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28話:アリシアと一緒に街中に出かける

 それからさらに数日後。アリシアの部屋にて。


「それじゃあ今日は街中に外出する日です。準備は大丈夫ですか?」

「はい、大丈夫です! 今日はよろしくお願いします!」


 アリシアにそう尋ねていくと、グっとガッツポーズをしながらそう答えてきた。


 以前から言ってたように、ギルバートから外出の許可を貰えたので、今日のリハビリ活動ではアリシアと一緒に街中に行く事になっていた。もちろん安全のためにエルフェミナ家のメイドさんも同行してくれる。


 あとはアリシアの事を大切に思ってる身内のエステルやルファスにも声をかけてみたんだけど、二人とも残念ながら用事があるという事で今日は難しいと言われた。なので今日はアリシア、メイドさん、俺の三人で出かける事になる。


「セツナ様。本日はアリシアお嬢様とのお出かけに同行します。メイドのシルスと申します。どうぞよろしくお願い致します」

「はい、ご丁寧にありがとうございます。俺はセツナです。今日は一日よろしくお願いします」

「はい。お願いします。ですが本日はお嬢様からはなるべく黒子のようにしておいて欲しいと言われてますので、本日は出来る限りセツナ様の方でお嬢様のサポートをお願いいたします。ふふ」

「え? 黒子のようにって?」

「あ、ちょ、ちょっと! シルス!」


 メイドのシルスがそう言うと、アリシアは顔を赤くしながらシルスの事を制してきた。


「ふふ、申し訳ありません。お嬢様。ちょっとだけ口が滑ってしまいました」

「も、もう。シルスは……」

「? えっと、結局今日のシルスさんの立ち位置はどんな感じなんですかね?」

「はい。私はお嬢様とセツナ様のお二人の後方を付かず離れずの距離感で付いていきます。なので私の事は気になさらずにお二人で楽しく街の中を楽しんでいってください。それと、ほら。お嬢様は久しぶりの外出なのですから……セツナ様にちゃんと尋ねなくて良いのですか?」

「も、もう。わかっているから。シルスはそんなに急かさないでよ」

「ふふ。申し訳ありません」

「??」

「すーはーすーはー……ふぅ。そ、それではセツナ様。今日はその……久しぶりの外出なので、ですからちょっとだけオシャレにしてみました。どうですかね? 似合っていますか?」


 アリシアは顔を赤くしながらそう尋ねてきた。


 確かに今日のアリシアはオシャレな服装に身を包んでいる。本当にとても綺麗だと思った。だから俺はすぐに……。


「あぁ、はい、凄く似合ってますよ! とても綺麗な服ですね! それに髪の毛も綺麗に編み込んでいてとてもオシャレです!」

「ほ、本当ですか? ふふ、それなら良かったです……」


 という事で俺すぐにアリシアの姿を見てハッキリとそう伝えていった。するとアリシアは嬉しそうにはにかんだ笑みを浮かべていった。


 というか今更だけどこんなにも綺麗な人と一緒に出掛けられるなんて、俺も嬉しい限りだよな。


「ふふ、良かったですね。お嬢様」

「う、うん……ありがとう。シルス。シルスが選んでくれた服とかヘアアレンジのおかげよ」

「いえいえ。お嬢様のためなら私も全力を尽くすまでです。という事でセツナ様。この後のお嬢様のエスコートはセツナ様に任せました。久々の外出ですので、是非ともお嬢様の事を楽しませてあげてくださいね」

「はい、わかりました。頑張ってエスコートしていくので任せてください!」

「ありがとうございます。そう言って貰えると私も嬉しいです。という事で私はこれから黒子に徹しますので後は頼みます。ふふ」

「も、もう。シルス。それ以上ネタにしないでよね……」


 そう言ってシルスはアリシアの部屋の奥の方に移動していって黒子役に徹し始めた。俺とアリシアの出かけるのをなるべく邪魔しないようにしてくれているようだ。


「よし。それじゃあ時間も勿体ないですし、今日は街中の何処に行きましょうか? せっかくですしアリシアさんが行きたい所にエスコートしますよ?」

「それは嬉しいです。でも私、数年も外に出かけてなかったので、今行きたい所をパッとは思い付けないんですよね……正直、ずっと家に引きこもっていた生活をしていたので、街の中の様子もあんまり思い出せないんですよね……」

「なるほど。まぁやっぱりそうですよね。それじゃあ良かったら……今から一緒にアリシアさんが好きだって言っていたシフォンケーキのお店に行ってみませんか? 事前に調べておいたんですけど、どうやらシフォンケーキのお店はまだ健在らしいので、良かったら一緒に行きませんか?」

「……え? シフォンケーキのお店にですか? あ……は、はい! それは是非とも行きたいです! で、でも、セツナ様はシフォンケーキのお店の事を事前に調べといてくださったんですか?」

「はい。もしかしたらアリシアさんはシフォンケーキのお店に行きたいかもしれないけど、もしも既にシフォンケーキのお店は閉店とかしてたり、商品が全然違うモノを売るようになってたりしたら悲しいなって思って、それでアリシアさんを悲しませないためにも事前にエステルさんにシフォンケーキがあったお店の場所を教えて貰ってお店の場所は事前に確認しておきましたよ」


