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リッチ(金持ち)を願ったらリッチ(アンデッド)にされたんだが?  作者: キヒロ


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35/120

35 リッチィさん、みんなで酒場にいく

 

 スキルの検証は続くよー。


「《クリエイトアンデッド》」


 ボコボコッと地面から這い出して来るゾンビ。


『アアァァァ』


「ふむ、成功ですね」


 121体目のゾンビでようやく作り出したR-15禁ゾンビ。勿論、服は着ている。Rー15なのは見た目がゾンビだからだ。


「やっぱり元があると違うと言う事ですかね……」


 苦節121体目で作り出したゾンビだが、実は未だ完成とは言い切れなかった。いや、ある意味では完全体なのだが。


「まぁ、それは当たり前ですか。元から服を着ていたんですからね……」


 目の前で佇むゾンビ。

 服を着ているとは言っても、このゾンビは鎧を纏って武器を持っている。


「……どうしょう」


 実はこのゾンビ、()()()()を触媒に作り出したのである。ちょっとした興味本位から手を出してみたのだが、成果は上々すぎる結果を出してしまった。

 ……あ、ちょっと待って、外道とか言わないで。これにはちゃんとした理由があるのです。


「ここが墓場なのが悪い」


 リッチの特性からなのか分からないが、どうも私はアンデッドと波長がピタリと合ってしまうようで、はっきりと言ってしまえば要は──()()()()が聞こえるのだ。地中奥深くから『戦える、まだ戦える』『出して、もっと戦いたい』と。流石は魔族である。死しても尚、まだ戦いたいとは……少し興味が湧いて願いを叶えてしまった私は悪くないと思う。


『アアァァァ』


「あー、はいはい、お礼は別にいいですよー」


 武器をガチャガチャと鳴らしお礼を言ってくる目の前のゾンビ。

 余程また戦えるのが嬉しいのか、私が指示を出す前に何処かへ走り去っていってしまった。

 そう、走り去ったのだ。


「……まさかのエルダーゾンビ」


 偶然の産物ではあるが、まさかのゾンビの完成体を作り出す事に成功してしまった私。


「……まぁ、今更エルダーゾンビが1体や2体増えた所で変わりないですよね」


 うん、きっとそうだ。

 大丈夫、あれはただの少し素早いだけのゾンビ。ダンジョンからは出さないし、危険はない。ダンジョンに潜ってさえ来なければだが……。


「見なかった事にしょう」


 という訳で一旦、クリエイトアンデッドのスキル検証及び実験は終わりにする。


 お次は魔法スキル、


「土魔法ですか……」


 この微妙に使えない魔法スキルなのだが、色々と実験してみて分かった事が二つある。


 まず一つ目、この魔法は土に関する物ならば何でもコネコネ出来るというところだ。

 試しに墓石を触り魔力を流すと、まるで粘土のように墓石を自在に変化させる事が可能だった。結構疲れたけど……


 そして二つ目は『熟練度』である。

 これはコネコネしていて分かったのだが、どうやらコネコネすればコネコネするほどにコネコネが上がるようだ。もう意味不明である。


 結論、土魔法は使えないスキル決定である事が私の中で決定した。1億ェ……



 ◇◇◇



 ダンジョン探索及びスキルの検証が終わった私は、ダンジョン入口の門へと探索の結果報告にやって来ていた……のだが、


「うぅぅ、痛い……」


 戻るなり開口一番におじさんの拳骨をもらってしまった。何でも『こんな遅くまでダンジョンに潜るなと昨日言った筈だよな?』と、結構本気で怒られた。

 確かに少し日が暮れ始めてはいたが、これくらい多目にみてもいいのではないのかと理不尽だと言えば二発目が落ちて来たので素直に謝った。ごめんなさい。

 うぅぅ、心配してくれるのは嬉しいけど、拳骨はマジ痛いので止めてほしい。



「探索お疲れ様でした。これは昨日の合わせての報酬になります」

「ありがとうございます」


 宿直室に待機していた冒険者ギルド職員に探索の報告を済ませ、昨日の偵察を含めた報酬金をもらった。

 全部で何と100万ゴールド。

 ただダンジョンを散歩していただけなのに、驚きの金額だ。


 こんなに貰っていいのだろうかと不思議に思ったのだが、ギルド職員曰く、このレベルのダンジョンなら適正金額ですと言われた。何でも、スペクターやエルダーゾンビがうようよしているダンジョンなど最上級クラスの危険度らしく、普通は誰も偵察など受けたりしないらしい。


