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26話:ルファスの昔話を聞いていく

 ルファスに稽古を頼んでからしばらくして。


「ふう、それでは模擬戦はこれくらいで終わりにしときましょうか」

「はぁ、はぁ……はい。ありがとうございました……」


―― バタンッ……


 俺は大粒の汗をかきながら地面に倒れこんでいった。


 模擬戦という事でかなり力を抜いて貰ったというのはわかるけど、それにしてもルファスは滅茶苦茶に強かった。


 俺の攻撃は一度たりともルファスには届かなかった。


「はぁ、はぁ……すいませんルファスさん……俺のために稽古を付けてくれたのに……それなのに何もできないなんて不甲斐なさ過ぎますよね……はぁ、はぁ……」

「いえいえ。そんな事はありませんよ。むしろ冒険者になって一年しか経ってないのに、ここまで動けるのならかなり頑張っている方だと思います。きっとセツナさんは沢山の指導者に恵まれているのですね」

「はぁ、はぁ……え? 沢山の指導者って……そんな事までわかるんですか?」

「はい。ある程度は模擬戦をしてみたらわかります。セツナさんはこの一年間、沢山の人達に稽古を付けて貰ったんだろうなと、そんな光景がセツナさんの後ろから見えましたよ」

「はぁ、はぁ……そうですか……皆の姿が……」


 ルファスの言葉を聞いて、今まで俺の修行や稽古に付き合ってくれたダグラスやスクルドなど数多くの先輩冒険者達を思い出していった。


「はぁ、はぁ……そうですね。この一年間で沢山の先輩達から色々と冒険者としての知識や技術などを学ばせて貰いました。でもルファスとの模擬戦で俺がまだまだひよっ子だというのも改めて実感しました……はぁ、はぁ、ちなみにルファスさんは何歳くらいから剣を握り始めたんですか?」

「私は物心が付く前からですよ。スカーレット家は武術の名門ですからね。ですから生まれてすぐに剣を手にしましたし、物心が付いてからは騎士団長である父から毎日厳しい剣技の修行を施されてきましたよ」

「はぁ、はぁ……な、なるほど……そ、そんな幼少の頃から剣の修行をされているんですね……はぁ、はぁ……そりゃあ俺如きがルファスさんに攻撃を当てられる訳ないですよね……はぁ、はぁ……だって俺はまだまだ弱いひよっ子冒険者ですし……」

「……ふふ、なるほど。どうやらセツナさんは一つ勘違いしていますね」

「はぁ、はぁ……え? 勘違い……ですか?」

「はい。セツナさんは自分の事を弱いと嘆いているように見えますが、そんな事はありませんよ。セツナさんは決して弱い人間なんかではありません。何故ならセツナさんには誰にも負けない”素晴らしい武器”を持っているのですからね」


 ルファスはそんな意味深な事を言ってきた。俺が素晴らしい武器を持っているだって? そんな素晴らしい武器を持ってる覚えはないんだけど……。


「はぁ、はぁ……素晴らしい武器って……あぁ、もしかして“回復魔法”の事ですか? でもあれはルファスさんのように幼少の頃から沢山修行して得た力では無いんです。ひょんな事から手に入れた力というか、もしかしたら神様の気まぐれで失われるかもしれない力でもあるから、そんなに凄い武器という訳では――」

「いいえ、回復魔法の事ではありませんよ。もちろん回復魔法も素晴らしいと思いますが、セツナさんにはそれよりももっと素晴らしい武器を持っているんですよ。まぁでもセツナさんはお若いですから、それが素晴らしい武器だとはまだ気が付いていないかもしれませんけどね」

「俺が気が付けていない……素晴らしい武器ですか?」

「はい、そうです。今はまだセツナさんは気が付かないかもしれませんけど……でもいつか自分自身でその素晴らしい武器の事に気付ける事を祈っていますね。ふふ」


 ルファスはそう言って微笑みを浮かべながら俺の事を見つめてきた。一体俺の武器って何のことなんだろう……?


