピーマンを手に取る。


 トマトは鮮やかな真っ赤な色で水水しく、見た目にはツヤとハリがある。

 ピーマンも肉厚があり、緑色の皮果がツヤツヤしている。


 ひとまずはと、トマトを一口食べてみる。


「うまっ!」


 予想以上に美味しい!

 てか、甘いっ!

 こんなに美味しいトマトは食べたことがない。スーパーのトマトなんて話しにならないよ。

 酸っぱいほうのトマトも好きだけど、この甘酸っぱいトマトの方が好きだ、私は。


「おおう、全然苦くないです」


 ピーマンも一口食べてみる。

 全然苦くないもないし、青臭くもない。

 むしろ歯ごたえが凄くて美味しい。

 初めての経験だ、こんなピーマン。

 生ピーマンがこんなにいけるなんて……味噌がほしい。


「――っ!?」


 ソラも物凄い勢いでピーマンを丸齧りしている。

 よっぽど美味しかったのか、お次はトマトと口を汚しながら食べている。


「ネギはネギですね」


 立派にピンと伸びていたネギの味はネギだった。嫌いじゃない、大好きです。


 他の野菜、ナスや唐辛子もとても満足できる仕上がりでした。

 カボチャは色々と調理しないと美味しくないので、保留中。

 トウモロコシは後で茹でて食べましょう。一粒食べてみましたが、固くても普通にたべられるくらい甘くて美味しかったです。茹でると絶対に美味しいです。


 ……ちなみに、唐辛子だけは私が止める間もなく、ソラが何も知らずにパクりといったので大変だったと言っておきます。凄く辛かった。


「ふふふ、ついにこの時がやってきましたか」


 最後のトリを飾るのはやっぱりこれです。

 待ったかいがありました!


「私の大好物のさつまいも!」


 これだけは本当に譲れないし譲りません!

 どうかこれだけはよろしくお願い致します。

 ここで失敗して不味かったとかだったら私は泣きます、ガチで泣きます。

 正直、さつまいもの畑だけは他の畑よりも広く気合いを入れて造ったので、期待は特大です!


 となれば、私は颯爽とさつまいもの調理に取り掛かる。


 まずは土魔法《錬金》で大きな鍋をオリハルコンで造り出し、そこに墓石を手で小さくちぎってはコネコネして入れていく。


 ……大丈夫、決して罰当たりとかではないですから。ただのオブジェクト、ダンジョンのオブジェクトですから。下にはナニも埋まってナカッタよ。


 さて、ソラに火種を準備してもらって、鍋に敷き詰めた小石(墓石)の中にさつまいもを埋め蓋をする。

 そこから弱火で1~2時間、じっくりと火を通していけば石焼いもの完成だ。


 ここまでの工程をソラが首を傾げながら無表情で見詰めていたので説明。


 こうすることで、いまソラが微妙な顔で生齧りしているさつまいもが更に美味しくなると。


 生で食べてもほんのり甘く美味しい? けど、石焼でじっくりと火を通すことで、デンプンが糖に変化し甘く美味しくなる。


 その説明の中でソラが『デンプン?』『変化?』と、なにやら科学者――研究者としての琴線に触れたらしく、ジリジリと詰め寄ってくる。近い近い、てか眼が据わってて怖いんだけど。


 誰かタスケテくれとソラに押し倒されていると、田中君がチョンチョンと合図を送ってくる。


「アアァァァ?」 訳:説明したろか?


 ありがとうー! 田中君!

 本当にありがとうございます!


 私に覆い被さるソラを田中君にひっぺがしてもらい、田中君が地面に絵を書きながらソラに説明しだした。


 ……たまにだけど、本当にソラが怖いです。

 本当に色々な意味で喰われてしまうんじゃないかと思った。

 あの子、稀に私が困っていたり怖がっているのを見ると、無表情ながらに凄く嬉しそうな顔をしてる時がある。顔もほんのりと赤くなってるし……まさか発情してないよね? スイッチ入った?


 恐る恐る、ソラと田中君に視線を向けると、


「アアァァァ」

「なるほど、すごい」


 楽しそうにお絵かき談義をしている。

 その姿は見た目の年齢(実年齢は130歳)通りで微笑ましい。

 良かった、いつまでも微笑ましい姿のソラでいてください。本当に、宜しく、お願い、致します。


 ほんわかとしながら二人を見詰めていると、あることに気付いた。


 田中君が地面に書いてる絵、これって――


「おい、やっぱりお前、日本人だろ」

「アアァァァ!?」

「あ、こら、消しても駄目ですよ、今度はしっかりと見ましたからね!」

「アアァァァ??」

「しらばっくれても――あ、あぁ、ちょっ、ちょっと待って下さい、ごめん、ごめんってば、邪魔するつもりはなかっ――あ、待って、お願いだから待って下さいソラさんッ!? 邪魔してごめんなさいぃぃ!!」


 助けて下さい田中君!!

