22 リッチィさん、幼女にスキルを教えてもらう
本日1話目です。
「ふむ、『固有スキル』かや……」
あわや大惨事となる所であったチョコレートパニックを回避した私は、正気に戻った幼女と一緒にテラスで大空を眺め話していた。
「にしても珍しいスキルじゃな。ワシは少なくともこのようなスキルは見たことも聞いたこともないのじゃ……」
考え込むようにして唸る幼女。
私は今、現在唯一のスキル、チラシを展開して幼女に説明していた。
「やっぱり珍しいですか?」
やはり、チラシを知らない人から見れば、なにも無いところからまか不思議な物を突然生み出すスキルと言うのはやはり珍しいのだろう。
「そうじゃな。モノを仕舞い取りだす空間魔法などとは違い、これはないところから有るものを取りだしておる。魔法は魔力を媒介に自然からいろいろな事象をおこしたりはするが、これは明らかにそういった感じではない。金銭をもちいた等価交換とはいえ、これはまた……」
まか不思議じゃとチラシに手を伸ばす幼女。しかし、幼女の指はチラシをタップすることは叶わず空を切った。その事実に若干『ぐぬぬ』と悔しそうにしているが、恐らくはこれ私専用のスキルなので、何度も何度もしつこくトライしても無理だと思う。ていうか、明らかに同じ場所、チョコレート菓子をタップしょうとしてるよね。大丈夫? 中毒症とかになってないよね?
「まぁ、『固有スキル』いうことならば納得ではあるのじゃがな」
「そうなの?」
「うむ。もともと『固有スキル』というものは個人がもって生まれた先天性のスキルじゃ。まぁ、ユニークスキルとも言うのじゃがな」
幼女は続けて、
「これは後天性のスキルとは違い、もともとの本人の資質とは関係なくランダムで発現しておるものじゃ。それに合わせていろいろとな、その者の個性とは全くもって合わんスキルや、相性の良いスキルにもなるのじゃ」
そこから幼女は少し言いにくそうに、
「まぁ、お主はアタリということじゃな。『固有スキル』は皆が皆、もって生まれるスキルではないのじゃが、なかには意味不明なスキルや死蔵スキル、最悪は自身の性質と全くもって反転するスキルをもって生まれてくる者もいるのじゃ」
例えばと幼女は事例を上げていく。
「死蔵スキルでいえば言わなくても分かるじゃろうが、全くもって役にたたんスキル。少量の魔力しかもたん者が超高レベルの魔法のみを扱うことができるスキルをもっていても発動はせんし、他の国の王様が宮廷奉仕スキルをもって生まれたこともある。宮廷奉仕スキルなど基本的に他者の身のまわりのお世話をするスキルの上位版じゃ。従者やメイドなどからしてみればありがたいスキルじゃが、王様は奉仕してもらう立場じゃから全くもって意味のないスキルじゃな」
お次はもっとも厄介なスキルとして、
「反転スキルでいえば内陸の者が海の者の性質、エラ呼吸や水掻きスキルなどを有していたりじゃが……もっとも悲惨じゃったのが、男性が母性スキルという謎スキルをもって生まれておかしな種族が誕生したことじゃな。あれはワシはもう思いだしとうもない」
ぶるぶると体を震わせ、これ以上は語りたくないとする幼女。
「母性スキルが一体どんなスキルだったのかは気になるけど、それは意味不明なスキルに入るの?」
「いや、意味不明なスキルはそのまんま意味不明なスキルじゃ。スキル名はわかっておっても、使いかたや発動条件、その名の意味さえ全くもって意味が不明なスキルじゃ」
これはワシの身近にいる人物の事なのじゃがなと幼女が話し出した。
「ワシの執事を兼任しているクソじ……人物なのじゃがな。なんといったか、たしかワイフェー……いや、ワイワイじゃったか? そんな感じの意味不明なスキル名じゃったな」
………ん?
「その者がいうには、自分は体からシュウハスウとかいう謎の波長を常に発してるらしくてな、今朝も『今日は2.4GHz、いえ、気分は5GHzですな』とか意味不明なことをほざいておったわ。でな、他の……」
待って、その人ちょっと待って!
「あの、もしかしてその人のスキル名って『ワイファイ(Wi-Fi)』って言ってなかったですか?」
「おおう、そうじゃ、そうじゃ。そんな感じのスキル名じゃったな。なんじゃ、あやつのことを知っておったのかや?」
「いえ、その人の事は全然知りませんけど……」
是非ともお友達になってほしいんですけど。
そう言って紹介してくれませんかとお願いするも、幼女は『……正気かや?』『それはお主の頼みでも聞けん頼みじゃ』『ワシはお主のためを思っていっておるのじゃぞ』と、断固拒否すると言ってきた。
チョコレートを取り出して釣ってはみたものの、『ぐぬぬぬぬ』と目が血走りながらも断って来たので、仕方なく伝言だけでもとお願いすることにした。
多少それでも渋ってはいたが、伝言の内容『AES、暗号化キーを教えて下さい』を伝えると『え、えーいーえす?』なんのこったと頭を傾げ、チョコレート1000円分で折れてくれた。
ちなみに、『えーいえす、えーいえす……えー……むえす?』と呟く幼女が伝言をちゃんと正確に伝えられるか心配になり、その人宛にお手紙を書こうかと言ったのだが、それはダメじゃと言われたので幼女宛にメモ帳として書いて渡すことになった。そこまで嫌なのか。
ふふふ、それにしても思いもよらない展開だ。
まさか異世界がWi-Fiスポット有の世界だったなんて。
しかもご都合のいいように、幼女の執事を兼任している人物、Wi-Fiルーターさんは魔王城で働いているらしい。
なんて素晴らしい好条件、好スポットなのだろうか。
魔王城はこの都市の中心、周波数の電波の強さ次第では全域をカバー出来るかもしれない。
スマホは閻魔大王の後で返して貰うとして、Wi-Fiの設定などは後で細かく調べてみよう。こちとら元はショップ店員、それくらいなら楽勝です。
そんなこんなしてると、幼女は話を戻す。
「ちなみにじゃが、お主のチラシスキルもある意味、意味不明のスキルに分類されるのじゃろうな」
「そうなの? 私は難なく使えるんだけど……」
「いや、お主のそのスキルは異質すぎる。絵柄はまぁよいとして、まず文字がよめんのじゃ。恐らくお主以外はなにが書かれているのかは理解できんじゃろう」
改めてチラシを見れば、確かに日本語表記だ。異世界人では読めないだろう。私もこの世界の文字はまだ読めないんだけど。
それからとした幼女は、何故に私にだけこの文字が読めるのか等とは一切突っ込む事はせず、簡単なスキルの説明をしてくれた。
「まぁ、だいたいはこんなもんかのぅ」
「成る程、詳しい説明ありがとうございました」
そうお礼を言うと『これくらいは一般常識のはずなのじゃがなぁ……』『いったいどこの田舎からやって来たのじゃ』と、奇妙な人を見る目で返って来た。
読んでくれてありがとうございます。
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