表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リッチ(金持ち)を願ったらリッチ(アンデッド)にされたんだが?  作者: キヒロ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/120

26 リッチィさん、ダンジョンへと冒険する

 

「や、止めてくれ、待て、待っ……うぎゃああああああ!!!」

「ベル!! くっ、このクソゾンビがぁあああああ! ベルを離しやがれ!!」

「い、嫌よ、こんなの、こんなの聞いてない、聞いてな……いゃああああああ!!」

「マイ!! てめぇらマイに触れるんじゃねえ!! 今助けに──くっ、離しやがれこの野郎!!」


 さてさて、遅れてやって来ましたのは墓場のダンジョン。色々と準備に手間がかかりここまで時間をかなりロスしてしまい少し焦ったのだが……なんて事はなかった。


「いぎゃああああああ!!」


 そこらかしらから上がる悲鳴の数々。

 未だダンジョンの手前、墓場の入口ゲートの門前だと言うのに、誰もがこれ以上は前に進むことが出来ないでいた。


「おかしいでしょ!! 何よこのアンデッドの群れは!!」


 地平線を全て埋め尽くさんとするゾンビ。

 堅牢な作りの門は大きく開かれている。恐らくは冒険者を墓場のダンジョンに入れる為に開けたのだろうがこれは……なかなかに酷い事になっている。地獄かな。

 ダンジョン内にいたであろうゾンビが全て門の内側に押し寄せて来ている。

 門番らしき衛兵さんが何とか門を閉めようと奮闘はしているものの、ゾンビの数があまりにも多く手間取っているようで、冒険者が手を貸そうにも奥から溢れてくるゾンビに身動きが出来ないでいた。


「嫌だ、来るな、うわぁああああああ!!!」


 そしてまた一人、新人冒険者らしき若い少年がゾンビに呑み込まれていくのが見える。絵面的にはあれだ、ゾンビに押し倒された男性がカジカジされてる。


「だ、だれがぁだずげでえぇぇ」


 そんな中、私ことアンデッド・リッチ、リッカ・エンマは何をしているかというと……


「はいはい、道を開けてくださいねー」


『『『アアァァァ』』』


「邪魔ですよー。大丈夫ですかー、今助けますからねー」


『『『アアァァァ』』』


「うんしょ。少し重いですね、引き摺りますから我慢して……ってこら、少年をカジカジしないでください。邪魔ですよ」


『『『アアァァァ』』』


「うるさいですねー」


 ゾンビの大軍の中を一人自由に歩き回り、救助活動に勤しんでいた。


「ありがどぅありがどうぅぅ」

「はいはい、もう大丈夫ですからね」


 ゾンビに呑まれあちこち噛み傷だらけの少年冒険者をあやしながら、後方に待機している施設まで連れていく。冒険者ギルドの職員らしき人に引き渡したら私は再びゾンビの大軍の中へ忙しなく入っていく……どうしてこうなった。

 いや、分かるんですけどね。

 明らかにゾンビが私を避けてるんですよ。

 初めはね、私に近付いてくるゾンビもいたんだけど、『こ、怖い、あっちいって!』と言ったら全く襲われなくなったんですよ。ナンでかなー。


「オ、王よ……た、タスケテ……」


 そんなこんなしてるうちにまた被害者が……て、誰が王様ですか。

 そんな馬鹿な事を言う人は助けてあげませんよ?


「ワ、ワレのカラダ、カラダが……」


 はいはい、今助けてあげますからねー。


「こら、この人の鎖骨をカジカジしないでください。磨り減ってしまうじゃないですか」


『『『アアァァァ』』』


「肩甲骨も返しなさい」


『『『アアァァァ』』』


「うるさいですねー」


 一つ一つ、バラバラになった骨を集めて抱え直し、後方の施設まで運ぶのは勿論、同族のアンデッドことスケルトンさん。


「オ、王よ。カンシャ、カンゲキのイタリ」


 だから誰が王様だ。

 いい加減にしてくれませんかね。

 今朝からアンデッド種の魔族が私を見るなり拝んで来るのですが、それは止めろと言ってるじゃないですか。


 カタカタと喋るスケルトンさんの顎骨を取り外し、これ以上喋れなくしてから冒険者ギルドの職員に手渡す。組み立てよろしくお願いいたします。若干、ギルド員の人が顔をひきつらせていたが……私は悪くない。