「さてと。それでは今日はあまり時間はないので、稽古はこれくらいで終わりにしておきましょう。これからも時間がある時はセツナさんの修行や稽古に付き合いますので、いつでも気軽に尋ねてくださいね。まぁでもセツナさんには沢山の指導者がいるようですから、私が教えられる事なんてあまり無い気も……あ、そうだ。それでは私からセツナさんには“剣技”で良ければいつでも教えてあげますよ。ですからもしも剣技が学びたくなったら私に言ってくださいね」

「え……ほ、本当ですか! そ、それは凄く嬉しいです! それじゃあ改めて、ルファスさんの空いてる時間があったらまた稽古をお願いします!」

「えぇ、わかりました。それでは次の会議が始まるまであと十分くらい残っていますので、せっかくですからセツナさんの呼吸が整うまでお話でもしませんか?」

「はい、わかりました。俺もルファスさんとはお話してみたいと思っていたので是非ともお願いしたいです!」

「ふふ、そうですか。そう言って下さると嬉しい限りです。それでは早速ですかお隣を失礼しますね」


―― ストンッ……


 そう言ってルファスは地面に座り込んでいった。


「ふぅ。それではせっかくですし、セツナさんの方で聞きたい事などありましたら何でも話しますので、良かったら何でも聞いてください」

「わかりました。それじゃあ前々から気になっていたんですけど、ルファスさんは冒険者ギルドのギルドマスターという事は元々は冒険者ですよね? ルファスさんはどうして冒険者になったんですか? 貴族の人で冒険者をしているのって珍しいような気がするんですけど、何か大きな理由とかあったんですかね?」


 俺は早速気になっていた事をルファスに尋ねてみた。冒険者ギルドのギルドマスターというのは冒険者として凄い功績を収めた者がなれる役職なんだ。


 だからルファスは凄い功績を収めた冒険者という事になる。だけどそもそも貴族が冒険者になるなんてちょっと変な気がしたので、俺は純粋に気になってそう尋ねてみた。


「そうですね。セツナさんの言う通り、私は冒険者をしています。私は十歳の時に冒険者になったので、気が付けば冒険者としては十七年も活動している事になりますね。そしてセツナさんの疑問への回答ですが、私が冒険者になった理由は父の影響ですね」

「そっ!? そんな前から冒険者活動をされてたんですか!? そ、それは凄すぎますね! でもルファスさんのお父さんの影響というのはどういう事ですか?」

「はい。私の父は高名なる騎士団の団長を務めているのですが、そんな父は子供の頃は武者修行のために冒険者になって世界各地を旅しながら上級モンスターを次々に倒していったそうなのです」

「へぇ、ルファスさんのお父さんも元々は冒険者だったんですね。武者修行のためにそんなモンスター討伐の旅に出てたなんて凄いお父さんですね」


 どうやらルファスの父親は冒険者になって武者修行の旅に出ていた事があるらしい。流石は由緒ある武家の貴族だなと感じた。


「はい。それで私はそんな父から幼少の頃より剣の修行を受けてきたのですが、いつしか周りの修行者達よりも私の方が遥かに強くなっている事に気がついたのです。それで私も父のように武者修行がしたいと思うようになって、それで冒険者ライセンスを取得して冒険者になったのです。そして私は冒険者となって若き日の父のように武者修行を始めていったという訳です」

「ルファスさんは自分の力を高めるために冒険者の道を選んだんですね。それにしても何というかお父さんもルファスさんも中々にストイックな方々なんですね」

「ふふ、よく言われます。それで私は冒険者となって沢山のモンスターを次々に倒していき、十代後半の頃には最上級モンスターも討伐出来るようになっていきました。そんな武者修行のおかげで私の冒険者としての名声はどんどんと高まっていき、その結果として私は父から王都の冒険者ギルドのマスターにならないかという打診を受けたので、私はそれを快く引き受けて今に至るという感じですね」

「なるほど。ルファスさんにはそんな過去があったんですね。というか今更ですけど、ルファスさんのお父さんって冒険者ギルドのギルドマスターを選定する権限があるんですね」

「えぇ、スカーレット家は武家の名門ですからね。騎士団、警備隊、王宮親衛隊、冒険者ギルドなどの戦闘職を要する部門は全て我々スカーレット家の管轄となっています。という事で私は今現在は誉れ高い王都の冒険者ギルドのギルドマスターとして日々邁進しています。まぁ武者修行だけをしてた時と比べたら役職が出来てしまった事で、外部とのやり取りや打ち合わせ、会議などが沢山入ってしまい自由な時間は限りなく減りましたが、それでも毎日とてもやりがいのある仕事をさせて貰っているのです」


 ルファスは微笑みながらそんな事を伝えてくれた。


 ルファスは毎日色々な業務や仕事があって凄く大変なんだろうけど、でも冒険者がとても好きだというのがとてもよく伝わってきた。

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