34 リッチィさん、スキルを検証する
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ダンジョンモンスターの件を全て丸投げされてから翌日、宿直室で一晩明かした私は朝一で再びダンジョンへと潜る事になってしまった。
理由は二つ。
一つ目は冒険者ギルドからの依頼でダンジョン内の探索とマッピングを頼まれたからだ。
まぁ探索といっても、私の周囲には墓石とアーアー言ってるゾンビしかいないのだから探索するモノなどないと思う。
マッピングに関しても、墓石が並び続く同じ光景を遠慮と見せられていてはマッピングも何もないと言いたい。何を目印にしろと?
昨日はダンジョンコアに呼ばれて楽にダンジョン最奥まで辿り着けたが、こんなの普通は絶対に迷うと思う。
今はダンジョンマスターになったせいなのかは分からないが、何となくダンジョン内を把握して進むことが出来ているので私は迷う事はないが。
「……ふぁ」
そろそろダンジョンの最奥へと辿り着こうかというところまで進んでいるのだが、やはりダンジョンモンスターが私を襲ってくることはない。もはやただの散歩でしかないダンジョン探索にアクビが出る。
そんな感じでのんびりとダンジョンコアがあった地点、もといダンジョンコアルームへと到着した。
え? ダンジョンコアルームとは何か? 私も分からん。何となくなのだが、ここがダンジョンコアルームだと感覚的に認識しているだけなのだ。本当に誰か説明をしてほしい。あ、ドMダンジョンコアは除く。
「さて、ここまで来れば大丈夫でしょう」
ここに来た二つ目の理由、それは昨日新たに獲得したスキルの検証の為だ。色々と問題がありすぎるスキルのせいで、おいそれとスキルを人目の付く所では試す事が出来ないのだ。土魔法はともかく、クリエイトアンデッドのスキルなんて明らかに地雷臭くて易々とは使えない。ギルド職員の話では何でも伝説のスキルだとか何だとか言ってたしね。
「ステータスオープン」
名 前:リッカ・エンマ
年 齢:16
種 族:リッチィ
レベル:1
スキル:
固有スキル:チラシ(改) 土魔法 クリエイトアンデッド
加 護:▲◆◇★
称 号:わぁれの娘だぁ ダンジョンマスター ダンジョン撃破者
左腕に付いた冒険者の証を弄ると自分のステータスが開いた。
「んー」
前回と比べると、スキル及び固有スキルが二つ増えている。称号も二つプラスだ。てか、相変わらず加護の一覧が意味不明な表記になっている件は何なのか。
「とりあえずは土魔法からですね」
少しワクワクしながら土魔法に意識を集中する。なんたって初の魔法なのだ。テンションが上がらない訳がない!
「成る程、こんな感じですかね」
チラシのスキルを展開する感覚をもとに、頭に浮かんだイメージで両手を前に突き出し地面を触る。
手の平から魔力が抜け出たような感覚がすると、ボコボコと音と共に地面の土が少し盛り上がってきた。
「おお!!」
初めて魔法にテンションが上がる。
チラシのスキルとは別で、ちゃんと魔法を使ったとした感覚が直に伝わってくる。
「おおう!!」
イメージをもとに、盛り上がった土を弄くり回す。若干少し気持ち悪いが、クネクネとイメージ通りに形を変える事が出来た、出来たのだが……
「……え?」
それ以外の事が全く出来る気配がしないのは何故なのか。
いくら集中しても頭に思い浮かぶのは土をコネコネとこねくり回すというイメージだけ。確かに土魔法と言えば土魔法だ。だがしかし、土魔法といったらこう、あれだ。錬金術とかゴーレムとか、土の槍を飛ばしたりするやつなのではないのか?
いやいや、そんな馬鹿な。
きっと私のイメージ力が足りないのが原因だろう。
今度はしっかりと集中してイメージを固め、
「《土槍》!!」
地面から直径10センチ弱の土の槍が生えてきた。え、爪楊枝? ツンツンとつついてみれば……あ、折れた。
「《ご、ゴーレム》!!」
先程盛り上げた土を使い魔力と一緒に練り上げる。イメージはコネコネと粘土を弄る感じ。クネクネと形が変わる土を人形にイメージ……イメージするのだが……
「お、おおぅ……」
な、何かとんでもなく疲れるんですけど。
それでも頑張って何とかゴーレムを形作ると、全長10センチ、のっぺりとした某人間の出来上がり。
……小さくない?