「キリがないですね……」


 そんな事をぼやきながらもまた、ゾンビの大軍の群れの中から『助けてくれー!!』──はいはい、今助けに行きますよー。



◇◇◇



「ふぅ、結構歩きましたね」


 歩き疲れふと周囲を見渡せば変わることのない風景。ゾンビ、ゾンビ、ゾンビ。どんだけいるんだよ。


 あれから暫くして、何とか門を閉じることに成功した私達一同。怪我人は多数出はしても、死者は0人だったのは優良な事だ。あまりの怪我人続出に冒険者の防波堤が崩れかけはしたが、応援が間に合ってよかった。もう少しで全滅する一歩手前でしたよ、私以外は。


『『『アアァァァ』』』


 うるさいゾンビを掻き分け、更にダンジョン奥へと単独で進む。


 うん、何故こうなっているのかって言うとこういう事だ。


 何故か全くゾンビに襲われなかった私。


 ゾンビパニックが落ち着いた所でやはりその事を皆から追及されると思いきや、スケルトンさんが『王ナラバ、不思議ナイ』との言葉を皮切りに『リッチならありか』『リッチだもんね』『助かったよリッチのお嬢ちゃん』『ありがどうリッチさん』と、感謝感激の雨嵐だった。どうやらリッチなら仕方ないねということで解決したのである。


 思わず恥ずかしくなり顔を赤くしてしまった私は悪くない。今まで生きてきてこんなに感謝されたことなんてないのだから。


 というか、皆が『リッチ』『リッチさん』『リッチちゃん』と連呼して、自分の名前を呼ばれてない事に気付いた私は恥ずかしながらもこれからお世話になるであろう冒険者の皆さんに親しみを込め、


「えっと、私はリッカ・エンマと言います。よろしくお願いしますね」


 精一杯の笑顔で自己紹介をしてみた。若干、打算はあった。これを機に色々と手助けしてもらえればありがたい。だって私のステータスは最弱なのだから。


 その後は暫く沈黙が続き、皆が突然悶え出したかと思うと女性冒険者達が急に抱き付いて来たのは何故なのか。

 感謝の印と言われ暫く自由にさせていたが、あちこち触りまくるのは止めてほしい。この体になってからはそういった感情は薄くなってはいるものの、恥ずかしいものは恥ずかしい。

 ある一部の男性冒険者も感謝の印と抱き付いて来たのだが……女性冒険者達から袋叩きにされていた。せっかく生きてゾンビパニックから生還したのに不憫な人だ。ハグくらい問題ないと構えてみれば、何故か女性冒険者達から説教を受ける事に。というか、この人達ってよく見れば冒険者ギルドで私とギルド長に長々とお説教していた人達じゃん。これも愛嬌のうちだと言えば、やはりお説教は長々と続いた。勘弁して……


「この辺りは割りと少ないですね……」


 リッチの特異体質を買われ、案の定冒険者ギルドから偵察を任された(自ら志願した)私は更にダンジョン奥へと足を進める。

 冒険者ギルドからは無理はせず、途中まででいいからダンジョンの状態、成長具合を見てきてほしいと言われたが……


「絶好の機会なのでこのまま最後まで行ってしまいましょうか」


 元々、このダンジョンにやって来たのはコアを手に入れる為なのだ。

 今ならば競争相手はいなく、誰にも邪魔される事なく進むことが出来る。

 ちょうどゾンビ達も私を見ても襲っては来ないし。

 いや、チラチラと見てはくるんですよ? でも視線を反らしたら悲しそうに去っていくんです。もうね、これ、フラグじゃね?

 この変わらない景色のダンジョンを迷う事なく進めていること事態がもうおかしい。なんとくだが、あと少しでダンジョンコアへと辿り着く感じがヒシヒシとする。目隠ししても辿り着く自信があるよ?