 それと後、このダンジョンは公式に魔王城から直々に立ち入り禁止区域に設定されたらしい。私以外は……。

 ちなみに勿論、私がダンジョンマスターになった件は極秘扱いみたいで、バレると面倒な事になるから気を付けてと言われた。主に誘拐や奴隷売買で。ヒェッ……。



「お、リッチの嬢ちゃんじゃねぇか!!」

「マジかよ、やっと見つけたぜ」


 そんなこんなで用事を済ませ、暫くお世話になる事を決めたおじさんの奥さん、アリアさんの宿屋に向かっていると、何処かで見た覚えがする冒険者達に話し掛けられた。


「昨日はあれから何処に行ってたんだよ。皆探したんだぜ、リッチの嬢ちゃんにお礼がしたいってよ」

「お礼ですか?」

「おいおい、まさか昨日助けてくれた事を忘れたのか? 俺達冒険者は嬢ちゃんに助けてもらえなかったらあそこでお陀仏だったんだぜ」

「本当だぜ、リッチの嬢ちゃんには感謝している」


 あ、思い出した。

 確か昨日のゾンビパニックで助けた人達だ。


「なんだ、もしかして今思い出したの?」

「あ、いえ、すみません」


 あまりにも助けた人達が多かったので記憶がうろ覚えなんですよね。


「まぁ、別にいいけどよ。リッチの嬢ちゃんは何処に行ってたんだ? 結構昨日から皆探してたんだぜ」

「あぁ、それはですね……」


 昨日から今日までダンジョンの探索をしていたと皆に説明。勿論、ダンジョンマスターの件は伏せて。


「マジかよ、あのダンジョンって確かあの後、『立ち入り禁止区域』に設定されるくらいヤバい場所だって聞いたぜ」

「そうですね、一応は私以外は立ち入り禁止になっているみたいです」

「は? 何で嬢ちゃんだけ……あぁ、確かリッチの特性だったか?」

「ゾンビに襲われないってやつだろ。あそこはアンデッド系のダンジョンらしいからな、リッチの嬢ちゃんからしてみれば楽勝か」

「それじゃあ、あのダンジョンはリッチの嬢ちゃんの独り占めだな!」


 ガッハハハと笑う冒険者達の皆さん。


「そうですね。昨日と今日の探索だけでも100万ゴールドは貰いましたよ」


 そう言うと皆の笑い声がピタリと止まった。


「へぇ、100万ゴールドかぁ……」


 冒険者達全員の表情がニヤリと変わった。

 ……何か嫌な予感がする。


「よし、今日はリッチの嬢ちゃんの奢りで飲みに行くか!」


 何でそうなる。


「よっしゃあ。それじゃあ昨日の奴等にも声かけねぇとな!!」


 ちょいちょい、何を言ってるんですか?


「じゃあ行こうぜ、俺達の行き付けの酒場があるんだ。今夜はじゃんじゃん飲もうや!」


 あ、駄目だこれは。

 下手したら一晩で報酬金がぱぁになる流れだ。

 てか私へのお礼はどうしたコラ。


「あ、すみません。私ちょっと用事を思い出しました……ってコラ、離してください」

「固いこと言うなよ、同じ冒険者仲間じゃねぇか」

「親睦を深めると思って、な? ぱあっと皆で騒ごうぜ!!」


 それってぱあっと私のお金も消えちゃうんですけど!?

 嫌だ、私はこのお金でオコタ(炬燵)を買うんだ!! 離せぇえええ!!



 ◇◇◇



 何故か私の奢りということで開かれた、貸しきりでの酒場での宴会。

 いつの間にか参加者は数十人まで膨れ上がり、昨日のダンジョンコア討伐の冒険者フルメンバーが集まってはドンチャン騒ぎを起こしていた。


「あのぅ、そろそろ止めませんか?」

「いやら、まらまら飲める!!」

「いやいや、もう明らかに限界ですよね?」

「もっろ飲める!!」


 とは言っても、もう皆さん全員が酔い潰れているんですけどね。ちなみに私が酔い潰しました。もうね、お金なんて知らない、皆は次の日に地獄を見たらいいと思う。


「そうですかー、じゃあお酒追加しますねー、店員さーんお酒樽で追加お願いしまーす、はいはい飲んで飲んでー」

「──うぶっ!? ば、馬鹿にゃ、われらドワーフ族を相手に飲み勝ちゅなど……化け物……パタリ」


 ふぅ、最後まで粘ってはいたけど、漸くラスト一人が酔い潰れた。ドワーフ族、中々に手強かったよ。


「あんた凄いねぇ、ドワーフ族相手に、というか冒険者全員を酔い潰しちゃうなんて何者だい?」


 口直しにお水を頼むと、酒場の店員さんが呆れた顔をして持ってきた。


「あはは、一応これでも私はアンデッドですので、毒や酒精は効かないんですよ」


 冒険者達は全員忘れていたみたいですがと言うと、酒場の店員さんは『あぁ、あんたがあの噂の、どうりで……』と、苦笑い浮かべている。


「すみません、お水のお代わり貰っていいですか」

「いいけど、お酒はもういいのかい? じゃんじゃんあるよ?」

「いえ、流石にこれ以上はもう飲めませんよ」

「そうかい、残念。せっかくもう少し絞り取れると思ったのに……あらやだ」


 オホホと去って行く店員さん。

 中々に商売根性が逞しい人だ。

 むしろ、これ以上酒代を払いたくないから冒険者達を酔い潰したんだけどね。


「……はぁ」


 タメ息を吐いて水を一口飲む。

 どうもこの世界のお酒は辛口でキツイ。今の私ではあまり好きにはなれそうにない。まだ男性の時であればいけたかもしれないが、やはり女性になってから味覚も変化していみたいだ。辛口派から甘口派に。


「……んぐっ」


 更に一口水を飲む。

 お酒ばかり口に含んでいたので舌が洗われるようだ。


 そこでふと、裏でテーブルに置かれた一枚の紙に気づいた。


 まさかこれは……恐る恐るひっくり返してみると、


「──ぶはっ!?」


 酒代料金105万ゴールド。


 夢でしょう!?


 思わず水を吹いてしまった。


『うわっ!! 汚ねぇじゃねぇか』


 あ、ごめんなさい。

 どうやら酔い潰れていた冒険者達に掛かって起こしてしまったようだ。


『誰だコラ……って、何だリッカさんか』『気にすんな』『なんだご褒美じゃねぇかよ』『はぁはぁはぁはぁ』


 本当ごめんなさい。

 最後の二人はずっと寝てろ!


読んでくれてありがとうございます。

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