ー出会いー
大男、カイゼル・グラディッシュからこの世界についていろいろ教わり、翔は近くの町へ向かうというカイゼルに付いて行くことにした。
森を抜けて、街道の別れ道に差し掛かった時時、森の中から悲鳴が響きわたった。
『ーっ!』
その瞬間、カイゼルは目の色を変え、翔にここで待っていろと言い残し、悲鳴のする方へ向かって走っていった。
ここで待っていろと言われても、翔は悲鳴が気になっていてもたってもいられず、悲鳴のした方へと駆け出した。
森の中を走って数分後、視線の先には倒れた馬車とその周りに6名の野盗と思われる者たち、そしてそれらを相手に2人の少女をかばうようにして戦うカイゼルの姿があった。
『邪魔すんなよ!てめぇ!』
野盗たちはまだ翔に気づいていないようで武器を手にしてカイゼルと睨み合っている、野盗たちの足元には馬車を引いていたと思われる男性の死体があった。
その光景を目の当たりにして、翔は改めて自分が置かれている状況を理解した。
自分は本当に異世界に来てしまったんだと、そしてこの世界は自分がいた世界のように平和な世界ではないのだと。
野盗の中の大剣を持ったやつがカイゼルに向かって走り出す、するとカイゼルは間合いを取りつつ確実に敵の懐に潜り込み一撃で鳩尾を殴り気絶させる。
残った5人は固唾を飲んだ、こいつは強いと確信したのだ。すると何やら手で合図を出し合ってからカイゼルに向かって一斉に走り出す。
翔は嫌な予感がした、すると案の定途中で3人が方向を変えて2人の娘たちの方へ駆け出した、カイゼルは慌てて娘たちの方に向かおうとする、しかし大柄な2人の野盗に襲われて手が離せなくなっていた。
くそっ!
翔は頭の中で叫んだ、なんて自分は無力なんだと、その時体に電流が走るような感覚を覚えた。
「なんだったんだ、今のは」
こんな状況にもかかわらず、そこからの思考はなぜかとても冷静でクリアだった。
転がっていた石を拾うと、先頭を走っている野盗の足めがけて思いっきり投げつけた、すると野盗は足を絡ませてその場に倒れる、そして突然目の前を走っていた仲間が倒れたため、仲間に引っかかってバランスを崩しその後の2人もその場に倒れこんだ。
「クソガキがっ!」
野盗の1人が翔に気づきすごい勢いで襲いかかる、そこからは全てが一連の動作だった、その突進を横に躱し、翔は野盗の突進の勢いを利用して足を掛け腕を下に回す、すると野盗の体は軽々と宙を舞い地面に叩きつけられる、そしてそのまま次の野盗のところまで走ると顔面に膝蹴りを入れ、腹に拳底を食らわせ相手の意識を確実に消し次へ、もう一人の野盗はすでに構えていた、しかしそんなことは今のは翔には関係なかった、野盗の右フックをかわすとそのまま鳩尾に拳底を放ち、軽く隙ができたところで顔を掴んで地面に叩きつける、これで3人。
翔は何が起こったのか正直言って理解できていなかった、自分の世界にもいた時にはたしかに武術の心得はあった、しかしそれは護身用のものであってここまで軽々と野盗を倒せるはずはない。
自分のしたことについて考えていると横から声がかかった。
「あなた、一体何者ですか?見慣れない服装ですね。どこの人間ですか?」
声の主は翔が野党から助けた娘だった。
「人に名前を聞くときは自分から名乗るって教わらなかったか?」
「失礼いたしました。私はエレナ・オーウェインです。こちらは侍女のアリアンヌ。」
すると紹介されたアリアンヌさんが後ろで「侍女のアリアンヌです。」と軽く会釈をした。
「俺の名前は篠宮翔、服装を見てわかるとおり異国の人間だよ。この世界じゃない国のね。」
翔が自己紹介をしていると
「おい翔、さっきのはなんだ?」
残っていた野盗を片付けたカイゼルが話しかけてきた。
「俺にもよくわかんねーんだよ。気づいたら体が勝手に動いてた。」
「見かけによらず随分と強いじゃないか、何かやっていたのか?」
「やってたって言ってもたかが護身用のぐらいでここまで軽々野盗を倒せるようなもんじゃねーよ。」
「そうか、それならいいが。」
「あの…ちょっとすいません、篠宮翔さん、さっき自分は異界から来たみたいなこと言ってましたよね? それってどういうことですか?」
「それは私も気になりました。」
エレナさんアリアンヌさんが話しに入ってくる。
「そういえば、俺も詳しいことは聞いてないな、よければ教えてくれないか?翔」
「わかった、他言無用で頼む。」
そして、翔は話し始める。
「俺は自分の世界で父親の手伝いをしながら世界を旅して回ってたんだ、それで仕事である遺跡の発掘をしてた、そんときにまだ誰も入ってないと思われる部屋を見つけて、そこに入ったまでは覚えてるんだけど、その後の記憶がない、そんで気づいたら向こうの森にいた。」
「そうですか、ではあなたは今、この世界に居場所がないと…」
「そういうことになるな。」
「うちに来ませんか?」
前回から随分と遅くなってしまい申し訳ありません。