「……はぁ」


 そして案の定行き着いてみれば目の前にダンジョンコアらしきものが浮いている。


 七色に輝くダンジョンコア。

 気のせいだろうか、一歩一歩と近付いてみると輝きが増していく。まるで『おかえり』『遅かったね』『早くこっちに来て』と言ってるに見える。


 ピカピカと輝くダンジョンコア。

 あまり良い予感はしないなと更に近付いてみると、


「……おい、待て」


 なんだこれは。

 なんなんだこれは。


「馬鹿なの?」


 目視一メートル。

 そこまで近付いてようやく分かった。このダンジョンコアの正体が。

 てか輝き過ぎて見えないよ。


 《リッチを願うリッチィここに眠る》


「うっさいわ!」


 そう言って前回、何処かに蹴飛ばした覚えがある私の墓石がそこにはあった。


「うぅっ……」


 あまりの事態に力が抜ける。

 本当に馬鹿なの?

 こんなダンジョンコア、他の人に見られたら一発で私が関わっているってまるわかりじゃない。

 え、てか、何でこれがダンジョンコアなの? 意味わかんないんだけど。


「とりあえず触りなさい、と……」


 項垂れる私を明るく照らすように点滅するダンジョンコアもとい私の墓石。

 若干、不穏な感じが否めないではあるが、触れなければ始まらないと手を伸ばす。


「──っ!?」


 指先が少し当たったその時だろうか。刹那、ダンジョンコアが眩いばかりの光を放ち、辺り一体を七色の光が覆い尽くした。


「……うぅっ」


 一瞬の目の眩むような光。

 パチパチする目を堪えて開けてみれば、


『帰還をお待ちしておりました、マスター』


 そこには何故か喋り出す私の墓石が浮かんでいた。


「またおかしな事に……」


 出来ることなら輝いた時に墓石、コアの形を変えてほしかったよ。喋り出す自分の墓石ってもう……ね。


『条件を満たした為、マスターの固有スキル:チラシが一段階進化します。──進化開始』


「……え?」


『──完了。固有スキル:チラシのスキルの範囲領域の拡大に成功しました』


「ええ?」


『続いて、ダンジョンマスターの登録を開始──』


「えええ!?」


『完了。このダンジョンのマスターをアンデッド・リッチ、リッカ・エンマで登録しました』


「うぇえええ!?」


 事態が次々と進んでいく。


『次にこのダンジョンの最適化に入りま──』


「ちょっと待ってください!」


「──中断。マスター、何か不具合でも」


「有りすぎです。こうも坦々と勝手に進められてもついていけません」


 急展開過ぎてついていけない。


「色々と聞きたいことは沢山ありますが、どうしてマスターが私なのですか」


『──? マスターはマスターでありマスターなのです』


 質問の意味が分かりませんと回答するダンジョンコアに私が意味が分からない。


「はぁ……とりあえずはいいです。それで固有スキルの進化とはなんですか?」


『マスターの固有スキル:チラシのスキルの範囲領域分野を拡張しました』


「……どういうこと?」


 詳しくはお試しになって下さいとするダンジョンコアに進められ、チラシのスキルを展開。目の前に見慣れた半透明状のチラシが広がる。


「別に変わった所はないみたいだけど……いや、これは何? チラシの裏?」


 チラシ広告上部に不思議なアイコンが増えている事に気付いた。恐る恐るタップしてみると、


「おおう!!」


 戦闘スキル

 《剣術》《拳術》《槍術》《弓術》《斧術》《棒術》《銃銃》《刀術》《体術》《鎌術》《盾術》《鞭術》etc……


 魔法スキル

 《火魔法》《土魔法》《水魔法》《風魔法》《雷魔法》《光魔法》《闇魔法》《回復魔法》《浄化魔法》《召喚魔法》《精霊魔法》etc……


 補助系スキル

 《料理》《奉仕》《家事》《釣り》《裁縫》《鍛冶》《木工》《錬金》《調合》《調薬》《採取》《解体》etc……


 実に様々スキルがズラリと並んでいる。もしかしなくてもこれ全部購入可能なのでしょうか、可能なんでしょうね!