 この子のスイッチ入っちゃったよ!!


「アアァァァ……?」 訳:はて……?


 ごめん、ごめんなさい!!

 謝る、謝るから!!


「……アアァァァ」 訳:……仕方ないなぁ


 ありがとう、ありがとう田中君!!

 流石は同郷だね!!


「アアァァァ……?」 訳:はて……?


 あ、待って、違うの、わざとじゃないの!?

 本当に謝るから本当に助けてーー!!


「……アアァァァ」 訳:……仕方ないなぁ


 ありがとうございますありがとうございます。

 後で畑を拡張してあげるね!!


「アアァァァ」 訳:5倍で頼むわ


 え、5倍?

 東京ドーム5個分!?


「アアァァァ」 訳:頼むわ


 ………ええぇぇぇ………いや、でも………ええぇぇぇ………


「アアァァァ」 訳:頼むわ


 り、了解……ぐすん。



 というわけで、田中君がソラをひっぺがして最初に戻ります。


 1時間と少し経ったので、さつまいもの焼き加減を確かめる為に鍋を開ける。


「……まだ火の通りがあまいですね」


 表面にまだシワが出てないし、(オリハルコン)の刺さりが悪い。


「もう少し寝かせましょうか」


 もう1時間くらい様子をみてみよう。


 鍋に蓋をし、再度待つことに。


 手持ち無沙汰なので、遠くからソラと田中君を観察する。


 邪魔はしない、私は学んだのだ。


 二人は楽しそうにお絵かき談義をしていたが、しばらくするとソラの獣耳と鼻がピクピクと動き、此方に問い掛けるように見詰めてくる。


『いい匂い、まだ?』

『まだまだだよ』


 さつまいもの焼けた匂いにつられ、だんだんと我慢が出来なくなってきているソラ。


 そう言えば、そろそろもうお昼か。


 早朝から色々と収穫やら味見をしていたから気付かなかったよ。


「……ついでにトウモロコシも茹でますか」


 さつまいもだけのお昼ご飯もあれなので、トウモロコシも茹でることにする。


 鍋に水と塩とトウモロコシをぶちこみ、10分茹でる。完成。


 ソラがお腹空いたと此方を見てるので、トウモロコシを先に食べていてもらおう。


「どうぞ、熱いので気を付けてね」

「ん」


 少し冷ましたトウモロコシをソラに手渡す。


「―――っ」


 驚いたようにトウモロコシをガツガツと食べ始めるソラ。

 生の固かったトウモロコシが柔らかくなり、甘みがあって美味しい。


 おかわりのトウモロコシをソラに手渡し、田中君にもトウモロコシを――あ、


「アアァァァ」

「そうでした、田中君はゾンビなので食べられませんでしたね」


 正確には食べられるが、味覚が一切ないそうです。


 モンスターとしてさ迷う普通のゾンビは、人は襲うが知能がないので、生前の食欲という本能から襲い食べているだけらしい。


 田中君は生前の記憶があるエルダーゾンビなので、人は襲っても食べる趣味はないそうだ。


 すみませんでしたと謝る私に、田中君は気にするなと手を振る……が、少し残念そうにしている。


「……ふむ」


 私は少し考え込む。

 田中君は生前は絶対人間だったと思う、てか日本人だろ。

 偶然ダンジョンが産まれたことで再び蘇り、エルダーゾンビとして生きていくことになった。

 今は野菜作りにせいを出しているが、やはり自分が作った物を味わえないというのは辛いことだと思う。


 私はソラをチラリと見ると、ソラも此方を見ていた。


 考えていたことはお互い同じのようで、ソラが懐からナイフとポーションのような培養液を取り出し、凄く嬉しそうに目で語ってくる。


『改造、いく?』

『出来るの?』

『たぶん』

『大丈夫なの?』

『楽しみ』

『私はパスで』

『ダメ、一緒』

『えぇ……』

『仲間、嬉し』

『ゲロ吐きそう』


 どうやら、エルダーゾンビこと田中君の改造計画(強制)が始まることになった。


 ……さつまいも食べれるかなぁ。

読んでくれてありがとうございます。

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