『動けゴーレム』と命令してみれば……ピクリとも動かない。うん、分かってた。コネコネしてた時から気付いてた。これはゴーレムではなくただの土人形、動く訳がない。
「何か思ってたのと違う」
これはもはや詐欺なのでは? 詐欺ですよね、詐欺でしょう!?
土をこねくり回すだけの魔法を私は土魔法とは認めない。1億ゴールド返して、お願い!!
「とんだ外れスキルじゃないですか……」
土の槍とゴーレムに関しては形だけは不恰好ながらも作れるのだが、それは作れるだけで飛ばしたり動かしたりすることは出来そうにない。
「いや、まだだ。まだ何か出来る筈……」
あまりの落胆に膝から崩れ落ちそうになるも、何とか踏ん張る。
魔法といえば詠唱だ。
アニメやラノベでも詠唱を唱える事で魔法を発動させていた筈である。
今は無理でも、後で冒険者ギルドで調べるなり魔法使いの先輩から教えを請えばいずれは使える筈!
……何故か頭の中で『詠唱? 何それ、そんなんあるの? 必要ないよ』と浮かんだのだが、それは嘘だと信じたい。
何かとんでもなく肩透かしをくらった気分だが……いや、大丈夫だ。私にはまだ違うスキルがある。気を取り直して今度は次のスキルの実験、クリエイトアンデッドだ。
このスキルはギルド職員曰く、無限にアンデッドを生み出す事が出来ると言う伝説のスキルらしい。
此方もチラシスキル同様と同じ感覚で展開、もとい応用して発動させる。
「《クリエイトアンデッド》!!」
魔力が少し抜けた感覚が伝わり、ボコボコと目の前の地面が盛り上がったと思えば、
「──っ!?」
ドゴッと突き抜けるようにして地面から手が生えたきた。そして地面から突き抜けた手を軸に地面から頭、胸、腰、太股、足先と抜け出していく。
「ひぇっ……」
なにこれ、怖い。
リアルホラー映画みたいだ。
気が付けばいつの間にか目の前に一体のゾンビが立っている。
ピクリとも動かないのはもしかして私の命令待ちなのだろうか。
試しに簡単な指示を出してみる。
「ジャンプしてみて……あ、ごめん、もういい。もういいから止めて」
これはヤバい。
盲点だった。
私の指示通り跳ねてくれたゾンビなのだが、これは如何せん。何がヤバいかというと、
「貴方は男性でしたか……」
跳ねるとぶーらぶらなのだ。
何がと聞かれればナニがだ。
ぶーらぶら、ぶーらぶらなのだ。
ゾンビに服を着るという概念はないようである。
「おい、止めろ。それ以上動くな」
何を勘違いしたのナニを揺らすゾンビ。男性というワードに反応したのか、ぶーらぶら、ぶーらぶらと見せつけている。
もがれたいのかな?
それはナニを無くした私への当て付けなのかな?
「《クリエイトアンデッド》!!」
再びスキルを発動する。
此方も前回同様、地面からボコボコと這い出して来る。
「…………」
もう私は何も言うまい。
性別は違えとぶーらぶらなのだ。
絵面的にどちらも危険極まりない。
ダンジョン産のゾンビは服を着ているのに対し、何故に自己生産ゾンビは服を着てないのだ。まぁ何となく分かるけど。
「このスキルは暫く封印、もとい改良の必要がありますね」
本当に微妙なスキルばかりである。
土魔法はともかく、クリエイトアンデッドのスキルについてはR-18禁という事実さえなければとんでもないスキルなのだが。
現在二体のゾンビを作り出したが、恐らく追加であと500体は余裕で作り上げる事が出来るだろう。魔力的にかなりコスパがいい。リッチとてしての魔法の資質や魔力総量も関係しているとは思うが、未だにレベル1でこれは破格のスキルだと思う。レベルが上がれば倍々で増えていきそうだ。逆に言えば、土魔法はコスパが悪い。コネコネするとすんごい疲れる。
「一応は普通のゾンビようですね」
どうやらスキルで作り上げたゾンビは普通のゾンビらしく、動きはかなり鈍い。エルダーゾンビではないようだ。その事にホッとしていいのかガッカリしていいのかは分からない。
戦略的にみればエルダーゾンビなのだが、此方は過去に魔王を相手に相討っているので危険視される恐れがある。というか、エルダーゾンビに関しては現在十数体レベルでダンジョンに湧いているので今更なのではあるが。
普通のゾンビに関しても一度に数百体レベルで作り出す事は可能なので、どっちもどっちだろう。
それは今回のダンジョンコア討伐で分かった通り、優れた個であっても圧倒的な多の前では押し潰されてしまうのだ。偉い人は言った、戦いとは数なのだと。
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