 少なからずワクワクしながら魔法スキルをタップしてみると、





「ふ・ざ・け・ん・な!」





 《光魔法》100000000ゴールド

 《闇魔法》100000000ゴールド

 《火魔法》100000000ゴールド

 《土魔法》100000000ゴールド

 《水魔法》100000000ゴールド

 《風魔法》100000000ゴールド





 こんなの買わせるき元々ないでしょ? ないよね! 1億ゴールドとか何考えてんの? 1億万円だよ! こんな金額前世でも見たことねぇよ! ばーかばーか!


 戦闘スキルをタップしてみると、此方も100000000ゴールドからスタート。


 馬鹿野郎。


 補助系スキルをタップ。

 此方は若干お安目で、なんと10000000ゴールドからのスタート。


 買えるか! ばーかばーか!


『マスター、何処へ行かれるのですか?』


「お家帰る!」


 お家ないけど。


『──? 何を言ってるのでしょうか、マスターの帰る場所はここですよ』


 裏チラシをダンジョンコアに叩き付け、背を向けて歩き出した私にダンジョンコアが妙な事を言い出した。


『それに既にマスターはダンジョンマスターとして登場された為、このダンジョンから外に出ることは不可能です』


「……え?」


 何を言ってるのでしょうか、このダンジョンコアは。


『マスターは私と一心同体。共にこのダンジョンが滅びるまで永久に一緒です』


 んん?


「いや、あの、私、外に待っている人達がいるんだけど……」


『──それはダンジョン外にいる虫畜生のことでしょうか?』


 んんんんん?


「虫って、あの人達は私と同じ冒険者仲間なんですけど」


『──仲間? マスターの仲間はこのダンジョンコアただ一つだけなのです』


 あれれ、もしかして、このコア、ヤンデレさんですか?


『それでもまだここから出て行くというなら──逃がしませんよ?』


 ひぇっ……


 そう口にしたダンジョンコアの何処までも無機質な凍えるような声は続けるとして、


『──最適化、シークエンスを開始します』


『──ダンジョン外部の害虫を排除するため、ダンジョンの最適化、モンスターの強化、及びマスターとの同期を開始します。──0%、1%、3%、4%』


 ちょいちょい!

 このコアなに言ってんの?


『6%、8%、10%、11%──60%、62%』


 飛びすぎ!

 なんか一気に進んだよ!


『70%──マスターとコアルームの同期を完了しました』


 ヤバい、なんかヤバい!


『80%──マスターの固有スキルが一部解放されました。ダンジョンモンスター作成、固有スキル:クリエイトアンデッドを獲得しました。続いてダンジョン内のモンスターへの命令権を獲得』


 おい、こら待て!

 本当に待って!


『90%──ダンジョンモンスターの強化に成功。シークエンス完了後にダンジョン外部の害虫の掃討を開始します』


 なんだこれ、なんなんだこれ!

 どうすればいいの!?

 このままだと大変なことに!!


『91%、92%、93%、94%──』


 このこのこのこの!!

 壊れろポンコツ!!


『95%──無駄です、マスター。ダンジョンコアはアダマンタイト鉱石よりも硬く頑丈な鉱石なのです』


 うっさい!

 ばーかばーか!


『96%、97%──はぁはぁ、マスター……いいですよ、もう少し強く蹴って下さい、あの時のようにもっと、もっと強くぅううう!』


 ひぃっ!?

 なにこのダンジョンコア、本当に無理なんですけど。

 こんなやつと永久に一緒とか本当に無理なんですけど!!


『98%、99%──いよいよですね、マスター。準備はいいですか? はぁはぁはぁはぁ』


 やだやだやだやだキモいキモいキモいキモい。


『くふふふふ、いきますよ、マスター。最適化シークエンス──10С』


読んでくれてありがとうございます。

良かっら感想、ブクマ、評価を頂ければとても嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