 俺はこの数日間アリシアを街中をエスコートするために街の中を散策しまくっていた。そしてエステルから話を聞かせて貰ってシフォンケーキのお店も事前に確認していった。


 そしてしっかりとシフォンケーキのお店が今も健在だったのを確認しておいたので、俺はそんな提案をしていった。


「そこで今もシフォンケーキのお店はやっているので、良かったら一緒に思い出のシフォンケーキを食べに行きませんか?」

「セツナ様……私のためにシフォンケーキのお店を確認しておいてくださったなんて……ありがとうございます。はい、それでは是非ともセツナ様と一緒に……シフォンケーキのお店に行きたいです!」

「それなら良かった。それじゃあ早速シフォンケーキを目指して出かけましょう。それじゃあ、はい、手をどうぞです」

「はい、それでは……」


―― ギュッ……


「よし、それじゃあ行きましょうか」

「はい。エスコートよろしくお願いしますね。セツナ様」

「はい。もちろんです」


 という事でそれから俺達はぎゅっと手を繋ぎながら早速街中にあるシフォンケーキ屋を目指して出かけていった。


◇◇◇◇


 それからしばらくして。


 俺達は街中にあるシフォンケーキのお店に到着した。王都の端っこにある隠れ家的なお店だった。これはテキトーに王都を散策してただけでは見つける事は出来ないお店だった。


 そしてそのシフォンケーキ屋さんは小さくてレトロな雰囲気のあるお店だ。きっと昔ながらのケーキ職人さんが美味しく作っているお店に違いない。


 という事で俺達は中に入ってテーブル席に座っていき、目当てのシフォンケーキを注文していった。ちなみにシルスは黒子に徹してくれて隣の席に


「皆様シフォンケーキのセットですね。ご注文ありがとうございます。それでは用意致しますので少々お待ち下さい」

「はい、わかりました」

「よろしくお願いします」


 そう言って店員さんは厨房の方に向かった。そしてそれからすぐアリシアは辺りをキョロキョロと見渡しながらこう言ってきた。


「わぁ……このお店の中の雰囲気、ケーキや紅茶の匂い……全てあの時と同じです。本当に懐かしいです……お母さまやエステルと一緒に来てたこのお店に再びこれて……本当に嬉しい気持ちですよ……」


 アリシアは感傷的な気分になりながらそう言ってきた。


「そうですか、それなら良かったです。後はシフォンケーキが昔と変わらない味なら最高ですね」

「ふふ、そうですね……って、あ」

「お待たせしました。シフォンケーキセットです。どうぞごゆっくり」


 そう言って店員さんが俺達のテーブルにシフォンケーキと紅茶を持ってきてくれた。凄く美味しそうなシフォンケーキと香りの良い紅茶が俺達のテーブルに並んでいった。


「おぉ、凄く大きなケーキですね。それに紅茶の香りも凄く良いですね」

「えぇ、そうですね。ケーキも紅茶も昔と変わってません。凄く美味しそうですね」

「はい、それじゃあ早速食べてみましょうか。それではアリシアさん。まずは一口食べてみて感想を教えてください」

「えぇ、わかりました。それでは頂きますね」


 アリシアはそう言ってからすぐにシフォンケーキを口にしていった。すると……。


「……あぁ、あの味です……昔食べたシフォンケーキと全く変わっていませんわ。ふふ、本当に美味しいです……」

「本当ですか? はは、それなら良かった……って、あ……」


 そう言ってアリシアも嬉しそうに笑いながらケーキを食べていった。でもやっぱりその表情はちょっとだけ寂しそうに感じた。


(まぁそりゃあそうだ。だってアリシアさんのお母さんは既に亡くなっている訳だし)


 だから俺は……。


「……うん、この味……本当に懐かしいです……あの頃、お母様と一緒に食べた味で――」

「わわっ! シフォンケーキはふっくらとしていて美味しいですね! それに甘さもちょうど良いですし……この紅茶ともピッタリ合ってますね! これすっごく美味しいですよ! アリシアさん!」

「え……え?」


 俺もシフォンケーキを食べていき、すぐにそんな感想を大きな声で伝えていった。そしたらアリシアはちょっとだけビックリとしたような表情で俺の方を見てきた。


「いや、本当に凄く美味しいです! こんな美味しいシフォンケーキを食べられて嬉しいです。これはもうこのお店を教えてくれたアリシアさんとエステルさんには感謝の気持ちでいっぱいですし、それと……アリシアさんのお母さんにも凄い感謝です!」

「え……セツナ様……」

「こんな王都の隠れ家的なスポットの美味しいケーキ屋さんを見つけられるなんて本当に凄いお母さんですよね! それにこうやって王都の美味しいお菓子屋さんを見つけては娘さんと一緒に巡るなんて……すっごく楽しそうな事をされてたんですね! 何だかとても優しくて素敵なお母さんだったんだろうなっていうのが想像できますよ!」

「……ふふ、そうなんです。私のお母様はとても優しくて、素敵なお母さまでした。一緒にお父様に内緒でお菓子屋さんを巡るのは本当に楽しい日々でしたよ」

「はは、そうなんですね。あ、そうだ。それじゃあ是非ともアリシアさんとお母さんの話をもっと聞かせてくれませんか?」

「え? 私とお母さまのですか?」

「はい! もっとアリシアさんのお母さんの話が聞いてみたいですし、良かったらお願いします!」

「セツナ様……ふふ、わかりました。それでは私とお母様の話をさせて貰いますね。えぇっと、それではこれは私がまだ幼少だった頃なのですが……」


 という事でそれからアリシアのお母さんの話を沢山聞かせて貰いながら、俺達はシフォンケーキを美味しく食べて楽しく過ごしていった。

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