48 リッチィさん、逮捕状が出される
速報:魔王軍一のサイコパスと恐れられるソラの復活。いや、死んでないけどね。
只今、冒険者ギルド内はソラが100年ぶりに姿を現したと知って大パニックに陥っていた。
冒険者ギルド職員は直ちにこの事実を国中に広めなくてはと、冒険者と協力して住民に厳戒態勢をと声を上げて走り回っている。
「…………」
現状、この場で今落ち着いている人と言えば、それは私と煎餅を齧ってるギルド長、後は抱き付いて離れないミラさんだけだ。
そんな阿鼻叫喚が続くこの雰囲気の中、突如冒険者ギルドのドアが激しくバタンと開けられ、大勢の兵士さん達が雪崩れ込んで来た。
「ここにアンデッドリッチこと、リッカ・エンマはいるか!!」
入ってくるなり開口一番に私の名前を叫ぶ兵士さん達。
お前は今度は一体何をしたんだとするギルド長とミラさんの視線が痛い。
パニックになってた冒険者ギルド内の職員や冒険者達も何だ何だと野次馬的に集まってきた。
誤解ですと激しく叫びたい所だが、色々と思う所があるので取り敢えず抱き付くミラさんを離し、兵士さん達に私がそうですがと名乗り出る。
「リッカ・エンマ、貴方には今逮捕状が出てる。よって我等と一緒にご同行してもらう」
「……はい?」
は? どういうこと?
「器物損害、建築物等損害、窃盗に恐喝、傷害に暴行の教唆の疑いに加えて文書偽造罪及び賄賂罪で逮捕する」
いやいやいやいやいやいや、全くもって見に覚えがないんですけど!?
「先日、リッカ・エンマを含む冒険者一同が酒場で酔って帰った後に路地で暴れ、建物や器物が壊れたと城都の住民から報告が来ている」
……え、それって私が盗賊に拐われた時の話ですか? だってあの時は盗賊に襲われて仕方なく反撃しただけなんですけど……
「その後、冒険者一同が『リッチちゃん救出部隊』を率い、拐われたリッカ殿を救出すると城都内の盗賊ギルドや傭兵部隊に傷害及び暴行を行っている」
えぇぇ……、何やってるんですかあの人達は。まぁ、気持ち的には嬉しいですけどね。てか、何でそれが私の罪になるんですか?
「教唆の疑いがある。実は誘拐は偽証であり、盗賊ギルドや傭兵部隊に暴行が向くように仕向けたのではと」
なんでやねん!?
私、盗賊ギルドや傭兵部隊が有ることすら今初めて知ったんですけど!?
「窃盗、恐喝に関しては、メリー商会の会頭からタチュラントスパイダーの足を盗まれたと被害届けが出されている」
あのタヌキめ……!
タチュラントスパイダーの足を売って貰えなかったからって明らかに嫌がらせしてきたな!
「ちょっと待って下さい。色々と弁解したい所なんですが──最後の文書偽造罪と賄賂罪って何ですかこれ」
これについてはこじつけが凄い。
てか文書偽造罪ってなんだ。賄賂罪も。
「文書偽造罪及び賄賂罪については、国家の公的文章を不正に偽造し、その賄賂として金銭を受け取ったと証拠が出ている」
本当にこじつけが凄いな!
絶対これどっかの馬鹿が『あ、これも混ぜたろ』って感じで『これだけあるなら俺のも気付かねんじゃね?』って突っ込んだだろ!
「言い訳は屯所で聞かせてもらおうか」
弁解は屯所で聞いてあげると私の腕を拘束しょうとする兵士さん達。
あの、これってまさかまた牢屋に入れられるってオチじゃないですよね?
上半分の罪状に関しては詳しく調べてもらえば分かってもらえるとは思いますけど、下の半分はどうみてもドロドロとした権力者絡みの嫌がらせと不正の押し付けが入ってますよね? 弁解とか本当に聞いてもらえるんですか?
そう思って兵士さんに真剣な眼差しを向けてみると、
「…………」
気まずそうに『プイッ』と目を反らされた。
あ、これは駄目なやつだ。
絶対に権力者権限とかで問答無用で罪人に仕立てあげられるパターンだ。
私を見詰める兵士さん達の瞳に哀れみの感情が見える。
「……行こうか」
それは牢屋にですか?
誰か助けてーー!!
もうあの寒い牢屋は嫌なの!! 暗いし汚いし寂しいし!!
私の必死の訴えも虚しく、両腕を兵士さん達に拘束される。
ヤバい、このままでは本当に牢屋に入れられる!
思わずギルド長やミラさん、又はギルド職員や冒険者に助けてと視線を向けてみると──
──何故か全員がある方向を凝視していた。
「なに、してる」
魔王軍一のサイコパスの登場である。
「ソラタスケテー!!」
恥も外間も関係なく叫ぶ。
そっちが権力を使ってくるのなら、こっちは悪名を使うまでだ。
叫び声を上げた瞬間、私を拘束していた兵士さん達が一瞬にして距離を取った。
それと同時に冒険者ギルド内の職員や冒険者も颯爽と距離を取った。
私は素早くソラの元に向かい抱き付く。もう牢屋は嫌なの、寒いの、寂しいの。
「早く帰る」
うん、帰ろう。
暫くは表に出ず、ダンジョンの守りを強化してほとぼりが冷めた頃にまた出てこよう。
「ん、芽が出た」
マジか!
昨日植えたばかりなのにもう芽が出たのか。
これは凄い、早く帰って田中君と話をしなければ!
「ま、待て、いや、お待ち下さい……!!」
この微妙な空気が漂う中、勇敢にも兵士さん達が武器を持って私達を囲み出した。同時に冒険者ギルド内の職員や冒険者達は地面に伏せ死んだ振りをしている。私達はただの屍だと。
しどろもどろになりながらも、何とか平和的にソラと話し合いをしようとする兵士さん達。──だが、
「……!」
上司の命令に嫌々ながらも囲む兵士さん達に何を勘違いしたのか、何故かやる気を見せ始めたソラ。
「あぁあああああぁあああああああぁああああああぁあああああ!!」
「死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない」
「ヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダ」
「どうか命だけは!! どうか命だけは!! どうか命だけは!!」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
やる気を見せるソラに悲壮な顔を浮かべ叫びながらも、武器を握り締め此方を囲む兵士さん達。言ってる事とやってる事が中々にカオスだ。
「……!!」
それを見て更に滾ってくるとばかりにやる気を出すソラ。
うん、明らかにこの子、兵士さん達が絶望しているのを楽しんでいるよね。
今初めて本当に分かった。
この子は正真正銘のサイコパスだ。
「止めんか馬鹿者共」
ソラが懐からナイフと妙な色をしたポーション……培養液を取り出した所でギルド長から待ったの声が掛かった。
流石にソラもギルド長の言うことは聞くのか、若干不満そうな顔をしながらもナイフを仕舞った。
兵士さん達は助かったとギルド長を感謝の念を込めて見詰めているが、
「やるなら外でやれ。ギルドが汚れるだろうが」
「――ん!」
あいわかったと頷くソラに更に絶望した兵士さん達だった。
もう誰か止めてやれよと願うこの状況。
ギルド職員や冒険者なんかは、匍匐前進しながら出口に向かってたもんだから、出口に向かうソラに焦ってピクピクと痙攣をし始めているぞ。
「あの、ちょっといいですか?」
そんな混沌渦巻くギルド内を吹き飛ばしたのはミラさんだった。
すみません、次回の更新はちょっと先になるかもしれないです。




